縁 5
「──で、澄麗?聞いてないんだけど?」
私のニヤニヤが止まらない。澄麗がずっと振り回されてた年下男子が匠さん──時緒の弟だったなんて。
「みんなで集まった時に話せばいいかなって思って…」
やっといつもの澄麗の表情に戻ってきた。
匠さんが澄麗の隣に移動して、私達は向かい合う形になった。澄麗が一瞬驚いたように匠さんを見る。匠さんは表情を変えない。……うん、これはテーブルの下で手でも繋いでるな。
「匠、馴れ初めは?どんな感じ?」
「職場が同じで。学年も一緒」
「え、じゃあ澄麗さんも先生?」
「はい。匠さんと同じ学年を組んでます」
「なんか、エロいな」
「時緒、エロいとか。失礼だよ?」
「いやエロいだろ。学校で先生の顔して裏ではいちゃついてんだから」
「それ言ったら兄貴だってそうだろ」
匠さん、少しムキになってる。ポーカーフェイスを保つことが多いって澄麗から聞いてたんだけど。時緒の前では兄弟だからか、どんどん崩れてるのが微笑ましい。
「表は優しい獣医。裏では兄貴達だっていちゃついてんだろ。一緒に住んでんだから寧ろ毎日な。……澄麗」
「ん?」
「俺らも一緒に住む?」
「へ⁉︎」
ポーカーフェイスを取り戻した匠さんにまたもや目を見開く澄麗。こんな感じで毎日振り回されてたのか。クールビューティーなはずの澄麗がこんなに振り回されるなんて、珍しい。