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山崎さんの姿が見えなくなるまで、朔さんは黙っていた。その表情からは何も読み取れない。



山崎さんと、何かあったんだろうか…?山崎さんは朔さんのことを知らないみたいだけど。



「──ねえ、朔さん…?」

変わらず思案を続ける朔さんに、もう一度声を掛けるかどうか迷う。



「……ああ、碧ちゃん。ごめん、ちょっと考え事。シャバナ、あれだってな」

彼の指差す方向には、もう既にシャバナらしきゴリラはいなかった。



無言で顔を見合わせる。


「──ぷっ」

「──ふふっ」

同時に吹き出した。


「せっかくシャバナ、教えてもらったんだけどな」

「教えてもらったのに他ごと考えるからですよ」

「碧ちゃん、怒らないんだな」

「え?」

「俺のせいでシャバナがどれだかわかんなくなったのに責めないじゃん」

目を細める彼に、どんな反応をしたら良いのかわからない。


「だって…怒る程のことじゃ、ないし」


一瞬顔が固まったように見えた。


「…朔さん?」

「俺が、今まで付き合ってた子は…怒ってたよ」

「え?」

「だからてっきり…怒られるかと思ったよ」

柔らかい笑顔を見せられて戸惑う。シャバナの顔がちゃんと見られなかったのは、正直ちょっとがっかりだけど。でも朔さんを怒る程のこだわりは無かった。



「──その、朔さん」

「ん?」

「さっきの獣医さんと…何かあったんですか?」

「いや、何でもないよ」



それ以上訊いてくれるな。



微笑んでいるその表情が更に無言の圧を加えているようで。もう何も尋ねられなかった。

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