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厄災の姫と魔銃使いⅡ  作者: 星華 彩二魔
第二部 六章「魔装具使いたち」
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「それはもう【 】」

 本題が動き出す。これにより、ルゥテシアとリキ、2人がどう動くか。

 

「一番は魔女本人に聞くのが手っ取り早いんだが……」


 クロトはエリーを見る。察してか、エリーは静かに首を横にへと振った。これは今エリーが魔女を呼び出せないということとなる。魔女は時折エリーの中で姿を現し会話をするも、そのタイミングも限られている。

 そして、魔女がエリーの中にいるという事はさすがに2人には明かせない。まだ対話できる様子でも、結果としてヘイオスたちの側についてしまう可能性もあるからだ。魔女の存在はこちらにとって切り札でもある。安易に明かすのは避けるべきだ。

 

「さーて……どっから話すべきか」


『できれば当初の姫君に対するひっでー扱いは言わない方がいいぞー。こっちのマイナス印象で不信感持たれてもな~。ついでに俺の分も避けていただきたいな。悪評はよくねーので』


 そこら辺は脱線しそうなため言うつもりはないが、念押しに言われると逆に言いたくもなってしまう。

 あまり話を長くしても理解が追いつかなくなるため、クロトは淡々と魔女について語りだす。

 自身の【願い】のために、愛娘を【厄災の姫】としたこと。世界に宣戦布告し、国や魔王すらも利用し、世界の改変を目論んだ。人や魔族に嫌悪する中、限られた者は魔女より遺産を与えられ悪魔契約者となった。最後はその内の1人であるクロト自身に【願い】を阻まれたという皮肉な話だ。

 これを後悔しているかどうかなら、クロトは後悔などしていない。それは目の前にいる同じ境遇の契約者を前にしても言える事だ。

 自分のため。傍にいるエリーのためにも、クロトはこの道を選んだのだから。それはエリーも同じだ。

 その後は厄災の【呪い】を解除するために行動するも、現状はヘイオスたちという同じ契約者たちが邪魔をしている。

 これが、今クロトたちの経緯であり現状になる。

 余計な話ははぶいた、端的にまとめたことを伝え終える。

 

「その様な事を魔女殿は……。エリー殿も色々と思うところがあったはず、心中お察しします」


「わ、私は平気です。気にしないでください。……それに、私もクロトさんと一緒にいる今がいいので」


 リキは納得した様子。恩人を殺したという事実を突きつけてもあまり変化はない。

 問題はルゥテシアだ。ルゥテシアにとっても魔女は【願い】を叶えるきっかけを与えた恩人である。その【願い】はなんだったのか。それによってはまた逆上してもおかしくはなかった。今でもだんまりであり、いったいどんな心境をしているかもわからない。

 静かに受け止めたのか、それとも敵討ちを目論んでいるのか。

 しばらくして、ルゥテシアの肩が震えだす。そして、頬を涙が伝い落ちた。

 ――これはマズいやもしれない。

 感情に揺さぶられやすいルゥテシアなら、突拍子もなく何をしでかしてくるか。

 緊張走る空気に、クロトはいつでも対応できるように魔銃に手を伸ばす。


 途端に。ルゥテシアは大泣きを始めた。


「わぁあああああん!!」


「ル、ルゥ殿!?」


 寄り添うリキ。そのリキを次にルゥテシアはギュッと抱きしめる。


「リキく~~んっ、この子たち、チョー可哀想だよーーー!!!」


 いったい何を言い出すのか。ルゥテシアはクロトとエリーを指差し、そう叫ぶ。

 

「ビビッときた!! まさか恋人関係だったなんて! それもすんごく感動しちゃうのー!!」


「……お前、何言ってんだ?」


 さて。先ほどの会話でそういった話は出ていただろうか。と、クロトは話の内容を振り返ってみる。端的にこれまでの経緯を述べたのみのはず。そこにお互いの恋愛を示唆する様なものが、はたしてあっただろうか。

