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不審者騒動

「流石は王都と言うだけあって、活気があるね」


「森にいた時とは違って、人が多いわ……」


「お姉ちゃんも人に酔いましたか? 私も、少しだけ酔った気がします」


「確かに、森の中での生活とはだいぶ異なるな。少しずつ、慣れていくしかないだろう」


 俺にとっては別に普通というか、むしろ東京と比べるともっと人の数は少ないはずだ。


 道行く人たちの服装は布を一色で使った簡易なものが多く、ファッションスタイルも奇抜さなどはどこにもなく、本当に平々凡々な恰好をしている。


 たぶん、暴力団の着ていた革ジャンとかもなく、こっちの暴力団は半裸で粗雑な布を使った服を着たマッチョ軍団なんだろうなあ。


 せめて、黒いローブとか着たテロリストくらい出てきてくれないと盛り上がらないよ。


「あ、あそこが仕立て屋さんみたいね」


「どこだ?」


「あれだよ」


 Kが指差した先には、確かに緑の小さな看板が店先に吊るされており、そこに仕立て屋の証である服の絵が描かれている。


「良い服があるかもしれん。行ってみるか」


「賛成! 早く行こう!」


 Kがばーっと走って仕立て屋の方へと駆けていくのを三人で見送る。


「楽しそうだな、Kは」


「そうね。服が買えるのが、よっぽど嬉しいのよ」


「でも、ジョーカー様。私たちも買ってもらっていいのですか? 別に、魔力で服を編めば必要はないと思いますけど」


「いや、備えはあった方が良いだろう。魔力が使えなくなるような状況も想定しておかねば」


 Qの疑問は最もだと思うが、異世界のお約束によくある魔力を封じる何かがあると思うのだ。万が一、そうなってしまえば、彼女たちは全裸で街中を歩くことになる。


 紛うこと無き十八禁の内容だ、到底許されることじゃない。


「まさか!? ジョーカー様はそんな先のことも見据えて……。感服いたしました!」


「ふん。当然のことだ」


「そういうことなら、私たちも素直に甘えるとしましょうか。流石に、肌を全部晒しながら公道を歩く変態にはなりたくないもの」


 分かるけど、往来でそういうことは言わないものだ、A。


 Kに追いついて仕立て屋に入ると、そこは割と上質な服ばかりが置いてある店だった。


 上着、スカート、下着に靴下、どれも明らかに絹や肌触りの良さそうな布地をあしらったものばかり。


「凄いわね……。これが、服……」


「着心地が良さそうですね、派手な物や艶やかな物もありますよ」


「ああ……。これはちょっとばかり、お高いかもしれないね……。やっちゃったかも」


 街で歩いている人たちが着ているのよりワンランク上、つまりは貴族らが来るような高級ブランド店のようだ。知らずに入ってしまったとはいえ、このまま店員に見つかった上で帰ったら冷やかしに思われるかもしれない。


「いらっしゃいませ、お客様。本日はどのような服をお買い求めでしょうか?」


 今なら出られる! と思っていた矢先に店員に捕まってしまった。


 非常に明るい笑顔で見る女の人から「金を落とせやゴラ」という幻聴が聴こえてくる。


 服屋に行くと、似合ってるかどうかも分からない服を言われるままに勧められたりして着るんだけど、結局何か違うってなって買わないとか、いっそのことマネキンの着ているセットをまんま買ったりすることもある。


 詰まるところ、服屋や仕立て屋というのは俺の苦手な店員の勤める店舗堂々のナンバーワンなのだ。


 しかし、狼狽えてはならない。どんな相手が前に立ちはだかろうとも、必ずや乗り切って見せるのだ。


「服を見繕ってもらいたい。黒と白を基調としたものがいい」


「それなら、とっておきの物がございますよ!」


 店員が笑顔で言うものだから、俺は取り敢えず勧めに乗ってみることにした。


「どういうのだ?」


「こちらでございます」


 彼女がパーッと走って戻って来た手の中には、白いワイシャツに黒いズボン、黒のベルトに黒いネクタイ、そして黒い帽子。まるでボーイか、バックダンサーか、もしくはマフィアの若旦那が着るような割と近代的なものであった。


