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銀河帝国皇帝アスカ様、悪虐帝と呼ばれ潔く死を遂げるも、森の精霊に転生したので、ちょっとはのんびりスローに生きてみたい  作者: MITT
第一章「星霊アスカ、その大地に降臨する」

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第十七話「植物魔人の軍勢」①

 やれやれ、一人で何とかするつもりだったが……さすがに、これは一人では厳しい。


 ここは素直に人を頼るとしようか。

 そもそも、私は最前線で無双するとか、ユーリィのような真似とは縁がなかったのだからな。


 ユーリィも、筆頭皇帝補佐官と言う皇帝の右腕と言える立場であり、本来は最前線で戦局を変えるなどという戦略兵器のような真似をするような立場では無かったはずなのだがな。


 なんとなく、そうしなければと言う意識があったのだが、それは要するに気負いに過ぎん。

 実際、私が当時の皇帝の立場だったら、戦のたびに心労で倒れていたと思うぞ。


 それを思うと、ゼロ・サミングス陛下もなかなかに、豪胆な方だったのだろうな。


「つまるところ、これは戦争だと言うことだな。すまんな、フレッドマン殿。装甲騎士団と一戦も交えず、かつ犠牲ゼロと言う訳にはいきそうもない。もちろん、降伏したものや正気に返った者はできる限り、救う努力はするつもりだ。今はこの程度の約束しか出来ぬが、容赦頂きたい」


「……まぁ、しゃあねぇよな。俺や男爵殿は運が良かった……そう言う事なんだろ。だが、戦うのは良いが、勝ち目はあるのか? 俺ら装甲騎士は、フル装備なら相当強いぞ? 歩兵5人くらいが相手なら、一人で軽く一蹴くらい出来る……。心情的には俺も助太刀してぇが……さすがに仲間と殺し合うのは気が進まねぇなぁ……」


 まぁ、確かにミニ戦車と言ったところであろうからな。

 正面から戦うとなると、かなり厳しい。

 その上で、この状況で独りで戦うとなると、さすがに気が滅入って来る。


「お主に戦えとまでは言わんよ。お主には、別の役割を務めていただくつもりだ」


「別の役割? そもそも、一人でどうやって勝つんだよ!」


「そうだな……私、単独ではさすがに厳しい戦いになるだろうが。私にも、共に闘ってくれる者達はいるからのう。さて、皆の者っ! 聞いての通り、少しばかり事情が変わった……力を貸してくれ。一度我もとへ集え、作戦会議だっ! あまり時間はないぞ!」


 そう呼びかけると、近くで様子をうかがっていた者達が続々と姿を見せる。


 まぁ、我が配下と言ったところか。

 ここは、皆の力も借りて、なんとかすべきであろうな。


「一人で大丈夫かと思ってたが、ホントに一人でなんとかしちまったんだな! けど、シュミットに撃たれた時はどうなるかと思ったぜ! あんま、ヒヤヒヤさせんなよ……ったくよー」


 ソルヴァ殿がノッシノッシと姿を見せる。


「俺もさすがに目を覆っちまったよ。って言うか、まさか……あのシュミットの野郎を一発で仕留めるとか……! うわ……アニキ、見てくださいよ! この矢……正確に兜の目のとこ撃ち抜かれてやがる……。アスカちゃん、どう言う腕してんだよ……。これじゃ、シュミットご自慢の鎧も形無しだわ……」


「いや、よく見ろ……これ……完全に矢が貫通してるぜ……。実際、アスカが矢を撃った時、矢が全然見えなかったし、なんかやべぇ音がしてたからな。黒銀の兜を撃ち抜くとなると、こりゃ相当な威力だな……」


 ソルヴァ殿にモヒート殿。

 私よりも、シュミットが一撃で仕留められた事が気になっていたようで、その死体を見聞しているようだった。


「アスカ様。なんなりとご命令を……」


 アリエス殿が跪くと、告げる。

 ファリナ殿やイース嬢、エイル殿も同様に跪き、私の命を待っているようだった。


「アリエス殿。状況は見ての通りだ。男爵と装甲騎士団の隊長は死んだ。だが、敵は炎神教団の司祭とのことで、装甲騎士団もその虜になっているようだ。おそらく、話し合いでの解決は難しい。一戦交える事となるが、私は臆せず戦うつもりだ。異論はあるか?」


