表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀河帝国皇帝アスカ様、悪虐帝と呼ばれ潔く死を遂げるも、森の精霊に転生したので、ちょっとはのんびりスローに生きてみたい  作者: MITT
第一章「星霊アスカ、その大地に降臨する」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/312

第十二話「正義の在り処」③

 なお、スラムのおじさん達はものすごく殺る気満々。

 そこそこ場数も踏んでるようで、体つきもゴツイし、殺気すら放ってて、結構強いってことが解る……。


 恐らく、元職業軍人……それくらい雰囲気で解るし、だからこそ、このスラムの用心棒のよう役割を担っていて、今もこうやって率先して、皆の先頭に立っている。

 

 このスキンヘッド氏達は、どうもそう言うことのようだった。

 

 確かに、有事徴用兵とか聞こえは良いけど、実際はただの兵隊のリストラ。

 普段の食い扶持は自分で稼ぎ、戦争になったら強制動員。

 

 そんな兵隊が使い物になるはずもないし、士気だって酷いものだろうし、練度だってまともに維持出来る訳がない。

 

 そもそも、自分で食い扶持を稼げと言っても、そんな簡単に仕事が見つかるなら誰も苦労しない。

 仕事が有り余っていて、人が足りないのであれば、このようなスラムなど出来る訳がない。

 

 彼らのように、スラムで燻っているのはまだマシな方で、盗賊になったり、犯罪者になったりすれば、戦闘訓練を受けている分、タチが悪い。


 ……ここまで来ると、ここの領主は無能を通り越して、もはや害悪以外の何者でもないと断言する。


 ふと、視線を感じると思って振り返ると、後ろのあばら家の影には、女の人たちや子供たちが隠れていて、こっちの様子を伺っていた。

 

 その一人と目が合うと、おいでおいでされる。

 

 どうやら、彼女達は私の逃走経路を確保してくれているようで、その準備が整ってるから早くこっちに来いと言いたいらしい。

 

 その上、近くに私と同じような背格好の子供たちを何人も集めていて、私と似たような髪型にさせて、方々に散らせる準備を行っている様子。


 ……恐らく、あの子達は囮役だ。

 危険を顧みずに、この私の身代わりとなって、私を逃がそうとしているのだ。


 くっ! この者達……なんと……なんといういうことだ。

 見も知らぬ私の為に、事情もよく解っていないのに、このような献身っ!


 ……み、認めねばなるまいっ!

 この者達のこの行いこそ、まさに正義であるっ!


 くっ! 正義の具現者としては、この思いは否定できんっ!

 

 だがしかし! ソルヴァ殿達も紛う方なき正義の味方っ!

 

 賊に攫われた私の為に、町の人々も巻き込んで正義の掛け声の元に一致団結し、危険を顧みず、荒くれ者たちの巣窟……スラムまで来てくれたのだ。


 だが……。

 このままでは、正義と正義が相打つ事となってしまうっ!

 

 ……ど、どうすればよいのだ!

 

 これは困った……さすがの元銀河帝国皇帝でも、このようなどちらも正しいと言える二律背反的な状況……対応に窮せざるをえないっ!

 

 私を救出すべく、謎の事情で膨れ上がってしまったソルヴァさん達救出隊と……私を勝手に仲間扱いして、小さな子供を守って逃がすべく、一致団結して一戦交えるをも覚悟完了なスラムの住民達。


 このままでは……激突待ったなしだった!


「ああ、解った、解った! いいぜ……とにかく、一度ちゃんと話し合おうじゃねぇか。安心しな……こっちは丸腰で行ってやるぜ。どうだ? ああっ! てめぇらも武器なんて捨てて前に出てきやがれっ!! ビビってんじゃねーぞ! オルァッ!」


 ……ソルヴァ殿?

 なんで、話し合いと言いながら、喧嘩腰なのだ?

 

 言葉通り、ガシャガシャと武器を捨てて、手ぶらで堂々と歩み寄って、どっからでもかかってきなとでも言わんばかりに、ドンッと腕組みをする。


「はっ! てめぇが、悪党どものリーダーってか? 俺ら相手に、素手ゴロでやろうなんて、なかなか、いい度胸してるなっ! そこは褒めてやるぜ!」


「確かにいい度胸してやがるぜ。こう見えても、俺らは元軍人でな。素人だと思ってくれるなよ? だが確かに……街の奴らにしては少しは骨がありそうだ……上等だっぜッ!」


 スキンヘッド氏とミスター無精髭が前に出て啖呵を切る。


「何だ? てめぇらがスラムの代表って事か? はっ! 見るからに、悪そうな面してやがるし、いかにも、やる気って感じじゃねーか。それに元軍人だぁ? やれやれ、最近の盗賊共はそんなん珍しくねぇぜ? そんなんで、このソルヴァ様がビビってたまるかっ! ああっ?」


「はっ! どっちがっ! てめぇだって、十分悪人面だろうが……! 知ってるか? 弱い犬ほどよく吠えるってな! ったく、悪党のリーダーに担ぎ上げられていい気になってんじゃねーぞ!」


