胸踊る 2
この後、どうなるんだろう……。このまま、九条くんの部屋か私の部屋に行くのかな?コンタクトレンズは緊急用をポーチに入れてある。化粧落としや化粧水とか、どうしよう?コンビニ寄ってもらう?でも言われてもないのにコンビニでお泊りセットを買うのってはしたない上に恥ずかしい。期待してるのバレバレ。
彼の左手と私の右手は繋がれたまま。指も絡んで、恋人繋ぎってやつだ。彼、左利きだから運転しにくいんじゃないかな?でも力強く繋がれたその手は離す気は全く無いみたい。
ていうか下着、大丈夫かな?上下揃えたものを毎日身に付ける習慣があって良かった。彼との「初めて」はお気に入りの下着が良かったんだけど。でも、彼が今日が良いと言うなら私も今日が良い。
車内の彼は無言のまま。私も私で脳内が忙しくて無言のままだった。
気がつけば、車は私の住むアパートの前に停まった。
「──着きましたよ」
「敬語?」
ポーカーフェイスで告げたはずの彼は頬を緩ませた。
「着いたよ」
「ん」
手は固く繋がれたまま。離す気は……帰す気は無い、とでも言われているような気がした。
「お茶ぐらい、飲んでく?」
彼が身を硬くしたのが繋いだ手を通してわかる。
「澄麗の部屋、行きたいけど」
「けど?」
「今の俺、襲う自信しか無いからやめとく」
手は繋いだまま、ハンドルに突っ伏して吐き出すように言葉を紡いだ。
「私……九条くんになら、襲われてもいいよ?」