「ございません。私もアスカ様の起こした奇跡は見ていました。炎神教団の者がこんな近くに居たなんて、私も存じませんでしたが……そうであれば、戦うしかありませんね。ですが、勝機はあるのでしょうか? 装甲騎士は強いですし、炎の精霊に魅了された者は死ぬまで戦い、決して救いようがないと言われています……。私どもでは力不足かもしれませんが、ここは死力を尽くす所存です」


「ああ、俺らエルフもそこは一緒だ。欲を言えば、もう少し時間が欲しかったな。手持ちの装備じゃ、装甲騎士の相手は少々きついが、贅沢は言ってられんか。ちなみに、向こうは中央広場に陣を設えて、持久戦の構えのようだ。バリスタなり投石機でもあれば、楽なのだがな……」


「持久戦ってなんだそりゃ……? 奴らてっきり、夜闇を気にせず、突っ込んでくると思ったんだがなぁ……」


「さすがに、それやったら、自滅するのが関の山だって気付いたんろう。なにせ、街の中はまるで森の中みたいになってるからな。俺らエルフにとっては、圧倒的に有利だが、普通の人間が明かりもなしで、ましてや馬で突っ切るとかどんな冗談だって話だろ?」


「なるほそ、奴らも馬鹿じゃねぇって事か。なぁ、フレッドマン卿……アンタらのボウガンって、自分の鎧を抜けるのか? そこのシュミットの兜、綺麗に撃ち抜かれてるみたいなんだが……」


「いや、あそこまでの威力はないはずなんだがな。そこの御使い様は矢を受けて、それを撃ち返して、シュミットを仕留めてたんだが……。あんな筒にしか見えないのに、どう言う威力なんだかな……」


「なるほど、アスカの矢はやはり特別ってことだな……。だが、弦も何もないのに、あのスピードで矢を撃ち出すってのは、どう言う仕組みなんだ? そもそも、それは弓なのか?」


「これか? これはコイルガンともレールガンとも呼ばれる……私のいた国では、一般的な武器なのだ。ソルヴァ殿達にも解るように説明すると、磁石の力……電磁力で金属の矢を加速し、撃ち出す兵器なのだが。さすがに、私くらいしか使えんと思うぞ」


「そうか……その力を俺らが使えたら、装甲騎士団なんぞもてっとり早く皆殺しにだって出来るって思ったんだがな。ファリナやエイルはどうなんだ? むしろ、お前ら向きなんじゃないのか? あのコイルガンだっけ? 黒銀の兜に穴を開けるとなると、多分、どんな鎧どころか、城壁だって貫くんじゃねぇかな……」


「そ、そうだな。アスカ様の弓が我々も使えるなら、装甲騎士など敵ではないだろう。実際、あの鎧さえ抜けるなら、我々なら、夜闇に潜んで一方的に撃ち勝てるだろうからな……」


 なるほど……エルフは、夜闇を昼間同然に見通す事が出来ると言う話であったな。

 強化人間に近いのかもしれんな。


 そうなると、コイルガンを使わせたいのは山々なのだが……。

 これ……武器というより、能力の応用であるからなぁ。


 気軽に手渡せるようなものではないのだ。


「……神々の力を我らに……ですが。確かにそれが可能なら、なんと心強きことか。なにぶん、ここで勝ったとしても、周辺国や伯爵が討伐隊を繰り出して来たら、戦争になるでしょうからね……今のままで、アスカ様を守りきれるかと言えば……。難しいですし、炎神の司祭も我々の力で倒せるかと聞かれるとなんとも言えません。はぁ……これほどまでに、力が欲しいと思ったことはありませんよ……」


 アリエス殿が嘆息する。

 実際、神樹教会の神官や修道士は、武力という面ではあまり強力ではなく、むしろ、侮られているとも言っていた。


 まぁ、これが現実のようだった。

 やる気や根性では戦争には勝てない。


 戦争とは、その前段階でどこまで準備が出来るかにかかっているのだ。

 その準備不足の時点で、結局現場が無理をすることになる。


(我が信徒たちよー! おまえたち、娘の持つ力が欲しいのか?)