「こちらの服は最新のモデルになっておりまして、シンプルですがどんな殿方でも格好良く魅せることができますよ。お兄さんは顔立ちも宜しいですし、きっと異性からの視線を独り占めできるかと。いかがでしょう? 一セット、銀貨十枚でお売りいたします。試着もできますが、どうなさいますか?」


 俺は顎に右手を添えて悩む素振りを見せるが、珍しく高評価だ。


 分かっている、この人は分かっている。黒の良さを、とてつもなく理解している。


 シンプルだが格好つけすぎず、だけど自然にお洒落になれるのが黒と白の組み合わせ。


 しかも夜に活動するときには最適な服装であり、ここぞという場面では欠かせないものになるだろう。


「ねえ、ジョーカー。試しに着てみたらどうかしら?」


「そうですね。どのようなものか試すのは大事なことかと」


「見てみたいな、ジョーカーの晴れ姿」


 三人が背中を押すように言うので、俺も黙って首を縦に振った。


「では、こちらへどうぞ!」 


 店員が意気揚々と俺を奥の部屋へ誘導し、皆に見えないようにカーテンをしてささっと着換えを済ませた。


 と言っても、今は魔力で作った衣服を着ていただけだから簡単に消せるんだけどね。


 着替え終えた俺は、早速カーテンを開けて皆にそれをお披露目する。


「どうだろうか」


 皆の反応を内心、ドキドキしながら待っていると、一様に頷いて見せた。


「うん、いいんじゃないかしら」


「とても格好良いです! 素晴らしい! この瞬間を切り取ってしまいたいくらいです!」


「やっぱり、ちゃんと着こなせるくらいの容姿があるってことじゃん。うん、似合ってるよ」


「お連れ様の奥様方もそう仰られていますし、いかがでしょうか?」


「奥様だなんて……。そんな……」


 Qが店員の口車に乗せられて夢の世界に旅立とうとしていたので、もうこれで決めてしまうことにした。


「なら、これで頼む。このまま着て帰る」


「かしこまりました! 奥様方はどうなさいますか? 何か、ご要望の品は?」


 店員が聞くと、夢の世界からパッと戻って来たQが真っ先に答えた。


「私、ジョーカー様と同じものがいいです! 女物はないんですか!?」


 Qの要望に一瞬だけ店員は驚いた顔をしたが、すぐにキラリとどや顔をかました。


「もちろん、ございます。亜人に適した物もご用意してありますから、皆さんでお揃いというのはどうでしょうか?」


「お揃い……。まあ、いいんじゃないかしら?」


「正直、グダグダと悩むよりも良いかもしれないね。うん、取り敢えず着てみよう」


 そんなわけで、数分後。


 着替えた彼女たちが戻って来た。


「どう? 似合っているかしら?」


 まずはAが俺に感想を求めて来る。


 元々のスタイルの良さからくびれがくっきり見えて美しく、それでいて理知的なAが真面目な格好をしたということもあって、イメージが崩れない上に頼もしい相棒って感じがする。


「月並みだが、とても似合っている」


「ありがとう。それ以上の言葉は不要だわ」


 とてもあっさりとした塩対応だが、着飾った言葉よりも直接的な本心の方が嬉しいらしく、こちらもその方が気楽でいい。


「ジョーカー様! 次は私です! どうでしょうか!?」


 Aと見た目が似ているためにスタイルが良いのは変わらないのだが、Aよりも感情で動くタイプのはずの彼女の方が秘書キャラのように見えるのはどうしてだろうか?


