露見 3
「時緒が辛いのに……。何も言ってもらえないのは、寂しいの」
迷ったような、困ったような、複雑そうな表情。あとひと押しかな。時緒の瞳を、じっと見つめる。
「ねえ、今も……辛いんでしょ?」
そっと、ふんわりと、時緒の頭を胸に抱いた。遠慮がちに彼の腕が私の背中にまわった。
「何から……話したら、いいんだろうな」
注意深く聞かないと消えてしまいそうな小さな声で、時緒はぼそりと呟いた。
「ずっと仲良くしてる、中学の後輩がいるんだ」
私の胸に頭を預けたまま、彼は語り始めた。
「杉崎充っていうんだけど。充は、真面目に働いていた。職場の先輩に儲かる副業があると誘われて。その話に乗ったんだ」
私の身体を包む腕の力が緩んだ。顔を上げた時緒は迷子のような、頼りなげな、不安そうな表情をしている。
時緒の手を握った。一瞬、少し表情が明るくなった気がした。
「大丈夫。ちゃんと聞くから。ゆっくりで、いいから」
目で頷いた彼は続けた。
「でもやっぱり、儲け話って駄目だよな。充が手を出した副業は、犯罪行為と言われても仕方の無い内容だったんだ。──いや、犯罪そのよのだと、俺は思う」
犯罪。時緒はその犯罪に、巻き込まれているんだろうか……?
「充は何とかして、その話から逃げようと試みた。でも内情を知った後では逃がしてもらえないらしくて。困り果てた結果、俺を頼ってきた」