 アリエス殿の嘆きの声が届いたのか、唐突にお母様の声が響いた。

 アリエス殿やイース嬢、エイル殿も驚いたように辺りを見渡している。


「こ、これは……? 神樹様の声? は、はい! 神樹様と御使い様をお守りする為に、我らは力を欲しています! 力を与えてくれるなら、是非にっ!」


「そ、そうだ! 我々もです! アスカ様だけに戦わせて、何の役にも立てないなんて、誇りあるエルフにとっては恥なのです! 神樹様よ! 力を授けてくれるなら、是が非にでもお願いしたいっ! その上で我らは神樹様の剣となる覚悟です!」


(おーけー! わかったのだ。むすめー、この者達を娘と同じく身体から電磁草を生やして、自由に扱えるようにしてもいいかなー?)


 ……出来るの? マジで?

 でも、植物を生やさせるって、それって軽く人体改造だと思うんだけど。


 いいのか? やって……。


(お母様……それは、要するに、身体を改造するのではないのか? 具体的にはどうするのだ。何より、そんな事をして、なにか問題が起きたりしないのか?)


(んとねー。この者達の体内にはすでに種が入ってるから、それを発芽させて、身体の中に電磁草の根を張り巡らせるのだー。要するに、人間に新しい機能を付けるってとこなのだー。娘流に言えばあっぷぐれーど?)


 ……出来る出来ないと言う事なら、恐らく余裕でやってのけるのだろう。


 実際、先程の男爵の延命処置についても、壊死が進みとっくに止まっていたはずの心臓を植物細胞で作った人工心臓で動かしていたような状態だった。

 血管の応急処置で、あちこちに植物細胞が張り巡らされていたのだが、男爵は違和感を感じていないように見えた。


 けど、身体改造……か。

 この世界の人間にとっては、軽く人間に辞めるような物で、どう考えてもヤバいと思う。


「……あまり、オススメは出来んぞ? この力を得ると言うことは、間違いなく人間を辞めるのと同義だ。その覚悟があるなら……と言う話なのだぞ?」


 まぁ、確実にそうなる。

 さすがに、人間を辞めるという一言にアリエス殿も怯んだようで、なんとも言えない顔をしている。

 

 だが……いや、待てよ。


 ……身体改造の何が問題なのだ?


 この世界では、そんな技術がないと言うだけの話で、帝国では当たり前のように身体改造者がいたではないか。

 

 元の私も、晩年は生身の臓器はほとんど残っていなかったし、地上軍ともなると生身の方がレアだった。


 ……何の問題があるのだ? むしろ。

 お母様のもつ植物を使った医療技術だって、帝国の最新医療にも匹敵すると目の当たりにしたばかりではないか。


 この者達を強化してしまえば、断然死ににくなるだろうし、恐らくこの後にも続くであろう、戦争に際して、軍事的に圧倒的に優位になる。


 その上、お母様の植物科学技術の恩恵も受けられる事となるし、ラース・シンドロームの罹患可能性も格段に低くなるだろう。


 言ってみれば、神の力を与えられる……そう言うことなのではないか?

 あとは、当人達の気分の問題……であるな。


「皆の者よ……どうする? 一言で言えば、これは覚悟の問題であるな。お母様……神樹様は、諸君ら人間やエルフに、この電磁草を自在に操る力を与えることが出来る。この電磁草を身に宿し操れる時点で、諸君は地上最強の戦士足り得るほどになるだろう。もっとも、それは真っ当な人間とは言えなくなる。だからこそ、メリットとデメリットを理解した上で覚悟の上で、了承して欲しい」


「……デメリットとしてはどんなもんなんだ? あと、その力を与えられると、何ができるようになるんだ? と言うか、地上最強とはまた大きく出たな……」


 ソルヴァ殿も真面目に聞いてくる。

 まぁ、私としては別に問題ないと思うのだが、ちゃんと納得はして欲しいからな。


 納得できるまで、説明はするとしよう。


 だが、そう聞かれてみると……。

 デメリットは……全くないんじゃないかな?

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新連載始めました!! アスカ様の前日譚! 「銀河帝国皇帝アスカ様 零 -ZERO- 〜たまたま拾った名無しの地味子を皇帝に推したら、大化けした件について〜」 https://ncode.syosetu.com/n1802iq/
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