熱 7
「もう……」
ベッドの上でも、洗面所でも、お風呂場でも求められた。朔さんの体力に限界なんて無いのね。
「まだ足りない?」
「そんなこと言ってません!」
「あ、敬語。碧、そんなにして欲しいの?」
「もうっ!怒るよ?」
「碧の怒った顔も可愛い」
キッと睨んだのに嬉しそうに目を細める彼の顔を見ると、どういうわけか怒る気が失せてくる。再び寝室に戻って、やっとベッドの上で眠れると思ったのに。私の睡眠はいつ取れるんだろう?
何度服を身に付けても優しい手付きでそっと脱がせてくるこの人の性欲も体力も底無しなんだと今日学んだ。警察官の顔をしている時の、あのキリッとしたあの人とこの人が同一人物だなんて。人間ってちょっと接しただけではわからないものだ。
突如、朔さんのスマホが震えた。朔さんは仕事用とプライベート用、2台持ちで。今震えているのはプライベート用。
「朔さん、鳴ってるよ」
「プライベート用だから大丈夫」
仕事用のスマホだと、朔さんはすぐに出る。プライベートでも出た方がいいと思うけど。
バイブレーションが止まった。数秒後、また震え出した。
「ねぇ、取ったほうがいいんじゃない?緊急かもよ?」
「スマホより碧を……」
「私が気になってしょうがないから出てよ」
真顔で訴えると、ようやく朔さんは渋々とベッドから出た。
「──お、悠か」