HYPNOTIC POISON [ヒプノティックプワゾン](梨愛 act5)
それは、遠いどこか、私の知らない場所での出来事のように思えた。
朔と、碧が、付き合ってる、だって…?
朔って、私の兄の、あの朔よね?碧は、私が小学生の頃からの大親友だ。
その2人が、付き合ってる……?えっ?えっ?
付き合ってんの?いつの間に?何で?どうしたらそうなるの?
兄である朔のことは、嫌いじゃない。ものすごく好きってわけではないけど、兄妹なんてそんなものだろう。でも碧は。碧は、私の大好きな親友。その2人がくっつくって。男女の仲になるって。
ああもう大混乱。
どう帰ってきたかなんて覚えてない。
顔はきっと固まるどころか強張っていたんだろうけど、「おめでとう」のひと言ぐらい…言ったっけ?言えてないっけ?もう既に覚えてない。
「ただいま」
2人が付き合うことに反対であるわけではないよ?でもちょっと、受け止めるのに時間がかかるというか何というか。
「梨愛?」
2人に会ったら、私、どんな顔したらいいんだろう?
「梨愛ー!」
普通の顔?それとも「おめでとう」を示すなら満面の笑みを披露すればいい?
「おーい!梨愛⁉︎」
目の前に満紘がいた。
「あれ?満紘。おかえり」
「あ、ああ。ただいま」
「どしたの?びっくりした顔して」
「どうもしない。変なのは梨愛だろ?どうかしたんか?」
「どうかしたっていうか……」
「お、何かあったか。今日は女子会だったんだろ?」
「うん。──ねえ満紘」
「うん?」
「朔……私の5つ離れた兄なんだけど。碧と付き合ってるって」
「え、碧さんって」
「そう。私の親友の、あの碧」