縁 6
「え、あの、住むって。一緒にって…」
「いいんじゃね?職場じゃ他の人の目があるからな。帰ってから彼女独り占めできるって最高だよ?」
澄麗と匠さんの前でその色気たっぷりの流し目、やめてよ。頬が熱くなるのを誤魔化せないじゃない。
「ちょ、時緒……」
「思いつきじゃないから。俺、澄麗と同じ家に帰れたらいいなって、そう思ってた」
「た、くみくん…。あの、私達、付き合ってまだ日が浅いし」
匠さん、私達が目の前にいるにも関わらず、真顔で澄麗の目を真っ直ぐに見つめている。口説いているようにしか見えませんけど。
あー……これね。碧が言ってた「いちゃついているようにしか見えない」ってやつ。これを職場でやっちゃってたわけね。当事者は楽しいだろうけど、部外者からしたら「他所でやってくれ」ってやつだ。私達も気をつけよ。
「日が浅いってさ。澄麗、今付き合ってどれくらいなの?」
「まだ……1週間、ぐらい」
「えっ⁉︎まだ1週間?」
「匠、1週間でもう同棲の申し込みって早くね?」
「兄貴だって勧めたろ」
時緒を見やる匠さんも、もはや流し目の名手?だ。血の繋がっていないこの兄弟の共通の武器が流し目とは……。パニック気味の澄麗を目の前に私って呑気だな。
そういえば、こないだの時緒の電話の相手、匠さんだった。「お前が心配するようなことじゃない」ってところは聞こえてしまって。気にしないふりはしてたけど。でもやっぱり、ずっと時緒が悩まされている、その問題に関係している気がするんだよね。