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「最初から…そう言ってくれれば良かったのに」

出すつもりの無かった言葉が口をつく。


「捜査に協力して欲しいって、そう言ってくれれば…」

そう、言ってくれれば、変な期待をしないで済んだ。とうに忘れた淡い恋心がほんのり復活しかけていた。心が入る手前なら、今ならまだ引き返せる。きっと。


「言うわけには、いかなかった。情報を漏らすことになるからな。でも」

苦虫を潰すような表情で言葉を紡ぐ彼は続けた。

「碧ちゃんと出掛けたかったのは、本当なんだ」

彼の発する言葉をそのまま素直に受け取れるほど、もう子どもではない。一度警戒してしまったら、その警戒心は簡単には抜けない。


「その、言葉を信じていいのか、私にはわかんない、です。──私…」

もう出ます、と口に出したと同時に食後にと注文していたコーヒーがテーブルに届いた。


沈黙の中、コーヒーのいい匂いだけが私達の間にあった。



「……だから、なんだよな」

沈黙を破った低音に顔を上げた。


「女の子をデートに誘うとき、ついつい捜査に役立ちそうな場所を選んでしまう。で、行ったら行ったで、聞き込みをしてしまう。ワーカホリックってこのことだよな」

えっと…今、デートって言った?やっぱりこれはデートで合ってたの?


「会話するときだって取り調べの口調になる。独り身の期間が長いと、甘い会話がどんなものだったか、とっくに忘れてしまうんだよな」

自嘲気味に笑いを浮かべながら、吐き出すように彼は紡いだ。


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