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03 夜会 第三者目線

夜会当日、王宮から侍女がドレス持参でやって来た。


侍従の彼の提案した通りだ。


「殿下、贈ったドレスはいつも、リジー嬢が着てますよ。ドレスを贈って貰えない婚約者としてエリー様は侮られています」


それを聞いて、殿下は不思議そうに言った

「ドレスくらいなんでもいいだろうに。エリーはエリーだ」


侍従は辛抱強く言った。

「そう思うのは殿下だけです。他人はドレスを貰えない点だけを見ます」


殿下は

「贈ったぞ。ドレス」


「贈って終わりではありません。贈ったドレスを着てダンスを踊るまでです」


思わず強くなった語気に殿下は目をぱちくりとした。


それを見て気を鎮めた侍従は、殿下に命令した。


「いいですか、侍女を・・・着付けをする侍女をドレス持参で送りこんで、着付けとか、化粧をして貰って、王宮が手配した馬車で来て貰うんです。すぐにわたしが手配しますので」



そして夜会当日、侍従に言い含められた殿下は、エリーを出迎えに出ていた。


殿下の後ろに控える侍従は「妖精のいたずら」よ終わっていてくれーーーと願っていた。


馬車から降りたエリーの頭の上にはなにも書かれていなかった。侍従は少しだけ希望を持った。




そして、王族の入場が始まった。名前を呼ばれたエドワード王太子はエリーの手を取って会場へ入った。


拍手と歓声に迎えられたが、


「エディ!!わたしはここよ」と大きな声が聞こえた。


【はい、リジーの登場。いつものように駆け寄らないの?】


歓声がどよめきに変わった。


これからおもしろいものを見るんだと言う期待のどよめきだ。




しかし、エドワードは気づかぬふりをした。続いて外国からの賓客が紹介された。


彼らは皆、王太子とその婚約者の前に立ち止まり少し言葉を交わす。


【お孫様、おめでとうございます。思慮深くて優しいお祖父様になるでしょうね。お孫様が羨ましい】

あぁ本音に人柄がと、客は思った。


実際にエリーが口にしたのは

「長いこと務められたと伺っております。おかげで我が国も同じように平和でございました。

これからはご自分と家族の時間でございますね」

ごつい顔の元宰相の瞳は潤んでいた。



海のそばの小国の小柄な大使と挨拶をしている時


【今年のワインは美味しいよ。樽から飲んで大人気だった】これは確実に妖精情報だ。


この国のワインは、この後高騰した。なんせ、妖精に大人気のワインだ。




エリーがその事に気づいたのは先日の王太子とのお茶の席だった。もしかして妖精にいたずらされている?


自分の頭の上に視線が彷徨うのだ。


試しに王太子への不満を心で呟いたら伝わったようで、おろおろしているのが愉快だった。


「妖精のいたずら」はどんな発言も不問にされる。


初めて、王太子と公の場に出るのが楽しみに思えた。



挨拶が終わりダンスという時に、いつものようにリジーが飛び込んで来た。


「エディ、お待たせ」


いつものようにエリーを少し押しのけ、王太子の腕を取った。


【ほんとに二人はぶれないわね】これはエリーの本音と思うものが多かった。


【今日は抱きつかないね】どっちだろうと客は思ったが、おもしろいからどっちでも良かった。



「リジー、やめてくれないか。ここは婚約者と踊る所だ」


【婚約者はリジーでいいでしょうに。お似合いですわ】エリーの本音は残酷だった。客は王太子に同情した。


追い打ちだとエリーはこう言った。

「妹に譲れないのは王太子妃にふさわしくありません」


これは公爵夫人得意のセリフだ。


【こんな事を教育する親を持っているのは王太子妃にふさわしくない】エリーか妖精か?客は悩んだ。


「王太子殿下、いつもの通りで、いままで一度もわたくしと踊った事はありませんよ。陛下も王妃殿下も認めてらっしゃいますので、いつも通りにファーストダンスはお二人で」


エリーなら我慢してくれると思っていた国王夫妻の顔色は悪かった。


【おぉぉ、王妃が卒倒しそうだ。あのヒス女の面付きが気に食わないと思ってたんだ】これはさすがに妖精の感想だろうと客は思ったが、少しの可能性を思うと笑えなかった。


【どうしたんだ?公爵夫人の得意顔が冴えないようだ】妖精だよな。


【さすがにリジーが無作法だと思ってるのでは?】これも妖精?


【今更だよな】間違いなく妖精だね!と言った感じに客は判定していた。


音楽が始まり王太子とリジーが踊り始めて、次々に踊りの輪に加わって行く人々はさりげなくエリーの頭の上に視線を彷徨わせる。


【どうして今日は殿下はわたくしを気にするのでしょう? 家で面倒になるのよね。妹の面倒を見てないって。

今日はドレスをリジーに取られないようにしたようだけど、どうしたって言うの?


調子狂うよね。

いつもわたくし宛のドレスをリジーが着ているのを平気な顔で見てるのに】なるほどねと客は思わず頷いていた。


リジーとのダンスを終えた王太子はエリーにダンスを申し込んだ。王太子は胸が塞がった。


リジーに断固たる態度を取っていれば・・・もう、遅い。


エリーはあっさりと王太子の手を取るとステップを踏んだ。


【生まれて初めてのダンスの相手がこの人とはね】


聖母のように微笑むエリーとこの文字はおかしくて怖かった。


ダンスが終わると待ち構えていたリジーが


「エディ」と言いながら王太子の腕を取った。



誤字、脱字を教えていただきありがとうございます。

とても助かっております。


いつも読んでいただきありがとうございます!

楽しんでいただけましたら、ブックマーク・☆☆☆☆☆をよろしくお願いします。



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