HYPNOTIC POISON [ヒプノティックプワゾン]7
私の部屋に帰ってきた。満紘も一緒に。まだ恐怖が抜けなくて、満紘のどこかに触れていないとどうにかなってしまいそう。
「梨愛……」
自分でも気付かぬ間に、満紘の服の裾をずっと握りしめていた。
「あ、ごめん……。皺になってる」
「皺ぐらい、いいよ。大丈夫か?」
私の顔を覗き込む彼の表情は心配そのものだ。
まだ怖いけど。でもいつまでも怖がっているわけにはいかない。
「だい、じょうぶ……。ありがとう、もう、大丈夫だから」
だから、自分の部屋に戻ってもいいよ。その言葉が喉元に引っかかって出てこない。
満紘はそっと、私を包み込んだ。
「どこが大丈夫なんだよ。今夜は俺、ここにいるから。今の梨愛を一人にしておけるわけないだろ?」
しがみついて離れない私の頭を、満紘は何度も何度も撫でてくれた。腕の力を緩めると、柔らかな表情をした彼と目が合った。
「梨愛。もういっそ、一緒に住まないか?」
「え……」
満紘がずっと、私と同じ家にいてくれたら。そんな心強いことはない。でも……。
「それって、同棲?」
「──結婚は、ハードルが高いか?」
「えっ……!」
結婚。結婚って、あの、結婚だよね?ただ付き合ってるだけじゃなくて、同棲じゃなくて、夫婦に、家族になる、あの結婚だよね?
ちょっと。今日、色んなことが起き過ぎじゃない?
「梨愛の人生を、未来を。俺に預けてくれないか?」