 否定しようとするも、ルゥテシアは更に続けた。


「どう考えても、好きな子のためにあの魔女さんに勝ったって話でしょ!? それもすんごく辛いのをエリちゃん背負ってるじゃん! あたしも【厄災の姫】の話は知ってたけど、まさかエリちゃんがその子だったなんてビックリだもん! そんなエリちゃんをそこまでして守ろうとするなんて、それはもう恋以外なんて言えばいいの!!」


「こ、恋……ですか!?」

 

 言われてからエリーも顔を真っ赤にしてしまう。

 エリーとしては、確かにクロトに好意を寄せてはいるが、堂々と他者にそれを指摘されると恥ずかしくもなる。困った様で嬉し恥ずかしな表情だ。


「そ、そそ、そんなぁ。私とクロトさんは、その~、そこまで言えるほどではまだ~~」


『まだって言い方が今後の進展期待してるようにしか聞こえねーんですけど姫君ー。まー、ある意味間違ってないと思うがーーー、どうなんすか我が主?』


「……いや、普通にコイツの【呪い】を解きたいだけなんだが」


『嘘でもちょっとはその気を出しとけっての!! 俺なら即OKなのにーー!!』


 逆に、この関係を恋仲と認めないせいか、更にルゥテシアの熱が上がりだす。


「もうっ、()()()()()! いくら外野がいるからってそんなにそっけなくしないの! 女の子はちょっとしたことで傷ついちゃうデリケートな存在なんだから!」


「……おいちょっと待て。誰がクロちゃんだ」


 人生で初めて「ちゃん」付けで呼ばれてしまい、クロトも戸惑いがでる。隣ではそれを聞いたエリーが思わず「くすっ」と笑みをこぼしてしまう。同意するなとクロトはエリーを睨む。


「す、すいません。……ちょっと可愛いな~っと思ってしまいました」


「ルゥ殿もクロト殿を仲の良い方と認めている証拠ですよ。よかったです」


「お前もこれを良しとするな。……だいたい今日会ったばっかの奴を普通「ちゃん」付けで呼ぶか?」


 それも、男をだ。


「可愛いじゃーん! クロちゃんってなんか気ままな猫っぽいし、こっちの方がいい!」


「おいおい、マジかよ……」


 どうやらこのまま強行していくらしい。訂正を何度かは求めようとするも、ルゥテシアは応じない。一切取り合わない。その間、なんど「ちゃん」付けで呼ばれた事か。その間、エリーが何度笑いを堪えていた事か。

 この場で手を出す事もできず、理性がどうにか引き金を止めている。いっそのこと、受け入れてしまえば楽になるやもしれない。

 だが、ルゥテシアの言動はそれだけにはとどまらない。


「あれだよ。恋愛に年齢の差なんてないんだよぉ~。大事なのは~、――【愛】だもんね♪」


 言葉だけでなく、手でハートを作り、公衆の面前では言う事を躊躇われる単語を堂々を言い放つ。

 もはや反論する気力すら失い苦渋を黙って堪えるのみ。クロトは今更ながら理解した。ルゥテシアは苦手な部類だ。それもクロトの不快感を煽る言葉を幾つも放ってくる。本人にそういった意図はないにしても、これをぶつけられる本人が一番苦悩する事となる。

 「恋愛」「愛」。そういった単語は未だにクロトにとって地雷でしかない。

 

「…………話の途中で悪い。防音室かなんかねーか?」


「部屋出て~、左に真っ直ぐ行くと練習用の防音室あるよ~ん♪」


 ルゥテシアはニコニコと告げる。クロトは静かに立ち、そのまま部屋を出ていく。エリーもと、不穏なクロトにへと付き添った。

 その後、防音室だというのにクロトの怒号はルゥテシアの自室にまで届いていた。微かだが、エリーがクロトをどうにか止めるような様子の声も……。

 

