「未知への進路」
2025年最後の投稿になります。良いお年を!
リキから出た提案。それはエリーの【呪い】がどういったもので、どういう本質を備えているのか。
思わずクロトとエリーはお互い顔を見合わせた。
「……えーっと、【厄星】ですよね?」
「そうなるな。……改めて考えると、コイツの【願い】を望まない形で叶える、ってとこか。わりと理不尽なの」
「そ、そういうのなの!? とにかく怖いのってことしか知らなかったけど……っ」
「聞く限りですと、とても恐ろしい【呪い】の様ですね……。呪術というのは、呪いの対象者が苦痛や病を受けるのが普通なのですが。まさか他にまで関与するものとは。それも、それはエリー殿の【願い】が元となっているのですよね? 【呪い】というよりは、力の一部……みたいなものでしょうか?」
「その~、私もよくわかってなくて。でも、【厄星】は絶対に使ってはいけないものなんです」
その危険性はルゥテシアも理解ていることだろう。世で恐れられる【厄星】。それは一国を意図も容易く葬り、今でもその傷跡が残っているのだ。言わないようにか、ルゥテシアは口に手を当てて失言しないようにと堪える。
「というわけで、これに似た【呪い】ってのはあるのか?」
「残念ながらありませんね。人の【願い】を叶える【呪い】というのは……。なんと言いますか、神の領域と言えますね」
「神の領域……か」
魔女の言葉が蘇る。
【厄星】という【呪い】。それは反転させれば創造にもなり、それこそ神の領域に至る、と。世界の改変すらできるなら、破滅だろうと創造だろうと、それは確かに神が成す所業だ。今までその力を【呪い】として片付けていたが、今更になって【呪い】というべきか戸惑いが出る。
「神……ですか……」
リキが小さく呟く。
「エリー殿も、その【呪い】がどういうものなのか、どう自分と結びついているのかわからないのですよね?」
「は、はい。よくわかりませんね」
エリーは【厄星】の力の一部を魔法として扱ってはいるが、その根源に関しての理解が足りていない。原理も。仕組みも。どうやって繋ぎ止められているのかも。それを知るのは魔女と、傍にいたダンタリオンのみだろう。
考えれば考えるほど謎は多い。
リキはしばし考え悩み、何か心当たりでもあるのか口を続けて開く。
「もしかしたら、巫女様なら、何かわかるかもしれません」
「……巫女様?」
リキ以外の3人が首を傾けた。リキにとっての知人なのだろう。名の響きからして、神聖さを漂わせている。
「誰だ?」
「巫女様は自分の故郷であるミヤビにいらっしゃる、【神の目】をお持ちの方です。主に占いなどで神託をお告げになられるのですが、巫女様の目は内なるものを見透かし、解呪などにも貢献されてきたお方です。なので、巫女様ならエリー殿の【呪い】の解呪方法を知ることができるやもしれないかと」
「よくわからんが、【呪い】の本質を見抜けるかもしれないってことか」
「あくまで可能性の話です。エリー殿の【呪い】が普通と違う事もありますので」
リキの話に可能性があるのなら、次にクロトがとる進路は異国――ミヤビになる。
北の国アイルカーヌから海を越えた小さな島国。アイルカーヌから船は出ておらず、時折ミヤビから渡り舟が来ることがあるらしい。接触が必要最低限であるため、交流もさほどない。こちらから出向くには、舟が必要となる。
「というか、勝手に行ってもいいのか?」
「たぶん、見張りなどに止められてしまいますね。なので、自分が式の文を送らせていただきます。受け取っていただけるかわかりませんが、直接巫女様に届けばなんとかなるかと……」
「つまり、お前が許可をとるという事か」
どういった経緯でリキがミヤビを離れ大国にいるのかは不明だ。しかし、リキが自分が進んでミヤビと連絡を取り合うという。ミヤビについてもこちらからしたら未知の領域。出身者であるリキにこの場は頼るのが得策だ。
「……わかった。だが、何度も聞くがお前らはそれでいいのか? 眼鏡野郎に気付かれたら、お前たちも敵扱いされるんだぞ? こっちはおかげで殺されかけたがな。……死なねーが」
再度忠告。今は味方である身でも、裏切ればこちらと同じ立場になる可能性は高い。なんせルゥテシアもリキも、魔女に選ばれた悪魔契約者だ。一筋縄ではいかない分、対処も過激になるというもの。
命まで狙われることに、ルゥテシアは顔を青くもさせた。
「うわぁ……、あたしが言うのもなんだけど、それは怖いねぇ。でもでも、恋し合う2人の応援したいし、あたしはこのまま頑張りたい!」
