表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/288

桜の頃 2


富士見小の周辺には飲食店が少ない。前任校である栄小の周辺は有名な商店街があったので外食は基本徒歩だった。富士見で外食するには車が必須なんだそうだ。私は地下鉄で通勤しているから当然車は出せない。5年チームで車通勤なのは稲垣先生と九条くんなのでどちらかの運転に甘えることになる。


稲垣先生が連れてきてくれたのは中華料理店だった。稲垣先生の教え子のおうちで、店主は台湾の方だそうだ。本場の方が経営する中華料理店あるあるで、基本ランチはボリュームが多い。単品よりもランチセットの方がお手頃なのだがどう考えても食べ切れる自信が無いぐらいの充実度だ。稲垣先生と私はデザートに杏仁豆腐がついたAセットを、九条くんはチャーシューメンとチャーハンが同じ盆に載ったBセットを注文した。


「もう始まるね」

「4月始まってから入学式まで、ほんとあっという間ですよね」

稲垣先生と私が世間話をしている間、九条くんはスマホを弄っていた。スマホの画面からはTwitterの画面がちらりと見えた。若いな…。職場の方と食事に出掛ける時にスマホを堂々と弄るという発想は私には無い。


ランチが私達のテーブルに到着した。AセットもBセットも美味しそうだ。立ち昇る湯気と出来立ての料理の匂いが食欲をそそる。ただ…Aセットの唐揚げ、多過ぎないか?メニューにあった写真の2倍はあるのではないだろうか…?


「九条くん…唐揚げはお好き?」

静かに手を合わせて『いただきます』をしてからチャーシューメンを啜っていた九条くんは私を一瞥すると、静かに頷いた。

「私、絶対食べ切れないから…半分貰ってくれると嬉しいんだけど」

「いいんすか?」

ぱあっと嬉しそうに答える彼に、小皿に載せきれない程の唐揚げを手渡した。幸せそうに唐揚げにかぶりつく彼の姿はテレビのコマーシャルを見ているようだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