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銀河帝国皇帝アスカ様、悪虐帝と呼ばれ潔く死を遂げるも、森の精霊に転生したので、ちょっとはのんびりスローに生きてみたい  作者: MITT
第5章「決戦、アスカ星系の攻防」

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第六十七話「ハルカ=ロズウェル」④

「はっ! 要するに今の時点で、出撃準備が出来てるかの抜き打ちチェックってとこですな?」


「まぁ、そんなとこかな。一応、これは演習って前置きしといて……さて、何分でいけるかな?」


「へいへい、早速各部署から応答あり、各ゲートシップのゲートジェネレーター起動準備良し、各艦いつでも動かせるように機関アイドルにて待機中とのこと。ゲートシップの動力船や護衛艦もすでに配置に付いております。先行艦隊……バカ共からは、いつでも動けるって報告が返ってきてますね」


 まさに秒速だった。

 やるねぇ……。


「……いいね! 各員やる気満々で準備良し、常在戦場の心意気とはまさにこれって感じだねぇ!」


「ただ、現状は突入予定の艦隊はバカ共も含めて、未だに足の早い突撃艦や高速戦艦ばかりで、肝心の重爆母艦や重戦艦……何よりも補給艦隊の到着が、かなり遅れ気味です……。まぁ、我々基幹艦隊もかなりのハイペースで進軍してきたんで、脱落艦も何隻も出てますから、こりゃもうしゃあねぇですな」


 確かに、宇宙でもデカくて重い船ってのは、鈍足って相場が決まってるからなぁ……。


 ちなみに、帝国の重戦艦……アルデバラン級ってのは、実のところ、スペック的には攻防走のバランスが取れたバランス型の艦艇で、その大きさは2km級の間違いなく銀河最大最強クラスの超大型宇宙戦艦なんだが……。

 

 帝国軍は、伝統的に紙装甲高機動の兵器大好きってドクトリンだから、アルデバラン級もアスカ陛下キモ入りで自ら設計に参加した上で、先行量産型が120隻くらい建造されたんだけど……。

 

 結局、誰も乗りたがらなくて、アルヴェールの軌道ドックに係留されたまま、長年ほっとかれてたのを慌てて、引っ張ってきたらしい。


 帝国軍の高速戦艦ともなると、もうメインエンジンとプロペラントタンクにガワ巻いて、砲台つけて、気持ち程度の装甲板貼り付けたような命知らずの戦闘艇みたいな感じになってるし、普通の戦艦も当たり前のようにメインエンジンがタンデムになってて、むしろ高速戦艦って感じのデザインだったりもする。


「ははっ、まぁ、そんなもんだろ。では、ゲート開通後の段取りはどうだい? ああ、これはいわゆる作戦前のブリーフィングみたいなもんだ。せっかくだから、このまま全艦隊通達としようじゃないか」


「いいですね。盛り上がってきましたな! では、仰せのままに」


 ゲーニッツが顎をしゃくると、正面の3D空間ディスプレイにアスカ星系の全容図が表示される。


 これと同じものが各艦ブリッジや各部署に表示されており、艦隊各員も一斉に同じものを見ているはずだった。


 三つのガスジャイアント惑星と四つの地球型惑星、そして5つほどの天王星型惑星、総計12個の惑星から構成される中規模星系。


 それがアスカ星系の全容で、その第4惑星が惑星アスカ。

 そして、2つの地球型惑星軌道を挟んだ10天文単位ほど離れたところにあるのが、惑星アスカの現地名で「テンプラー」と呼ばれる巨大ガスジャイアント惑星。

 

 その大きさについては、銀河の数あるガスジャイアント惑星と比較しても、極めて大きい部類に入るもので、むしろ、恒星のなりそこないと言っていいほどの規模があった。


 そして、それはラース文明の超空間ゲートも兼ねており「Bigファイア」のコードネームを与えられていた。


「では……ゲート開通後の段取りについて改めて説明させていただくと……まずは100隻単位の先遣艦隊を送り込んでから、ゲートの周辺宙域を確保いたします。まぁ、先遣艦隊は互いに競い合って誰よりも早くここに到着してたバカどもにやらせるつもりですし、当人達も異論はないでしょうよ」


 うん、各艦隊の足自慢みたいな連中が一番乗り競争みたいなことを始めて、ひかりの民の船の後を追っかけて、真っ先に現着……。


 連中は、本隊が来るまでの間にすっかり意気投合して、状況を察した永友提督が先回りで先行させていた高速補給艦から、すでに補給も受けて出撃準備も完了している。


 と言うか、高速戦艦に随伴させて補給する為だけに、エンジンのおばけにカーゴ付けたような高速補給艦なんて艦種があるのって、絶対帝国宇宙軍だけだと思う……。

 