「……男の子って恥ずかしがり屋さんなのがほとんどだっての、忘れてた」


「正直言いますと、自分も少し恥ずかしくありましたけどね。ルゥ殿は自分に正直でいいと思います」







「ふぅ……、ちょっとは落ち着いた」


「そ、それはよかったです……」


 付き添ったエリーは疲れた様子。一息入れてから話の続きが始まろうとする。

 どこまで話したか。脱線から話を戻そうとすると、最初に口を開いたのはルゥテシアだった。


「そんでね! あたし色々考えたんだ~」


「……なんだよ」


「うん。あたしね、決めたの。クロちゃんとエリちゃんに協力してあげたいー、って」


 ルゥテシアはそう言った。それはクロトたちにとっても朗報となる。

 現状、ルゥテシアとリキはヘイオスたちに協力している立場の人間。どれほどまでの繋がりがあるかもまだ定まらない。そのため、この提案に懸念も広がってしまう。

 そして、提案に対し、続けて擁護するのがリキだ。


「自分も、できればクロト殿に協力したいと思っております。ヘイオス殿とも何かしらの誤解があるやもしれませんので」


 リキが言うだけで無駄に説得力がある。だが、それは逆にヘイオスたちにとっての裏切りになる恐れもあった。

 2人と違い、ヘイオスとオリガは魔女側に極力傾いている存在。ヘイオスは特にクロトに対して嫌悪を向けている。こちらに協力するなら、対象は2人にも及ぶ可能性。それをわかっての提案なのか。


「それはいいが。言っとくが俺は眼鏡野郎と仲良くするつもりはない。今は様子見だろうが、アイツはこっちの邪魔をしてきやがる。【呪い】の解除もさせないつもりだ。どう誤解があろうが、今の状況が知られれば、向こうがどう出てくるかもわからねーしな」


「うーーーん。まあ、どうにかなんじゃないかな? 黙ってればバレないよね? そんで、ほとぼり冷めてからちゃんと話せばいいし。なんだかんだで、あたしたちって仲間みたいなもんでしょ? ヘイちゃんもできれば争いたくないって言ってたし」


 確かに、ヘイオスは当初から穏便に済ませようとはしていた。しかし、こちらを阻む形なら対立は免れない。

 やはり魔女の存在をヘイオスに突き付けるべきか。魔女の言葉ならヘイオスたちには一番効果がある。

 そうこう考えいれば、話はもはや協力前提にへと進められてゆく。


「それにしても、エリー殿の【呪い】はどのようにして解くものなのでしょうか? 自分は【聖杯】というものもあまり知りませんし」


「あたしも~。図書館行ってたみたいだけど、なんも手掛かりなかったの?」


「ん? ねーよ。どこもその研究からは手を引いている。なんもなかったし、どう【聖杯】を使えば解けるかもわかってない。だから、とりあえず【聖杯】を探してるんだが……」


 よくよく考え直すも、例え見つけたとしてどう扱えばよいか、その具体例もなにもない。そもそも、研究としても扱いが不明なことから手を引かれているのだ。手掛かりなしに、【聖杯】を見つけてどうすればよいのか。その点が不明となっている。

 

「では、こういった考えはどうでしょうか?」


 リキが手を挙げる。


「【聖杯】というものはいったん置き、【呪い】の本質について考える……というのはどうでしょう?」


「【呪い】の本質?」


「故郷でも【呪い】【呪術】などはあります。しかし、【呪い】によって解除は様々です。まずは【呪い】がどういったものかを見極める必要があるかと。でなければ、【呪い】を悪化させる結果にもなります。どういった【呪い】にも、解除に手順が必要ですので」


 【呪い】を解くための物を探すではなく、【呪い】の仕組みを把握する。別の視点から【呪い】の解除方を考えるというものだ。

 確かに、そこも重視すべき問題だ。危険な【呪い】だからこそ、その扱いには慎重にならなければならない。【聖杯】というまだ理解しがたい物体よりも、そちらの方が最優先とすら考えられる。

 出せる情報は多いに越した事はない。クロトはしばし、その流れにのる事とした。

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