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厄災の姫と魔銃使いⅡ  作者: 星華 彩二魔
第三部 一章「ミヤビ」
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「文が届く」

 アイルカーヌ王都。歌姫ことルゥテシアの自宅に居座る事、早3日。リキがミヤビに連絡を入れ、その返事をずっと待つ時間。

 関係者でいれば問題になるため、クロトとエリーは外出を控えてほとんど家の中。ルゥテシアは歌姫として職務があるため朝と夜以外はほとんどいない。その間は日持ちのする食事などで過ごしていた。寝床はソファーなどを活用。元々野宿に慣れきっているクロトとエリーにとって、床で寝るなど造作もない。しかし、そうならないようルゥテシアが余っている毛布などを貸し出してくれていた。

 ほとんど外に出れないクロトたち。その暇つぶしとしてあるのは、もう使われていない魔道具の機器。まだ新しい技術も使われており、解体すらも了承され、クロトはそれらをばらしてもいた。主に最近アイルカーヌで流行っている魔道音響には興味もわいていたところ。壊れかけでも中身はとても気になる。そのためか、防音室からなかなか出てこない事も。

 エリーはそんなクロトに付き添いつつ、夜はルゥテシアと本を一緒に読むなどをしていた。昨今、アイルカーヌではルゥテシアの歌に影響されてか、恋愛をテーマとした本がよく出回っている。小説や漫画とあり、退屈というものは全くなかった。


「でね。この後すっごく感動しちゃう場面があってね。もうサイコーなんだから♪」


「な、なんといいますか、どきどきしちゃいますね」


「それが恋愛物の醍醐味(だいごみ)だよね~。はぁ~、あたしもリキくんともっとラブラブになりた~い!」


「……ら、らぶ、らぶ?」


 言葉の意味に首を傾けるも、エリーもこういった創作の話には心惹かれるものがあった。好きな者同士が徐々に惹かれ合う物語。他人のことであろうと、やはり乙女として気になって仕方ない。

 同時に、今心を寄せている者を重ねてしまえば……。


「おーい。この音響機さっきまででなかった音が出る様になったんだが、どうする?」


「ひゃっ、あうぅ!!」


 妄想の途中に、その本人が現れた途端、エリーは驚きの悲鳴をあげてぬいぐるみの山に突っ込んだ。

 

「わー、ほんとー!? すっごーい。クロちゃんってひょっとして天才!?」


「……いじってただけだ。あと、何してんだお前は?」


「なななっ、なんでもないです!!」


 頭の中を振り払い落ち着きを取り戻そうとする。追い打ちの様に、部屋の窓がそっと開けられ、リキが静かに入室してくる。

 再度ビックリしたエリーは、更に奥にへと潜り込んでしまう。


「クロト殿、大変お待たせいたしました。例の式文の返事が届きました」


「おう。……やっとか」


「おかえりー、リキくん!」


「はい、ルゥ殿。……それよりエリー殿はいったいなにを?」


「ほ、ホントになんでもないですから!!」


 ぬいぐるみの山から顔を出し、ぶんぶんと首を振る。

 リキは首を傾けつつ、手にしていた紙を部屋の中央まで持って行く。手にあるのは紙が鳥の形を模したようなもの。それをリキは丁寧に開きだした。見た感じ、手紙の様子だが、文字は特殊な形式で書かれていた。筆で書かれたような黒い文字の羅列。独特さも感じられ、読もうとするも目を細める。そして、紙に近づくにつれ匂いもした。インクとは少し違う。炭のようなものだ。


