胸踊る 4
アパートの部屋の中に入って電気を点けようとスイッチに手を伸ばす。背後でガチャリと部屋の鍵を掛ける音がした。
スイッチまであと数センチというところで背中に匠の体温を感じた。靴を履いたまま抱きすくめられていることを自覚するのに数秒かかった。
「匠……?」
「もう、我慢しなくていいんだな?」
仕事モードとは違う、大好きな甘い低音が私の鼓膜を優しく揺らす。耳元にかかる、その吐息すら嬉しい。
「うん。我慢、しないで」
身を捩って匠の顔を覗き込んだ。
「言われなくても、もう無理」
さっきの車内とは比べ物にならないぐらいの、キス。噛み付くというより、もうこのまま私は匠に捕食されるんじゃないか……?
唇は重なったまま。ブラウスをたくし上げられ、膨らみを覆うレースが露わになる。外されることなく布越しに優しく触れられ、焦ったくて、下腹部の奥がきゅっとした。
「は……あ……っ、ね、たく、み……」
「ん?」
その甘い声に更に脳内が痺れそう。いつもの匠とは違う、オスの顔をした彼の表情からは、余裕すら感じられた。余裕無いの私だけ?ちょっと悔しい。
「中、入ろうよ」
「そうだな。でも中入ったら」
「え?」
「もう優しくなんかしてやれない。覚悟しといて」
オスの顔で、じっと目を見つめられる。その目に捕えられた私は、もう動けない。