 ……ああ、彼女の方が言葉遣いが丁寧で所作が落ち着いているからだ。意外とAの方が戦闘スタイルもごり押し感あるし、俺さえ絡まなければAより理知的なのかも。


 そう、俺がいるから脳内お花畑なキャラに見えるだけなのだ。


「落ちついていて、理知的な感じがするな」


「本当ですか!? 私、ジョーカー様に褒められちゃいました……」


 ぽおーっと頬を赤くしてうっとりしているQを眺めていると、更に奥から最後の一人がやってきた。


「どうかな、ジョーカー。私も中々似合うと思わない?」


 Kは帽子の上やズボンの後ろからちゃんと耳や尻尾を出している亜人専用デザインになっており、長身だからこそダンサーのような格好良さが非常に際立っているように見える。


「ああ、とても格好良くて似合っている」


「格好良いか……。うん、でもそう言われるのも悪くはないかも」


「どうやら皆さん、お気に召されたみたいですね! 一つにつき銀貨五枚、合計で銀貨二十枚頂戴いたします!」


 俺は金貨を一枚差し出し、お釣りとして銀貨八十枚を差し出される。


「銀貨の袋を四人で持ちたい。四人分に分けてくれ」


「かしこまりました」


 俺たち四人で銀貨二十枚の入った袋を持ち、仕立て屋を出た。


「さて、次はどこに行こうか」


「なら、次はご飯とかにしてみるのはどうかな? 美味しい物もありそうだし」


「確かに、森での生活で獣肉とか魚とか、そういうのしか食べてこなかったものね」


「ですね。どんなお料理があるのでしょうか? 想像もつきませんね……。楽しみです!」


 新しい服に身を包んで、皆テンションが上がっているようで何よりだ。かく言う俺も、今はお気に入りの服を見つけた上にそれを着て街中を歩けているのが嬉しいと感じている。


 しかし、そんな楽しい雰囲気に水を差すように誰かの視線がこちらに飛んでくる。


「ねえ、ジョーカー」


「A、気付いたか?」


「私も今気づいた。どうして、今まで気付かなかったんだろう。間抜けか、私は」


「申し訳ございません、これまで気付くことができず。一体、いつから?」


「ギルドからだ。奴はずっと俺たちの後を追っている。もしかしたら、他にも仲間がいる可能性があるが、俺たちが固まっている限りは尻尾を出さないだろう」


 俺たちの後ろにいる彼は常に一定の距離を保って俺たちを監視している。


 恐らくだが、俺たちが仲間と別れるか、あるいは人気のないところに移るのを辛抱強く待っているようにも感じられる。


 このまま付きまとわれるのも面倒だし、ここらで一度、彼らを排除しておこうか。


 本当は夜まで待とうかと思っていたけれど、報酬が貰えるのは別に悪い事じゃないし。


「三人とも、それぞれ散会して裏路地に入れ。奴らを倒して情報を巻き上げる」


「分かったわ」


「了解しました。Q、頑張らせていただきますね」


「なるべく自然に散ろう。気取られたって悟られないように自然に」


 俺たちは別々の店に行くフリをして別れ、目についた近くの路地裏へと入った。


 表通りと違って薄暗く、人が二人くらい立てるスペースくらいの広さしかない。まだ昼間であったことだけが唯一の救いか、夜だったらほとんど何も見えなかっただろう。


 目と鼻の先に十字路が見えた頃、右側と左側、そして背後から気配を感じた。


 俺が立ち止まると、前方の十字路の右と左から一人ずつ黒ずくめの人物が現れた。顔はマスクのようなもので覆われていて正体は分からない。後ろの奴も同じか。


