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厄災の姫と魔銃使いⅡ  作者: 星華 彩二魔
第二部 二章「白状星」
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「魔女尋問 1」

 腕を引かれるエリー。困惑と焦燥に頭を混乱させるも、クロトの歩む方向にへと身を進ませてしまう。

 途中で何か問い詰められるのではと、心の底不安でいたがクロトは無言を貫いている。気付かれていない、という考えはエリーの中ではなかった。どう考えても自分が怪しまれるということはわかり切っている。注意や叱られるなどはその場で終わらせていたというのに、今回はそれが全く見られない。

 しかし、何処へ連れていかれるのか。その先が不安でしかたがない。

 街中ではエリーたちとは逆方向に進む住人も見受けられる。おそらく自分がしでかした音が原因だろう。人の数も増えてきている。時刻は朝の7時を過ぎている。人々の動きが活発化する時間帯だ。自然と外に出る住人が増えてしまうのも当然。エリーの視界には増える人の姿が流れて行き、それに気を引かれてか溜め込んだ不安を幾分かは軽減してゆく。

 対するクロトは周囲が変化しようと無言の一点張り。目は何かを探す様に彷徨わせていた。

 

「……あ、あの、クロトさん? …………いったい何処に?」


 引かれる腕も疲れ始めてきた。クロトがわざわざこうしているのだ。何処かへ向かうのは確か。方向は宿すらとっくに通り過ぎている。

 聞いてみるもクロトは問いに答えない。変わりに、独り言の様に一辺を見て呟く。


「……この辺でいいか」


「え?」


 やっと聞けたクロトの声。気になり耳を傾けようとするも、急に引かれていた腕が強く引かれる。 

 驚いて細かな悲鳴をあげたエリー。転ばないように身を寄った壁で支える。

 いったい何があったのか。それを確かめようと正面へ向き直るが、その時星の瞳が大きく見開く事となった。

 建物の壁とクロトに挟まれ、至近距離でエリーは逃げられない様に追い詰められていた。

 クロトの目が、じっとエリーをまっすぐに見下ろす。


「……ク、クロトさん? あの、……いったい、何を?」


 感情が無い様な目に怖さすらある。思わずゴクリと喉を鳴らし、冷や汗を浮かべてエリーは問う。

 相変わらず問いに答えというものは返ってこない。返ってくるのは、逆にエリーを問いただすようなもの。


「――言え」


 エリーは、内心ドキッとしつつ、青ざめた顔を強張らせる。


「…………え?」


「言え」


 よく聞き取れなかったと判断されたのか。再度クロトは要求。

 頼み事というよりは、命令にも聞き取れる。またしてもエリーの冷め始めていた不安が掘り起こされた。

 内容としては、やはり先ほどの事が原因だろう。それしかエリーには心当たりがないのだから。

 しかし、その話はまだ早いと思える。


「な、なんのことでしょうか……?」


 エリーは苦笑いを浮かべ、じりじりと身体を横にへと進ませなんとか逃れようとした。

 抜けようとすれば、クロトが腕を伸ばしてエリーをその場に閉じ込める。

 だんっ、と突き出された腕は壁にぶつかり、エリーはビクッと肩を跳ね上がらせる。クロトの様子をうかがうと、更に顔が近くなっており、あたふたと目を泳がせてしまう。

 下手な誤魔化しは通用しないことに焦るを感じる。エリーの足は小刻みに震えてもいた。

 そして、誤魔化そうとした行動は返ってクロトの気に障った。


「いいのかお前? ……そんな事を言っていて」


「……?」


 いったいそれはどういう意味なのか。エリーは不意に視線がクロトから逸れる。なにやら、視線を感じたのだ。

 その正体は、こちらにチラチラと視線を送る行き交う人々だ。壁際に追い詰められて問い詰められている構図。傍から見ればもめ事にも見える。もしかしたら、他者には別の考えすらあったかもしれない。

 要は、2人は今。公衆の面前に現状を晒しているということ。

 急に視線を引き付けてしまったせいか、エリーは更に顔色を蒼白とさせた。

 この状況が続くのは良くない。多くは通り過ぎて行くが、近くには喫茶店もある。テラス席からも、時折こちらに視線を向ける客がおり、一時的なものにもならない。

 焦りだすエリーは注目の的になっている事に羞恥心すら刺激され、赤らんだ顔を再度クロトに向ける。


「クロトさん……。お話なら、別の場所で……」


 せめて人のいない場所が望ましい。


「宿に戻りませんか? クロトさんも、朝ごはんまだですよね?」


 今はクロトの気を別に逸らす事が優先だ。あれやこれやを提案するも、クロトはエリーの前から身を退く事はない。

 

「此処で言え。今すぐに」


 どうしてもクロトはこの場で決着をつけるつもりだ。

 しかし、どうしても周囲の目が気になる。そして、クロトの目もいつにも増して怖く見えた。

 

「で、でも……ほら、周りの人も見てますし……っ」


 もしかしたら、周囲の視線に気付いていないやもしれない。なら諭せば考えを改めるやもしれないという考え。


「アホか。こっちはそうしてんだよ」


 どうもこの事態すらクロトの作戦の内とのことで、エリーは逃げ道を尽く失ってゆく。

 クロトはこのような場でも意見を変えようという気は全くない。最初っからわかってやっているのだ。クロトもエリーが困る事はよくよく理解している。

 エリーは心で助けを求めた。心の声は内に宿る魔女にへと訴える。


 ――どうしましょう魔女さんっ。クロトさんとっても怖いです! どうしたらいいですか!?


 エリーのことも、魔女のことも、こんなすぐにバレてしまうのは魔女にとっても不都合だろう。クロトの相談もなしにやったのだ。今正直に話したとして、後で何を言われるかわかったものではない。クロトは今、非常に怒っている様子なのだから。

 魔女なら打開策をなにか考えてくれるはず。エリーは長年生き続けてきた魔女に期待を託す。

 ……が。


『どうしましょう、愛おしい子! クロトがこんな無防備に目の前まで迫ってきてくれているなんて、私なんだか歓喜で胸が苦しくなってしまうわ! さすがクロトね。魔女である私を殺しただけはあるわ。また死んでしまいそうなくらいだもの。ああ、撫でてあげたいわ。いいこいいこしてあげたいわぁ~~!』


 この危機的状況に何を嬉しそうに語りだすのか。

 エリーの魔女への期待は、この時一瞬にして泡となって消えてしまった。

 

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