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熱 5


保護者対応に悩んでいた初任当時、よく励ましてくれていたのが今は澄麗と学年組んでらっしゃる稲垣先生だった。


稲垣先生は私が目指している「おかあさん先生」だ。あの当時程、早く歳を取りたいと願ったことは無かった。若い女というだけでお母さま方に敵視されるという環境は、何の経験も武器も無い新人にはハードモードが過ぎると思う。


「──葉月先生」

声をする方を見たら澄麗が私を小声で呼んでいた。

「ん?何でしょうか如月センセイ」

「ちょっと……ご相談が」

目を泳がせた後に廊下へと視線を動かす。澄麗に続いて廊下に出て更衣室に向かう。


「ちょっと碧、首、隠した方がいいよ!」

自分の首に指差して澄麗は慌て気味に告げた。

「え、首?」

ロッカーのドアに付いている鏡で自らの姿を確認する。今朝コンシーラーで隠したはずの跡が、くっきりと見えていた。


「えっ!嘘!」

「コンシーラーとかさ……」

「朝だいぶ分厚く塗ったんだけど」

「汗で流れちゃったかもね」

「どうしよう。コンシーラー家に置いてきちゃった」

「私のどうぞ」

澄麗からコンシーラーを受け取り、再び跡を消す為の微調整を始める。


「──澄麗、随分用意いいね?」

「え」

「九条くんも結構付ける人なんだ?」

「ちょ、碧。ここ職場……」

「ここなら大丈夫だって」

「大丈夫じゃないのは碧の首元だと思うけど」

ぐうの音も出ない。しかし、ずっとこの跡が見えていたのか。恥ずかし過ぎる。朔さんにクレーム言わないと。

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