Animal rhapsody 4
あっという間に閉園時間だ。園内と園外の時間の流れは完全に別物だ。相手が動物でもなく人間でも、医療関係じゃなくても、仕事中とそうでない時の時の流れは別物なのだろうか?
自席で記録を書いていると、時緒が戻ってきた。
「お疲れさま」
「お疲れ」
隣の席にどかっと座ると、珍しく長い息をついた。
「どした?」
「別に」
「ため息とか、珍しいじゃん?」
「お前…俺を一体何だと…?」
「いつも偉そうな山崎センセがため息つくって…あんまり無いよ?」
時緒は無言で立ち上がると、両手にコーヒーを持って戻って来た。
「え、ありがとう」
コーヒーを受け取って口につける。コーヒーは正直、普段は飲まない。飲まないけど、飲めないわけではない。時緒がくれたコーヒーには砂糖もミルクもたっぷりと入っていた。
「そんな甘ったるいやつ、よく飲めるよな」
「甘くないと飲めないの、知ってるでしょ」
「3杯ずつ入れてやったよ」
「それはどうも」
「カブトムシの餌並みに甘いんじゃね?そのコーヒー」
憎まれ口を叩く時緒は多分ブラックで飲んでいる。学生当時から、彼は甘いものが苦手だった。普段は辛辣だけど、こういうところは優しいから感情が困る。
「ホクトがさ」
「ホクト?どうしたの?」
ホクトはシロテナガザルで、時緒の管轄だ。
「薬が苦いやつでさ。餌に混ぜても上手く除けるからちょっと苦戦してた」
霊長目──サルの仲間は脳の作りが人間に近い為、賢い。