打破 4
「ちょっと前まで、あんなに堂々といちゃついてたのにな」
「いちゃついてるって…」
「いちゃついてたよ。もう、他所でやってくれよってぐらい」
「……それ、碧にも言われてた」
「だろ?そう見えてたのは俺だけじゃない、多分他の方々もだよ。でも最近あんまり絡んでないよな」
「……そうだね」
「何かあったんか?」
「何も…。寧ろ避けられてるし。理由もわかんないし。何だか九条くんと話すのも怖くなっちゃって、私も避けるようになっちゃった」
だから最近は目も合わない。このままずっと、合わないまま時が過ぎるのだろう。寂しいけど、しょうがない。後輩相手に縋り付く、痛い女にはなりたくない。
「替え玉、お願いします。澄麗ちゃんは?」
この店は麺が腹八分目になるぐらいしか鉢に入っていない。替え玉一回か黒烏龍茶を注文するか、どちらかを選べるチケットが無料でついてくる。
「私、黒烏龍茶で」
「え、替え玉じゃないの」
「結構お腹いっぱいで」
「つまんねぇの」
「つまんない女ですいませんね」
「そこまで言ってねえだろ」
雄二くんが少し不機嫌になったのと同時にラーメンの替え玉と黒烏龍茶がカウンターに置かれた。
「──なあ」
「ん?」
「九条先生のことは、もういいの?」
「いいも何も。避けられてるし。でも業務に必要な会話はしてるから仕事には影響無いよ」
「仕事に影響あったら社会人としてアウトだろ。じゃなくて。感情の問題」
感情…?
良くは、ないけど…。でも私には、打つ手は無い。