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プロローグ

 [日間] 異世界〔恋愛〕ランキング - 完結済

 一位になりました!

 (2024.7/26.9:00確認)

 たくさんの応援ありがとうございます!

 楽しんでいただけると幸いです。


 オギャア!オギャア!

 朝日が昇る頃、私は心待ちにしていた愛しい声を聞いた。

「奥様、おめでとうございます。元気な女の子ですよ」

「あぁ……、やっと……会えた」

 その子はまだ羊水から出たばかりで、顔や体に血が着いていたが、紛れもない私の可愛い赤ちゃん。


「すぐに整えますね」

 そう言って、産婆の女性は赤ちゃんを軽く沐浴させ、清潔な布で包み、私の枕元に連れてきてくれた。

 軽いけど確かな重み。

 産まれたばかりだから、皮膚は赤黒く、シワシワで、友人達に見せてもらった生後3ヶ月の赤ちゃんとは違うが、とても愛しいと魂が震えるようだ。

 

 祖母に似た黒髪と、一見黒目に見えるが、光加減で深い海を思わせるダークブルーの瞳。

 愛らしい。

 彼との赤ちゃん。

 私は今、世界一幸せだわ。


 私はリリーシア・ローゼンタール(19)

 現在はローゼンタール伯爵家の伯爵夫人だが、結婚する前はブロリーン男爵家の娘として生きてきた。

 男爵家と言うが、マルティンソン侯爵家の分家なので、悪し様に侮られたことはない。容姿もそれなりに整っているし、少しウェーブが入った金髪は周りからの評判もよかった。

 実家の財政は、贅沢をしなければ困らない程度に恵まれている。


 私の夫、エドワード・ローゼンタール(21)とは貴族学院の武術大会で知り合った。

 さらさらの銀髪に、少し切れ長の青い瞳の男性だ。線が細くて、女性と間違われそうな容姿をしている。

 貴族の男性は幼少期から剣術を嗜むのが常識で、学院では必ず武術大会に参加する風習があった。

 上位入賞者は皆に讃えられ、王宮騎士団への入隊推薦も貰うことが出来る。また、意中の女性に告白する絶好の機会にもなっていた。

 そんな男性達の真剣勝負の大会に、彼は腹痛を理由に参加せず、保健室でお菓子を食べていた。


 傷薬や包帯の補充のため、当時保健係だった私は、保健室でお菓子を頬張る彼に遭遇した。

『君もお菓子を食べないか?』

ーーと、悪びれる様子もなく私を誘うから、本当に可笑しかった。

 

『俺、剣術より弓の方が得意なんだ。武術大会も剣の模擬戦じゃなくて、弓のまと当てなら喜んで参加するんだけどな。そもそも、剣の模擬戦だと体格が良い奴が有利だと思わないか?俺みたいに、ヒョロイ奴は力負けして、怪我して終わりだよ。出るだけ損だと、ずっと思ってたんだ』

『フフフ。そうですね。剣術の事はあまりわかりませんが、歴代の優勝者は体格が良い人が多かったと言われてますよね』

『そうだろ!騎士を目指してる奴だけが参加すれば良いんだよ。実に無駄な行事だ』


 私は補充作業も忘れて彼と話し込み、同じ保健係の子が来るまで、彼との交流を楽しんでいた。


 彼も私との会話が楽しかったのか、それからは廊下や登下校時に会えば挨拶をする仲になり、城下町に一緒に遊びに行ったり、誕生日や、季節のまつりで贈り物をしたりと、交流を深めて行った。


 そして、彼の卒業式の日、告白されたのだ。


『君が好きだ。その……俺は男らしいとは言えないが、君はそんな俺を笑うでも、男らしくあれと言うこともなく、ありのままの俺を見てくれる。俺は君とこの先の人生を歩みたい。君となら、楽しく温かい家庭を作れると思うんだ。俺と結婚してくれ!』

『はい。喜んで』


 私は彼の告白に喜び、すぐに婚約をした。

 そして、私の卒業を待って結婚。

 新婚旅行が終わるとすぐに妊娠をし、今日、私は赤ちゃんを出産したのだ。


「リリーシア……」

 愛しい彼がゆっくりと近づいてきた。

 産婆の女性が招き入れてくれたのだろう。


「エドワード……」

 私は彼に笑いかけた。


「……」

 緊張しているのだろう。

 赤ちゃんを見た彼は複雑な顔をしている。

 そう言えば、友人の旦那様は子供が産まれたことに感激して号泣したと言っていた。もしかしたら、エドワードは泣くのを我慢して居るのかも知れない。


「エドワード」

 優しく語りかけた。

 泣きたいなら泣いて欲しい。喜んで欲しい。

 そう思ったのに――。


「黒髪……。やっぱり……」

 そう言って背を向けられた。

「え?」

 彼は足早に部屋を出ていた。


 祖母が黒髪だったのは、彼も知っているのに、あんな苦しそうな顔をするなんて、どうしたのかしら?

 もしかして、黒髪が嫌いだったのかしら?

 いいえ、彼はそんな見かけで判断するような人ではないわ。

 きっと、驚いただけよ。きっと……。

 

 そして、出産から一週間たった日。


「君には失望したよ」

「え?」

「それは俺の子じゃない」

 冷たい視線を私の腕に抱かれた娘に向けた。


 仕事が忙しいと見舞いにも来なかった愛する彼は、赤ちゃんとの親子鑑定書を持って現れた。

 そこに『二人の親子関係は認められない』と記載があった。



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