「……わかった。お前はどうだ、リキ?」
ルゥテシアの意志は強い。次にリキに問いかける。
「自分は、できることならヘイオス殿たちと戦いたくはないですね。ですが、クロト殿に協力したいと思います。エリー殿にとって【呪い】が負担になっているのであれば、やはり解呪は必要かと」
リキもルゥテシアと同意見だ。アイルカーヌに来て、思わぬ新たな契約者との接触、賛同には意外である。しかし、丁度アイルカーヌ大図書館での情報収集も終わり、進展に近づくための新たな情報も入手できた。
クロトは静かに頷く。
「わかった。なら、ミヤビへの連絡はお前に任せる」
「リキさん、ルゥさんもありがとうございます」
「いえ。自分は役に立ちたいと思っただけですので」
「あたしもあたしも~! 今後も応援してるよー♪」
話はまとまり、しばらくはこの場で過ごす事となるだろう。リキは話のあと、さっそくと動き出す。
異国、ミヤビ。
未知の領域を遠い目でクロトは空を見上げつつ、うまくいくことを切に願った。
◆
同時刻。アイルカーヌで捜索を続けていたヘイオスが眉間にしわを寄せてしまう。
「見当たらない……か」
『ありませんねー。魔女殿の魂』
「アイルカーヌにはない、というわけでもなさそうだな。お前からすると」
『かもしれませんね~。長年こちら側の導き手をしてきましたが、「この世にある」という確証がでてこないのでありますよ。若干お手上げでございます。これは残業しようが難しいでしょうね。残業しても良いのですが、無駄な残業はやるに値しないので』
両手を上げるバフォメット。魂を導く冥界使者。しかし、魔女の魂一つを見つける事もできず、肩をすくめてしまう。魔女の魂が特殊であることもあるが、手掛かり一つもないのだ。このままあてもなく探し続けるのは、時間の無駄とそろそろ気付き始めてきた。
おもむろに、一冊の本を取り出す。ページの欠けた、ボロボロの本。
【無限書庫のダンタリオン】の魔本。その成れの果て。ヘイオスが見つけた、魔女の手掛かり。ページをめくるも、紙には何も記されていない。
……が。凝視すれば、ページには文字が乱れつつ浮かび上がってくる。まるで、壊れた投影画面の様だ。
「……頼むダンタリオン。お前の主の場所を教えてくれ。私は知らねばならない。お前が残した契約者たちの招集、そして娘子の【呪い】を解いてはならない、本当の理由をっ」
文字は魔界文字を散りばめ、消えを繰り返す。時には人の文字にも変換され、一瞬に出現したとしても、求めている知識は与えてはくれない。
そんな中、ついに提示された一文。
ヘイオスは目を見開き、ゴクリと生唾を呑み込む。
知識の悪魔は提示する。
――【呪い】は止まらない。
――【呪い】は破滅をもたらす。
――【呪い】は救いを与える。
――【呪い】は解除してはならない。
必死と訴える。矛盾したような言葉の羅列。
そして告げられる。何故【呪い】を解除してはならないのか。
――【厄星】を失えば、真の終焉が訪れる。
『やくまがⅡ 次回予告』
ルゥテシア
「はーい、アイルカーヌを代表しちゃう歌姫、ルゥテシアだよー♪ 気軽に、ルゥって呼んでね~」
リキ
「ルゥ殿。今日も元気でいらっしゃってなによりです。よく言われる「てんしょんばくあげ」というものですよね」
ルゥテシア
「そうそう。リキくんも言葉覚えてきてるね~。ホントかっこよくて大好き~」
リキ
「自分もルゥ殿の事は大好きですよ。それにしても話が急展開の様になりましたね。二部のアイルカーヌ編は次の三部でミヤビ編に突入します」
ルゥテシア
「リキくんの故郷だよね。あたしも行きたいけど、お仕事あるからな~。リキくんは当然だけど行っちゃうんでしょ? あたし寂しくなっちゃう。でもでも、クロちゃんとエリちゃんのためにも、がんばんないとね!」
リキ
「さすがルゥ殿です。しばし留守にしますが、ルゥ殿も無理のない様にお願いしますね。ヘイオス殿に気付かれてしまいますと、なにかと不便でしょうから」
ルゥテシア
「任せて! もしヘイちゃんに聞かれたらいい感じで誤魔化しとくから」
リキ
「よろしくお願いします。これが終わったら、ヘイオス殿たちとも話し合いできるといいですね」
ルゥテシア
「次回。【厄災の姫と魔銃使いⅡ】第三部 一章「ミヤビ」。じゃあリキくん。もし家族の人に会ったら、あたしのことも伝えてもらえると……」
リキ
「はい。ルゥ殿が素敵な方である事を伝えさせていただきますね」
ルゥテシア
「え。マジで伝えてくれるんだ(困惑」




