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04 夜会は終わる 第三者目線

そこに近づいて来た背の高い男性が


「エリー様、踊っていただいてよろしいですか?」と声をかけた。


「リチャード様、喜んで」とエリーが手を取ると


【!!!】と浮かんだ。エリーが喜んでいるのがわかった。


二人が優雅に見つめ合って踊る姿に見惚れていると曲が終わった。


エリーは王太子とリジー、公爵夫人と遅れてやって来て合流した公爵の様子を確認すると、男性に手を取られてバルコニーへ出た。


【どういう展開になると思う?】令嬢の本音はおちゃめだった。


その文字が消えると


一同は好奇心と期待に満ちて、お互いに目を見交わすと一斉に詰めていた息を吐いた。


王太子一行は国王夫妻と共に控え室へ消えた。


残された出席者は、わくわく顔で輪になって噂話を楽しんだ。輪を解き、また輪になって話し続けた。



しばらくすると、バルコニーにいたエリーとリチャードも侍従と共に消えて行った。




やがて先ほどのメンバーが、新たに一人を加えて、再入場した。



【しばらく黙っているよ】と妖精が協力するようだ。


その文字が消えると王は口を開いた。


「みなのもの、もう予想は出来ていると思うが、エリー嬢と王太子の婚約は白紙に戻す。


エリー嬢、長い王太子妃教育、ご苦労であった」


無言で頭を下げるエリーの頭上は


【いえいえ、それなりに楽しゅうございました。特に語学は好きでした。ありがとうございます】


言葉は、こうだった。


「至りませんで、申し訳ありませんでした」


誰ともなく拍手が起こったが、すぐに収まった。


王は頷いて宣言した。


「息子エドワードは改めて、エリー嬢の妹のリジー嬢と婚約する。リジー嬢の王太子妃教育が終わるまで、エドワードは王太子の座を辞退する。それまでは暫定王太子に、我が弟の息子、アレクを指名する」


【リジーの教育・・・まず机に座ってみよう】妖精は見てるんだと客は思った。


「アレクこちらへ」の声でアレクが国王のそばに立つと


「アレクはまだ未熟だが、みな助けてやって欲しい」とまだ、十二歳のアレクを紹介した。



「王様、わたしよく、考えたんですけど、やっぱり王太子はエディのままでいいと思います」


「リジー、黙りなさい」とエドワードが言った。


リジーはビクッとなってエドワードを見ると


「そんな虐めるような言い方はひどいです。お姉さまみたいです。ねっお母様」と言った。


公爵夫人は聞こえない振りをした。


エリーの頭の上を見ながら、リチャードが笑った。そこには

【お母様、どうしますか?わたくしのせいにできますか?】とあったからだ。



【公爵家の家庭教師は優秀さではなく、逃げるリジーを追いかける根性が大事!】の文字を読んだ王は、

「公爵」と呼びかけた。


「リジー嬢の教育はきちんとしてくれ」と言った。


「かしこまりました」と公爵が返した所で、


「お父様、わたしのよさをちゃんと伝えて下さい」とリジーの声がした。


【リジーはぶれない】客はこの意見に共感した。


「リジー、いい加減に黙りなさい」と公爵が言うと


【リジーがやらかしたことは全て、エリーの責任にされる。親は責任を取らない】の文字が浮かんできた。止めていた息を吐く音があちたこちらから聞こえた。


「黙りません。エディが王太子を外されたのですよ。お姉さまがなにかしたんです。お母様、いつものように叱って下さい。わからせてやって下さい」


エドワードと公爵の声が揃った。


「リジー、黙りなさい」「リジー、口を閉じろ」


国王がエドワードと公爵に言った。


「リジーを連れて行け」


二人は頭を下げた。


エドワードはリジーの腕を取り


「ここを出るんだ」と言った。


公爵は無言で反対の腕を取った。


「どうして」とリジーが言いかけたが、エドワードが口を塞いだ。


去って行くエドワードの姿をしばし見おくった国王は、耐え切れず、長く息を吐いた。


やがて、気を取り直した国王は


エリーとリチャードを招きこう言った。


「せっかくの出席だ。アレクになにか食べさせてやってくれ」


にっこりと笑うとエリーは


「王太子殿下、こちらへどうぞ。どれも美味しそうですよ。特別にお好きなものがありますか?」と言った。

頭上には

【可愛い。眠いかな?】


アレクは勢い込んで


「エリー様、わたしは好き嫌いなくなんでも食べます」と答えた。


「まぁそうですか?それでは」とエリーが言いかけると、リチャードがこう言った。


「わたしが、取ってくるから、二人は待っていてくれ」


それを聞いたエリーはアレクに向かうと


「それじゃ、遠慮なく座って待っていましょう」と言った。


アレクはかちこちと音がしそうなほどしゃちこ張ると腕を差し出して


「どうぞ。エリー様」と言った。


そんなアレクの頬は赤くなっていた。


エリーは


「ありがとう」と腕に手を乗せて、アレクに導かれ椅子に座った。





その後、エリーはリチャードと結婚して国を出た。彼は隣国の宰相の息子で、学生時代にこちらに留学していた人物だとわかった。


五年後、王太子アレクの婚約祝いの夜会に、二人が出席した。


エリーの頭の上に文字はなかったが、微笑みを見ると幸せが伝わって来た。







誤字、脱字を教えていただきありがとうございます。

とても助かっております。


いつも読んでいただきありがとうございます!

楽しんでいただけましたら、ブックマーク・☆☆☆☆☆をよろしくお願いします。



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― 新着の感想 ―
最良に近いです、このまま長編、或いはこの形式で別なストーリーで長編希望です、いけると思います。
妖精のいたずらと言うとチャネリングとか入れ替わりとか人間にはありがた迷惑な幸運や被害をもたらして大体が嫌われる物なのに この話では口に出せない苦しい思いをしていて誰もが手を出せず本人も誰も助けを求める…
個人的には、公爵家の跡継ぎ問題のほうが気になる。 なろうって二人姉妹とかで両方家出てくような内容けっこうあるよね、今回はアホが臣籍降下で婿入りすんのかな?
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