「お前たち、こんな場所で何の用だ? 茶会の誘いなら、表通りでもっと堂々としてみたらどうだ?」


「……」


 彼らは無言でローブの下の腰に付けていた剣を引き抜いて構えた。


「どうやら、地獄へのお誘いだったようだな」


 俺はニヒルな笑みを浮かべて、この状況を楽しんでいる風に見せる。


 よしよし、この謎の刺客から攻撃を受ける主人公キャラシチュエーションやってみたかったんだよね。


 こういうときの為に用意した台詞百選の中から今回のシチュに適しているのは……。


「だが、残念だったな。誘う相手を間違えた様だ」


 俺は右手に黒剣を出現させて構える。


「地獄に行くのは貴様らだけだ。覚悟はできているな?」


「……っ!」


「構うな、殺せ!」


「はあああ!」


「……愚かな」


 右前と後ろのローブが剣を俺に上段から振るって来る。俺は最小限の動きで左に避け、二つの剣を衝突させる。こんな狭い所で剣を振ったら、そうなるに決まってるだろう。


「この!」


「遅い」


 左のローブが剣を振るおうとしたが、俺はそれより一歩だけ早く踏み込んで胴体を斬りつけた。派手に血が飛び散るがもう一度だけ剣を振るって血の雨を浴びるのを回避する。


 せっかく買ったばかりの一張羅を汚すわけにはいかないからね。 


 まずは一人、マスクを外したらきっと情けない顔で死に顔を晒すことになるだろうな。


「くそっ! 一人やられた!」


「ここは逃げて態勢を……!」


「誘っておいて、つれないことを言うものではないぞ」


「ぎゃああああ!?」


 逃げようとして背中を向けた相手を容赦なく斬りつけて倒す。


 勝負の最中に背中を見せたら駄目だって、仮○ライダーとかプリ○ュアを見ている良い子なら誰でも知ってるぞ。


「さて、聞きたい事がある。貴様らの目的は何だ?」


「話すことはない! どうしてこんな……」


「なら、吐きたくなるようにしてやろう」


「ひっ……。や、やめ……。がああああああああ!」


 剣を握っていた右手ごと手首の先から斬り飛ばしてやった。奴はあまりの激痛に絶えられなかったらしく、その場に両ひざをついて無くなった手首の先を見つめている。


 もはやこれで剣を振るうこともできないだろう。


 異世界の謎の組織、実力がこの程度とはね。たぶん、三人とも魔力持ちだけど、扱い方がなってないっていうか拍子抜けっていうか。


 ほんの少しばかり期待した俺の方が馬鹿みたいじゃないか。


「吐け。次は左手を斬り飛ばされたいか?」


「ま、待て……。話せば分かる……」


「悪いが、不埒者どもに話すことなどない。道の違える者同士、話し合ったところで理解し合えるはずもない」


「ぎゃああああああ!?」


 宣言通り、今度は左手とお別れさせてあげた。もう箸も持てなくなったか、この世界に箸があるかどうかは分からないけど。


 これ以上、血を流させたら死んでしまうな。仕方ない、ちょっと面倒だけど次の手段に移ろうかな。


 黒剣を消し、今度は超手加減した拳でやつの顔を殴りつける。


「がはっ……。ごふ……。こ、こんなことして、ただで……」


「うるさい。口ごたえをするな。早く話せ」


「ま、ま……」


 顔面が膨れ上がるまで奴を殴りつけて、ようやく口を割ってくれた。


「だ、だん、じょん……。まち、はか……い」


「……気を失ったか」


 俺は奴の首根っこを掴んで表通りまで引きずっていく。


 さてと、他の奴らはどこに行ったのかな?