「よかったです。返事がこない可能性もありましたので」


「ん、あー、そうだが。……なんて書いてあるんだ?」


「たまに見るけど、リキくんのところの文字って読みづらいよね」


「お前、目が見えないのに読めるのか?」


 この場でしっかり読めるのはリキだけだろう。しかし、文字を読むという事は目を通すという事だ。生憎、リキは目が見えない立場でいる。

 ……はずだが。


「大丈夫です。これは指先で文字がなぞれるようにできるようなものを使っておりますので。それを使うと、文字は少しざらついているので、読めます」


「……配慮の行き届いた使用だな」


「自分はほとんど目を閉ざして生活しておりましたのでね。慣れてます」


 指を文字に這わせ、リキは黙々とそれを読み取ってゆく。

 静かにそれを見守りつつ、読み終えたリキが内容をクロトにへと伝えた。


「クロト殿。ミヤビへ行っても大丈夫な様子です。行くにあたって自分も付き添いますので。近いとはいえ、海を渡りますし、恐らく到着したら……守り人がいるはずです。自分がいた方が、まだ話が通じると思いますので」


「……なるほど。わかった。いつ頃出れそうだ?」


「まだ日は明るい故、今の内に出れば早ければ夜の間につけますね。……問題は舟ですか。あまり大きなものは警戒を与えてしまいそうで」


「はいはーい! じゃあ、マネちゃんにお願いしてみるよ。リキくんの事はマネちゃんも知ってるし、ミヤビに行くって事は里帰りってやつでしょ? 問題ないし、なんの違和感もない」


 と、先走ってかルゥテシアは既に連絡を取り合わせていた。今となっては通信機といった伝達手段はもちろん、最新の技術では文字を離れていてもすぐ伝達できるものが流行りだしていた。まだアイルカーヌのみだが、これも次第には他の国にまで広がるだろう。

 マネちゃんなる相手からは、即座に了承が下る。

 

「人が数人乗れるようのやつでいいなら、すぐに準備できるって」


「ありがとうございます、ルゥ殿」


「そういうわけだ。……いいな、エリー」


「は、はい。ミヤビに行くんですよね」


 ようやく落ち着いたのか。エリーはぬいぐるみの山から出てくる。

 目的地への道は作られた。






 クロト、エリー、そしてリキはその後すぐにミヤビへ向かう事となる。ルゥテシアは名残惜しくも残り、見送りとして家の前で手を振ってくれていた。急ぎとわかってか、馬車までも手配してくれており、本当に準備が良い。おかげで王都から港町まで時間をかけずに移動ができた。

 港町について、手配された舟を探す。用意されていたのは、派手すぎず、地味すぎず、普通の舟。5人ほど乗れる舟で小舟と変わりない大きさだ。一般的な人力でこぐものとは違い、後ろには推進動力として魔科学が利用されている。進路を定め、動力を起動。そうすれば、まっすぐ目的地にへと向かう仕組みだ。小回りなどはこちらで操作すれば簡単であり、その点に関しては付属していた取扱説明書を見ればクロトがすぐ熟知する。


「そんじゃあ、まあ。ミヤビに行くぞ、お前ら」


「は、はい!」


「よろしくお願いします、クロト殿、エリー殿」


「よし」


 クロトは動力を起動。すると、舟は出せる速度を最大限に発揮し、猛スピードで発進した。

 激しい水しぶきをあげ、港町が見えないほど一気に離れ、その時には一度機能を停止させ、3人は舟にしがみついたまま呆気に取られてしまう。

 予想外だったのだろう。いくら扱い方を覚えたとて、これほどまでの速度が出るなどクロトも予想外でしかなく。エリーも叫ぶ間すらなく。リキも言葉が出ない。

 確かに速さを求めていたが、危うく振り落とされてしまうところだった。


「……お、驚きました。なんと言いますか、……はい、驚きました」

 

 それ以外、リキには言葉が見つからず。それはクロトとエリーも同じだった。


「私も、何があったかわかりませんでした……」


「…………もう少し、速度落とすか」


『まず最初に謝ろうぜ我が主。一瞬視界が本当にわけわからんことになったぞ……。海には落ちたくねーです』


 便利であるが、扱いには重々注意が求められる代物である。

 それからは速度の調整をし、一行は異国――ミヤビにへと進路を進める。

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