 カーゴ自体の搭載量は少ないもののとにかく足が速いって時点で、こう言うかゆいところに手が届く的な運用に向いてて、永友提督も早速補給艦隊の編成に組み込んでいたようで、何と言うか相変わらずソツがない。


 どのみち、本人たちもやる気満々だし、先遣艦隊の危険度だって承知の上で、敢えて一番槍を担ってくれるんだから、アタシとしても異論はない。


「ひとまず、先遣艦隊により戦線を一気に拡張し、集まってくる敵艦を迎撃しつつ、順次主力を投入し、ゲート周辺に橋頭堡……仮設補給基地と防衛拠点を築き上げます。その上で十分な戦力が揃った段階で、あらかじめ制定されたとおりの戦略目標に基づき、艦列を組み侵攻を開始する予定です……まぁ、第一陣の一万隻の展開についちゃ、軽く24時間はかかる見込みですが、宇宙の戦闘ってのはそんなもんですからなぁ」


 艦橋の3Dホロビューには、ゲート開通後の艦隊の行動予定がタイムラプスのように早送りで表示されていく。


 なにぶん、宇宙艦隊の展開と言っても、こんな星系規模のスケールでは、リアルタイムの等速だと、動いているのかも解らないくらいもっさりとしたものになってしまうので、なにげにシレッと20倍速表示とかやってるんだけど、それでもそこまで忙しなくは見えない。


 まぁ……本格的な宇宙艦隊による星系侵攻指揮ともなると、アタシはもちろん、誰もそんな経験ないのだけど。

 

 ロズウェルは演習バカでもあったので、演習でなら星系侵攻戦の経験はあって、私もそんなものだよなって感じで見ていられる。


 展開としては、まずは先遣艦隊が周囲の敵を蹴散らして制宙権を確保し、新設したゲート周囲には、超大型の重戦艦や重爆艦をずらりと並べて、軌道ドックやら補給物資デポやらを建造して、ベースキャンプを設営した上でゲート周囲の守りを固める。


 ちなみに、重爆艦ってのは宇宙空母の進化系で戦闘機の代わりに全長50mもあるような亜光速機動爆雷を山程搭載し、戦闘が始まればそれをまとめて投射して、超長距離爆撃を仕掛ける……その為だけのドンガラ船で、基本的に大型輸送艦を改装しただけなので、意外とお安い。


 そうやって防衛線を固めて、ある程度の兵力を送り込んで、ゲート周囲の守りが十重二十重になった段階で、今度は艦隊主力を展開していく。


 その上で、本来は一万隻の艦隊を5個分艦隊くらいに分けて、星系各所の戦略目標の同時攻略を目指すとなっていたのだけど……。


 唐突にエマージェンシーコールが鳴り響き、表示中の3D空間マップに、作戦概要変更のお知らせみたいなメッセージが表示される。


 そして、作戦概要での増援艦隊の進軍ルートの表示が大きく変わって、大まかに見て、2つの線しかなくなっていた。


 なお、その作戦目標ラインの一本は敵の本丸、コードネーム「Bigファイア」

 

 要するに、敵の生命線……敵性転移ゲートを粉砕する大本命と言える戦略目標だ……どうも、これに最終的に全戦力の8割位を投入するつもりらしい。


 そして、もう一本は惑星アスカとBigファイアを繋ぐ最短ルート上の中間域へ赴き、浅く広い迎撃ラインを構築する……そんな風になっていた。


 なお、惑星アスカへの増援ラインは一切ないし、こちらのゲートの防衛戦力も当初計画に比べると至ってささやかなもので、最低限の配置とするとなっていた。


 なるほど、これはまた随分と思い切ったな。


 惑星アスカを含めて、完全に守りを捨てた超攻撃シフトでの電撃攻略戦……この配置の時点でその意図は明らかだった。

 

 案の定、艦橋のスタッフたちもざわつき始めていて、こっちにチラチラと視線を送る者が続出していた。


 まぁ、当初プランを完全にかなぐり捨てた上に、限りなく特攻戦術みたいなものに切り替えろってんだから、誰だって動揺するだろう。

 

 うん、こう言うときこそ、指揮官ってのは、鷹揚に構えなきゃいけないからな。

 