「だれが悪党のリーダーだって? ザッケンナコラァッ! いいか? この俺はまさに正義の味方ってヤツだっ! いいぜ……やんのかぁッ! このハゲ野郎ッ! シバき倒して、その頭、キュキュッと磨き倒しちまうぞっ! オラァッ!」


 ソルヴァ殿の話し合いって……。

 と言うか、スキンヘッドの御仁にハゲって言っちゃいけない。


 でも、頭磨くって……それむしろ、仲良さそうなんだけど。


「んだと、ハゲとはなんだ! ハゲとは! 実際ハゲだが、こいつはファッションだっつの! この髭野郎がっ! テメェなんぞに磨かれたら、テメェの手垢で俺の自慢の頭の輝きが曇っちまうぜ! ザッケンナコラーッ! おう、おう、おーう! ちょっとは出来そうだが、あんまイキってんと、畳んじまって、ご自慢のお髭をごっそり引き抜いてやるぜ? オラオラァ! オラァッ!」


 ……確かにスキンヘッド氏の頭……ピッカピカで眩しいくらい。

 自慢の輝きらしい……良く解んないな……それ。


「おうともよっ! やる気って事なら、こっちもやってやるぜ? このトッテンパルラーが! オオゥ?」


 なんか、謎の単語が出てきた。

 けれど、ソルヴァ氏の神経を逆なでするには十分だったようで、めちゃくちゃ怖い目つきでヒゲモジャ氏を睨みつけた。


「だぁれが……トッテンパルラーだ……っ! 人が優しくしてりゃ、舐めやがって! てめぇなんぞ、ゲルハムダゼリそっくりじゃねぇか! とっとと自分の住処に帰りやがれってんだっ!」


「ゲ、ゲルハムダゼリたぁなんだっ! てめぇ、言って良いことと悪いことがあんだろ! この野郎……デリック! もういいから、やっちまおうぜ! さすがにゲルハムダゼリ呼ばわりされて、黙ってられっか!」


「ああ、ゲルハムダゼリはねぇな。ゲルハムダゼリなんて、いくらなんでもあんまりだろっ! オラァッ!」

 

 ソルヴァ殿、スラムおじさん二人に囲まれて、メンチ切り合い中。


 どちらも負けず劣らず怖い顔で、罵声浴びせあって、顔を寄せ合ってのにらみ合い。


 なお、トッテンパルラーは、どうも悪口だか挑発の言葉らしい。

 トッテンパルラー呼ばわりされると大抵の人がキレるらしい。


 ……なるほど、判らん。

 

 ゲルハムダゼリ……ニュアンス的には珍獣やモンスターか何かっぽいけど、人をそれに例えると大抵の人はキレるらしい。


 どうも、あんまりな悪口らしい。

 

 なお、どっちも、意味がじぇんじぇんわかんにゃーい。

 なんで、あんなに怒ってるのかも解んなーい。


 まさに、異文化コミュニケーションあるある。

 

 ……あとで、イース嬢あたりに聞いてみよう。

 

 と言うか……これのどこが、話し合いなんだろ……?

 私の事とか、もう眼中なしって感じなんですが、ソルヴァ殿?

 

 なるほど……ソルヴァ殿って、結構脳筋。


 そして、お互い変顔しつつ、睨み合って睨み合って、デコがくっつく距離にまでなった瞬間、図ったように同時に両者が後ろに頭を振って、ゴンッ! と痛そうな音を立てて、頭突き合いっ!


「ってぇな! やってくれたな……このハゲっ! だが、上等だぜ……もういいっ! こうなったら、てめぇら、まとめてかかってこい! もう、色々めんどくせぇから、こいつでケリつけようぜっ!」


 そう言って、力こぶを作って、拳を握って気合を入れるソルヴァ殿。

 

 おーい、話し合い……。


「オウ、オウ、オーウッ! 上等だっつの! てめぇなんぞに負けるかっ! オラァッ!」


 スキンヘッド氏が拳を握って、振りかぶる!


「こっちのセリフだ! ドルァッ!」


 ソルヴァ殿も負けじとおおきく振りかぶって、鉄拳を振るうっ!


 ……両者とも同時に顔面狙いで、クロスカウンターが決まったああああっ!


 これぞまさしく、拳を使った漢達の話合いっ! はぅあーっ!


 こ、これはなんとも熱い展開になってきたのうっ! ゴクリッ。

 いやいやいや、そうじゃなくてーっ!

※トッテンパルラー

悪口。

関西人に馬鹿っていうようなもの。


面と向かって言ったら、殴られても文句言えない。


※ゲルハムダゼリ

緑色のムックみたいなゴブリンの変種。


ヒゲモジャ氏は怒っていい。


なお、どちらも私の思いつき造語なので、元ネタもなければ、ググってもかからんよ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新連載始めました!! アスカ様の前日譚! 「銀河帝国皇帝アスカ様 零 -ZERO- 〜たまたま拾った名無しの地味子を皇帝に推したら、大化けした件について〜」 https://ncode.syosetu.com/n1802iq/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