疑惑 6
時緒との同棲が始まった。そもそも時緒の部屋は物が少なかった。私の物を置いても、散らかることは少ない。
腕に閉じ込められまま目を覚まして、起きて出勤して働いて。同じ家に帰って生活を共にして、また彼の腕の中で眠る。身体が固まっちゃって、そろそろ全身がゴキゴキ言いそうだ。
職場の先生方には伝えてない。同棲どころか付き合ってることすら伝えてない。そのうちちゃんと伝えられる日は来るのだろうか?
時緒と暮らす毎日は、愛おしい程に大切で、大好き。でもそれは、上っ面のもの。
あの日見た、『自首する』というメッセージ。その後送り主がどうなったかなんて聞けないし、そもそもそんなメッセージがあったことすら時緒に訊けてない。
私達は、いつも肝心なことを話せない。話す必要はあるのに。話す勇気が無い。私も、きっと時緒も。肝心な事からは目を逸らして、今日も身を寄せて2人で眠る。このままではいけない。それはわかっている。でも、この上っ面だけでも幸せなこの生活を、壊したくもないのだった。
でもそれは、一瞬にして崩れた。
『英、今度の土日、どっちか時間ある?』
『どしたの?お茶でもする?みんな招集する?』
『ううん、英とサシ飲みがしたくて』
碧からこう言ってくるのは珍しい。この幸せに浸っていて忘れて…無理やり忘れていた。
アフタヌーンティーの後の碧の違和感の謎が解かれようとしていた。