疑惑 4
「ねぇ、時緒…」
「ん?」
「私、時緒の味方だから。何があっても、ずっと味方だから」
「……英?」
怪訝そうに私を見つめる涼し気なその眼をじっと見つめ返した。
息を吸う。
「時緒。何かあったでしょ」
また彼の表情が固まった。もうこれは、本当に何かあったの確定。
「言いたくないかもしれないけど…。でも私、時緒が何か抱えてるなら」
「何も無いよ」
そのまま抱き寄せられた。いつもよりも、強く。
「時緒…」
顔を上げた。そのまま唇が重なる。触れるだけの、でも長い口づけ。
「──英。ずっと、側にいてくれる?」
「…うん」
「絶対?」
「時緒が、望んでくれるなら」
「だったら…英、ここに住まないか?」
「ここ…に…?」
それって…同棲ってこと…?
「ねぇ、時緒」
「ん?」
「私、ちゃんと彼女だったの?」
「へ?」
拍子抜けした顔ってこんな顔なんだな。彼の肩が少しガクッと傾いた。
「だって…好きとか付き合おうとか、言ってくれないから」
「言わなくても、わかるだろ?」
「わかんないよ」
キッと顔を上げた。目の前には、時緒の優しい瞳。
「私が…どれだけ、不安だったか…」
言いながら涙が溢れる。それ以上は言葉にならずに、涙が後から後から頬を伝う。
「好きだよ、英」
私を腕に閉じ込めて、耳に吹き込むように囁くその声がくすぐったくて。でも大好きなその声が鼓膜を震わせる、その幸せに私は蕩けていた。