沼 5
お酒よりもコンビニスイーツに心を奪われた朔さんは、部屋に着くなりローテーブルにスイーツを並べた。
「どんだけ買ったんですか…?」
「どれも気になっちゃってさ。碧ちゃんも食べるだろ?」
「食べますけど…。こんなに食べれないです。何ならもう結構お腹いっぱい…」
「じゃあ食べさせて」
え、と顔を上げるとレジで貰ったプラスチックのスプーンを差し出された。
「ほら。俺、そのプレミアムロールケーキってやつ、食べたい」
包装されているものをそのまま手渡そうとした。が、朔さんの手がそれを制する。
「じゃなくて、食べさせて?」
食べさせ、る……?
「食べさせるって…。あの、あーん…ってするやつですか…?」
「そう」
朔さん、やっぱり酔っ払うと甘えキャラになるんだな?そうなんだな?満面の笑みで私の問いに答える朔さんは照れる様子も躊躇いも見当たらなかった。
仕方なく、ロールケーキをスプーンで掬う。
「…やらなきゃダメですか?」
「うん、ダメ」
覚悟を決めて、スプーンを朔さんの口元に持っていく。
「はい、あーん…」
少し開いた朔さんの口に、スプーンを入れた。
「うん、んまい」
満足気に咀嚼する彼にスプーンを渡そうとした。
「え、何?」
「だって、もうあーんはしたでしょ?」
「もうしてくれねぇの?」
満足気だった朔さんは、また不機嫌になった。