胸踊る 3
一瞬私の顔を見た彼は目を見開いた。
「俺、大事にしたいんだけど。──本当に、襲うよ?」
「うん」
「明日、仕事なんだけど、襲うよ?」
「うん」
「ずっと我慢してたから。たぶん優しくなんか出来ない」
「九条くんの、好きなようにしてくれて、いいよ?」
手を引っ張られ、また腕の中に戻った。噛み付くようなキスが降ってくる。そのまま大きな手が膨らみを服の上から揉みしだいた。
「……っ!……はあっ……く、じょうくん……」
「澄麗も」
「ん?」
「名前で呼んで。匠って」
咥内を激しく吸われ、名前はおろか、発音する事すら出来ない。
「ほら、呼んで。澄麗」
彼の甘い低音が、服越しに伝わる体温が、私をただの女にしていく。
「呼ばないと続き、してやんないよ?」
「……匠」
「よくできました」
彼の手が服の中に入ろうとしたその時、ここが車内である事にようやく気付いた。
「待っ……て、匠……」
「え、何?」
少し不機嫌そうに、でも甘い声のまま、彼は怪訝そうな顔をした。
「あの、ここ、車だし……。私の部屋、行こう?」
顔が火照ったまま、彼の目を覗き込んで告げた。一瞬匠の動きが止まった。その直後、強く抱きすくめられた。
「澄麗、狙ってやってる?」
「え?」
「その顔」
「え、顔?」
「澄麗、俺の理性崩壊させる天才だろ」
「え」
そんなこと、と続けていたはずの口は再び塞がれた。唇の柔らかさも、舌の感触も、私の理性をあっという間に溶かしていった。