「ひ、人!?」


「誰かが負傷者を連れてるぞ!」


 このまま連れてったのはマズかったかな? 周囲の人が少しだけ騒ぎ始めた。


 他の皆は……っと。


「ジョーカー! 遅くなってごめんなさいね」


「ジョーカー様! こちらも片付きました! 褒めてください!」


「ジョーカー、こっちも終わったよ。全く、とんだ無礼者たちだったよ、楽しい観光を邪魔するなんてさ」


 三人とも無事に戻ってきたようだ。


 それぞれ一人ずつ、俺が連れていたのと同じ黒いローブの刺客を連れている。


「どうやら、一人ずつ捕らえることに成功したようだな。よくやった」


「えへへ~、ありがとうございます!」


 Qの要望通りに褒めてやると、彼女の顔がだら~っと溶けた。


「それで、情報は引き出せたか?」


「は、はい! ダンジョンと呼ばれているところで、何かをするみたいです」


「この街を襲う、とも言っていたわ」


「こっちも大体同じ。ジョーカーも?」


「ああ。どうやら、ダンジョンに何かあるみたいだな」


 ダンジョンか、そういうものがこの世界にもあるんだな。


 問題は場所なんだが、それはギルドに戻って聞いた方がいいかもしれない。


「王国騎士団、参上しました!」


「何かありましたか!?」


 そこへ、鎧を身にまとった二人の兵士が駆けつけてきてくれた。


 丁度良い、情報は手に入れたし彼らを引き渡すとしよう。


「丁度良かった。最近、巷を騒がせている不審人物たちを確保した。引き取ってくれ」


 俺は持ってきた依頼書を見せながら言った。


「冒険者の方ですね? ご協力、ありがとうございます! その失礼ですが、団長殿のお姿は見かけませんでしたか?」


「スワンか? 何かあったか?」


「いえ、先程から連絡をしようと思って探しているのですが、お姿が見えず……。もしも見かけましたら、お声がけをお願い致します! では、彼らはこちらで預かります!」


 騎士団の人たちが彼らを持っていたらしいロープで縛って運んでいった。


 彼らの仕事っぷりを見届けつつ、先程の兵士が言っていたことについて思考する。


「気がかりだな」


「スワンのこと? 事件に巻き込まれたのかしら?」


「仮にそうだとしても、騎士団長があのような俗物に負けることはないと思いますが」


「分からないよ? 奴ら、的確に私たち全員を襲ってきたわけだし、明らかに組織的に動いている。きっと、統率している人がいるんだよ」


「運悪く、そいつに当たったか。もしくは、まだ何か隠している兵器でもあるのか。いずれにせよ、悠長に事を構えている時間はないな。一先ず、ギルドに報告に行くぞ」


 俺たちは駆け足でギルドに引き返した。


 中に入ると、ギルドもまた大騒ぎになっているようで冒険者たちが激しく出入りをしているようだった。


「おい、何があった?」


 冒険者の一人を引き留めて事情を聞いてみる。


「実は、リオさんが戻ってないんだ。休憩に出てからずっと」


「何?」


「もうすぐ日も暮れる。最近は夜に不審者も出るし、このままじゃ危ないって大騒ぎしてんだよ!」


 なるほど、そういうことか。


 どうやら既に、リオは彼らの手に落ちた可能性がある。俺たちをつけていたのは依頼を引き受けたからで、その依頼を出しているのはギルド及びその職員。


 都合の悪い人間を始末して、自分たちの行動がバレないようにしているか。あるいは、街を破壊する準備が整ったから人質にしたか。


 いずれにせよ、状況は悪化している一方だ。


「ジョーカー君、それにA、Q、K。ちょうど良い所に来たな」


 ギルドの奥の方からエルハルトが出て来た。あまり動揺とかを見せなそうな御仁だが、今はほんの少し早歩きで内心ではかなり焦っているようにも感じられる。


 大切な部下が攫われたか、あるいは殺されたかもしれないのだ。焦るのも無理はない話だろう。


「リオの件は聞いたかな?」


「ああ。たった今な」


「私も探しに行きたいところだが、他の職員のことも守らねばならん。だから、今は冒険者たちに捜索してもらっているが手掛かりがない」


「手掛かりなら持ってきた」


「本当かね?」


「ああ。この件は例の不審者絡みだ。そして、どうやらダンジョンと呼ばれるところに何かあるようだ」


「ダンジョンか……。それなら、この王都の西側、郊外まで出た先に国が管理しているダンジョンが一つある。恐らく、そこのことだろう。他の冒険者たちは引き続き、王都内で彼女の捜索をする。不審者たちは今も王都内に潜伏している可能性がり、住民を騎士団と協力して守る必要がある。戦力をあまり割くことができないが……」


「問題ない。俺たちだけで十分だ」


「しかし……」


 エルハルトが俺たちの顔を見渡す。


「大丈夫よ、奴らは私たちが潰して来る」


「リオさんのことも、必ずや見つけてきます!」


「まあ、任せて。これでも、私たちは霧の竜を相手に生還した実力があるんだからね」


「……分かった。君たちに任せよう」


 エルハルトの瞳から、彼の駆けつけたい気持ちを確かに受け取った。


 絶対に事件を解決して戻るから、待っていてくれ。


「行くぞ」


「了解」


「行きますよ!」


「私たちの楽しみを邪魔したこと、覚悟してよね」

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