露見 4
「犯罪って……。どんな?」
聞いてもいいのかな。聞いたらもう、後には引けない。でも、これを聞かないと話は進められない。
しばらく時緒は俯いた。恐る恐る顔を上げ、意を決したように私に告げた。
「英、産業スパイって、聞いたことあるか?」
「産業スパイ?言葉だけなら……」
産業スパイって、企業の極秘情報を巡って悪さをする、あれよね?遠い世界でしか聞かないような聞き慣れない不穏な言葉に、密かに身震いした。
「その、充さんは……産業スパイをやってるの?」
「その下っ端な。使い捨ての駒ってやつだ」
使い捨ての駒。そんな言葉、実際に使われているのは初めて聞いた。
「金が良かったらしい。充はその当時、生活が苦しかった。あいつはすごく素直な奴で、その先輩を疑う事なく、あっさりと話に乗った。でも」
苦しそうに語る時緒の表情は本当に辛そう。でも私に出来ることは聞くことだけ。それ以上のことは……きっと出来ない。自分の無力さを痛感する。
「この話は……ある商社と製薬会社が絡んでる。製薬会社が開発した物の情報を手に入れて、商社の人間に渡す。そういった内容だ」
吐き出しながら、ため息をつく時緒はもう既にしんどそうだ。一度話、止めた方が良い?
「ねぇ、時緒。話すだけでそんなに辛いなら、休憩してもいいんだよ?」