 どのみち、これはアタシにとっては、恐らくこう言う展開になるだろうと予想していた既知情報ではあるから、別に慌てる理由もない。


「このシフトは……要するに、敵のゲート破壊を最優先とする。そして、ゲート施設を守ろうと殺到してくる敵艦隊を迎撃もしくは、足止めする。要するに、戦略目標を一気にその2つだけに絞った……そう言うことですかい……ですが、これは……」


「ああ、どうやらこの展開とするために、アスカ陛下は敢えて先制攻撃を実施し、敵の攻勢を招いた……。そう言うことだな。にも関わらず、惑星アスカの制宙権確保と地上への支援は完全に後回しにする。そして、突入させた戦力も片っ端から敵性ゲートの攻略に向かわせる。そう言うことだね……だが、そうなると……」


 私が言葉を切るなり、オペレーターからの緊急報告。


「ロズウェル閣下! き、緊急報告です! ゲート生成予定ポイント付近で大規模重力震の発生を確認! 何者かが第三航路空間へ飛び込んできます!」


 案の定来たか。

 ジュノアも予定時刻を大幅に繰り上げての帰還……となれば、これはすでに向こうの状況も大きく動いた。


 そう言うことなんだろうな。


「ゲーニッツ大佐! すまんが、各艦へ通達! 待ち人来るだ……速やかにゲートシップを使って、ジュノアが開けた超空間ゲートを固定化しろ! ゲート安定後、即時で今この場にある戦力をゲートの向こうに一気に突入させる! どうやら、のんびりやっている場合ではなくなったようだな」


「た、直ちに……ですか? 今この場に間に合ってるのは、足の早い突撃艦や高速戦艦ばかりなんですが……。せめて、重戦艦をダース単位で送り込むようにしないと、相応の犠牲が出るかと……」


 アスカ星系への侵攻自体がおよそ一週間後。

 

 そう言うタイムスケジュールであり、そこまで待っていれば、1万隻規模の戦力を投入できたのだけど……。


 状況はそれを許さなくなったということだ。


 今の時点でジュノアがとって返してきたのであれば、これが戦略的にベストな増援艦隊の投入タイミングという事なのだ。


 なお、重戦艦群の到着はおよそ120時間後。

 グズグズしてんなよ! と怒鳴りたいところだけど、重量級の艦艇は質量があって燃費も悪いから、頻繁に補給が必要となるので、どうしても戦略移動速度自体も遅くなる。

 

 軽快な高速戦艦辺りだと、燃費もいいし、そもそもの足も早いから、戦略移動速度も早くなる……なるほど、帝国軍が高速艦を重用してるのは、そう言うのもあるんだろうな。

 さすが、実戦慣れしてる軍隊だけはあるな。

 

 まぁ、そう言う事情もあって、先陣に間に合ったのはその手の高速軽量艦艇ばかりになってしまっていたし、図らずも各艦隊の足自慢の精鋭艦隊みたいなのが出来上がってしまっているので、これをそのまま第一陣として、投げ込むのは、妥当な戦略だった。


 けど、ゲーニッツ大佐の言いたいことも解る。

 高速戦艦や突撃艦のような艦種は、守りの戦いにはまるでむいてない。


 重戦艦辺りなら、数発良いのをもらっても何とでもなるんだけど、紙装甲の高速戦艦あたりだと、エンジン部の被弾などで最悪、一発で沈んだりしかねない。

 

 恐らく、ゲート突入後かなり早い段階で敵艦群との交戦が発生するだろうし、主力を展開できるまで、恐らく一週間はかかるだろうし、全戦力を展開ってなると、どんなに巻いても月単位の仕事になるだろう。


 当然ながら、その間は四六時中四方八方から押し寄せる敵の迎撃戦力との交戦となるだろうが……最前線は間違いなく戦線も何も無い乱戦となるのは確実だった。

 

 当然ながら、先陣を切る高速艦隊は、揃って酷いことになるのはもう自明の理なんだけど……。


「犠牲が出るから、何だというのだ? このタイミングでジュノアがあそこまで慌てて戻ってきたとなると、それはもうアスカ陛下の危機を察してってことだ。もはや、一刻の猶予もないと知れ! だからこそ、我々は直ちに動かねばならんのだよ」


 アタシがそう言い切ると、ゲーニッツ大佐の目が大きく見開かれる。

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新連載始めました!! アスカ様の前日譚! 「銀河帝国皇帝アスカ様 零 -ZERO- 〜たまたま拾った名無しの地味子を皇帝に推したら、大化けした件について〜」 https://ncode.syosetu.com/n1802iq/
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