翻弄 7
九条くんの助手席に収まるのは久しぶりだ。ここしばらく、九条くんと帰りの時間は被らなかった。自然と別々に帰るようになっていた。
前のようには、もう仲良く出来ないのかと諦めていた。だって私達、付き合ってるわけじゃない。何の約束もない私達は、どちらか一方が距離を置いたらそれまでだ。
九条くんが何を考えているのかは、さっぱりわからない。距離を置いたり、近づいたり。あなたは一体、私をどうしたいの?そんな疑問がずっと沸き続けていた。
「九条くんはラーメン屋、色々行くの?」
「結構行きますね」
「行き先、聞いてる?沢田先生から」
「聞いてないっすね」
「え、はぐれない?」
「はぐれてもいいですけどね」
「いやそれじゃ沢田先生困るでしょ」
薄暗くなりつつある中でもポーカーフェイスは変わらない。ていうか打ち合わせすることあるって言ってたよね?打ち合わせが始まる気配が全く無い。
「ねぇ、打ち合わせることって…」
言いかけたと同時に、車はとあるラーメン屋の駐車場に入ったら。どうやら着いたらしい。
挟まれている…。右には沢田先生、左には九条くん。カウンターしか無いお店だからしょうがないんだけど。右からも左からも距離を詰められているというか。すっっごく、狭い。肘が左右されるどちらにもぶつかりそう。