胸踊る 6
懇願するように告げると、目尻に溜まっていた生理的な涙が溢れた。
獲物を仕留める獣のように、律動が速まる。それに合わせて私の腰もいやらしく動く。彼が動きを止めたとき、私は意識を手放した。
夜中に目が覚めた。ここしばらく、朝まで熟睡できることは無くて。真夜中に一度は目が覚めてしまうことがじんわりとストレスになっていた。
今、何時だろう?なんだか身体が……いつもと違う。ていうか腕枕?誰の腕⁉︎ベッドの中で、私、服も身に付けずに抱き締められてる……⁉︎え、何事⁉︎
恐る恐る顔を反対側に向けた。
「──起きた?」
「九条くん⁉︎」
色香たっぷりの声が鼓膜を揺らした。至近距離で目を細めるとか。殺人レベルの色気を爆発させるとか、やめてほんとに。
そうだ。九条くんと付き合う事になったんだ。だから私は今服を着ていなくて、下腹部が……その、いつもと違くて。このベッドは私のベッドで。
「九条くん、じゃないでしょ」
「た、匠……」
「名前呼びじゃなかったから、もっかい食べようかな」
「え」
膨らみに顔を埋めた直後、ピリッとした痛みが走った。
「ん、いいじゃん。エロい澄麗の身体が、よりエロく見えるな」
「ちょ、匠……」
「やっと独り占めできるんだ。俺の印、沢山付けていい?」
「……服で、隠れる所なら」
首筋に口づけを落としながら「ここは?」って言う匠の声は嬉しそう。意地悪モード発動してる。
「却下でしょ。学校でキスマークとか、完全アウトだから……え、ちょ、匠……‼︎」