熱 2
私が乙女ゲームをしていることは伏せて、それとなく「私が人質になったら朔さんの足引っ張っちゃうよ?」って話したときには「それ、刑事ドラマの見過ぎ」と目を細めて諭されてしまった。あれは非現実的なことなのかな?十分ありそうなんですけど。
日頃鍛えているからか、朔さんの身体は筋肉が綺麗についている。ボディビルダーみたいなゴリゴリじゃなくて、美術館にそのまま展示出来そうな……。今度、デッサンさせて貰おうかな?
朔さんの上腕二頭筋は程良く硬くて、ついつい触りたくなる。彼を呼ぶときに「ねえねえ」って袖の裾を引っ張る方が可愛いのは知ってるんだけど。私は服の袖よりも筋肉に触りたい。あれ?これじゃただの筋肉マニアじゃん、私。
そうじゃない。私は筋肉マニアなんじゃなくて、朔さんの筋肉マニアなの。誰でも良いって訳じゃない。
「──碧ちゃん。碧ちゃん?」
「……あ、ああ、朔さん」
「どうした?さっきから百面相になってるけど」
「え。百面相?」
「なってるよ。何考えてた?」
くつくつと笑う彼の笑い皺、いい。笑い皺、頂きましたー!
「な、何でもない。サラダ、美味しいなって」
いかんいかん。付き合って早々、私のイメージが崩れちゃう。
「胡麻ドレかければ大体美味いからな」