縁 4
「澄麗。この人、俺の兄貴で山崎時緒。母の再婚相手の連れ子だから顔は似てねぇけど。──澄麗、どうした?」
未だ固まったまま目をぱちくりする澄麗に、どう声を掛けたものか。
「澄麗、澄麗。混乱するのはわかるけど、とりあえず戻ってきて」
「う、うん……」
「え、澄麗、知り合い?」
「中学からの、友達なんです。今でもよく会うんです」
今度は匠さんが驚いている。それでも崩れないそのポーカーフェイスは、もはや癖のようなものなのだろう。
「驚いたな。匠の彼女が英の友達だなんてな。なぁ匠、テーブル隣だし、ご一緒しようぜ」
「俺デートなんだけど」
時緒の提案を不機嫌そうに瞬殺する匠さん。連れ子どうしでも仲良いんだな。
「いいじゃん。なかなか無い組み合わせだし?澄麗さん、いいです?」
「は、はい。どうぞ……」
澄麗の返事により、思いがけずダブルデートになった。匠さん、よっぽど邪魔されたのが気に入らないのか不機嫌そうな表情は変わらない。さっきのポーカーフェイスは何処へ行ったんだろうか。
先にお茶を楽しんでいた2人のティーカップはほぼ空になっていた。
「失礼します。ダージリン、セカンドフラッシュです」
店員さんが大きなボウルのような容器から2人のティーカップに直接紅茶を注ぐ。
「お客様、お決まりでしょうか」
「えっと…。澄麗達はどんなの頼んだの?」
「この、上から2つめのやつ。紅茶は色々頂けるの」
「んー…。時緒、私もこれ、気になる」
「じゃあ、この、同じものを」
「かしこまりました」