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銀河帝国皇帝アスカ様、悪虐帝と呼ばれ潔く死を遂げるも、森の精霊に転生したので、ちょっとはのんびりスローに生きてみたい  作者: MITT
第一章「星霊アスカ、その大地に降臨する」

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第七話「初めての文明、街の訪れに」⑤

「任せときなっ! アスカの嬢ちゃんもすまんかったなぁ。あんな石みてぇなパンだの塩スープなんてお粗末なモンしか食わせられなくてよぉ……今まで苦労してきたんだろうなぁ……ホントに……」


 そう言って、じんわりと涙に濡れた目のまま、両手をガッと握りしめられる。


「うむ、そこは気にせずとも良いといったではないか。まぁ、豪華な晩ごはんとやらは、今から楽しみだな」


 ちなみに、お粗末なモンと言っているが。

 パンは確かに硬かったが、天然小麦100%と立派な天然食材で、スープにしても塩味オンリーながら、香草で風味が乗っていて、そもそも塩自体も天然塩のようだった。


 私に言わせれば、この時点で立派な天然食材による高級料理なのだがなぁ。

 美味しいかと言われれば、まぁ、微妙だったが。

 

 要は、ステイタス……気分の問題なのだよ。

 実際、十分美味く感じて、美味い美味いと泣きながら完食してしまったのだが。


 モヒート殿はむしろ、それを不憫と感じたようだった。


「そうか、そうか! 今夜は約束通りとびっきりの美味いもんを食わせてやれると思うぜ? ヒャッハー! 今日はたらふく食って、酒も飲んで! 飲み明かすぜーっ!」


 まぁ、なんとも楽しそうである。

 いちいち大仰なアクションの御仁で、見てて飽きない。


「しかし、贅を尽くした天然食材の料理を食べきれないほどか……まったく、この世界の人々の食生活は随分と贅沢なのだなぁ」


「……食い物に、天然もなにもないと思うんだがなぁ……。まぁ、味については俺達が保証するが……。そうなると俺はどうするかな……一応、ギルドに盗賊共の討伐結果報告にいかんといかんのだが……」


「私は、別に急がんから、そちらの用を先に済ませて置くが良いぞ。正直言えば、あちこち見て回りたいが、今のところ、右も左も判らんのでな……すまんが、一緒にいさせてもらってよいかな?」


「そりゃ、当然そのつもりだったが……。子連れでギルドに行くってのはちょっと考えものなんだよな……いったい何を言われるか解ったもんじゃねぇ……」


「ああ、ギルドへの報告なら、俺が行きますぜ! アニキは、アスカの嬢ちゃんの面倒見て、街の案内でもしてやってくれ!」


「そうか、すまんがそっちも頼まれてくれるか? まぁ、ギルドには盗賊団は皆殺しにしたって事と、人質も無事救出したと伝えておけばいい。人質にされていた娘達も守衛たちに身柄を預けたし、神樹教会の連中はああ言うのもちゃんと面倒見てくれるから、心配はあるまい。もし、細かい説明などを要求されたら、後ほど俺が直接報告に行くと伝えておいてくれ。あと情報間違ってたと苦情も忘れずにな」


「確かに、いい加減な情報寄越したのは、ギルドとクライアントですからねぇ……。でも、賊が25人もいたって事はどうします? 俺らだけで皆殺しにしたとか言っても、なんか信じてもらえねぇような気がしますぜ……」


 確かに……ソルヴァ殿の見立てだと、本来は100人規模の討伐隊を出して討伐する程の規模だったとは言っていたからな。

 

 だが、そう言う事なら、ソルヴァ殿達だけで25人の盗賊団を始末できた事に説得力のある脚色を加えてしまえばいい話だった。


「そうだな……イース嬢とファリナ殿の二人を餌に、奴らに取り入って、眠り草入りの酒をしこたま飲ませて、全員酔っ払って寝こけたところで、こっそりと人質を救出して、アジトに火を放って全員焼き殺した……と言うことで良いのではないか? どのみち、奴らのアジトも連中の死体ごと焼いてしまったのだから、後日現地調査されたとしても、問題もあるまい。まぁ、実際は私が皆殺しにしたのが事実だが……。正直に言った所で、信じてもらえるかどうかは別問題であるし、それはそれで私自身が必要以上に恐れられてしまいそうな気もするからのう」


 とっさに思いついたカバーストーリーなのだが。

 この方法なら、ソルヴァ殿達の戦力でも、あの盗賊団を殲滅する事は不可能ではなかったと思う。


 実際、タイトルは忘れたが古典ファンタジー小説を読んでいて、こんな感じのやり方で10倍以上の人数が居た盗賊団をだまし討ちにして全滅させた冒険者達の話を読んだ事がある。

 

 要は、丸パクリと言ったところである。


 まぁ、餌役に仕立て上げられてしまう事になる二人には、ちょっと申し訳ないのだが。

 実害は出ていないので、問題あるまい。


「確かにそうだな……。つか、考えてみりゃ……そう言う手もあったんだな。さすがにあの二人を餌に盗賊に取り入るとかとても、思いつかんかったが……。確かに、女と酒を手土産に仲間に入れろってやれば、実際に信用されそうだな。特にモヒートなんぞ、モロに悪人面だしなぁ……むしろ、見つかっても同業者って思われたかもしれんな」


「ほっといてくださいよ! アニキ! ……と言うか、アスカの嬢ちゃん……。可愛らしいナリして、そんなヒデぇ計略……良くこの場で思いつくなぁ……」


「そうだなぁ……。さすがにだまし討ちとなると、勝てると解っても、さすがに躊躇くらいしそうだ……」


「そうか? 正面から戦うだけが戦ではないのだ。謀略や計略、不意打ち、ありとあらゆる物を利用する。騙し討ち上等、騙される方が悪い。正義を成すとはそう言う物だぞ、なにせ正義に敗北は許されないのだからな……。負けてしまっては元も子もあるまい。それとも、ソルヴァ殿は元騎士である以上、騎士道精神に則り正々堂々がお好みであるのかな?」


「……いや、確かに戦も、勝てなきゃ話にもならんからな。あん時は、あのまま逃げ帰るしか無いと思っていたが。もう少し柔軟に考えても良かったかな」


「まぁ、ソルヴァ殿はなかなかに見どころのある御仁だとこの私が断言するぞ。どのみち、ああ言う状況では、すべてを取るのではなく、物事に優先順位を付けて、それに基づいて行動するしか無いのだ。当然ながら、優先順位が低いものは切り捨てる他無い。普通に考えて、最優先とするのは自分と仲間の命……それを最優先として、その上で最善を尽くす。そう言うものであろう」


「そりゃそうだが……。あそこで人質を見捨てるってのは、やっぱ無かったな……。実を言うと、俺も逃げるか、ムチャを承知で仕掛けるか……ギリギリまで葛藤してたんだ……」


「うむ、それが当然なのだ。だが、あの場面で、自分達の命よりも他者である人質の命を優先しようとしたのは、実に良い心がけと言える。まさに正義の名に恥じぬものであったぞ」


「……そりゃ、買い被りなんだがなぁ。まぁ、いいか。モヒート……ひとまず、アスカの言う通りに報告しとけば、それで良さそうな気もするからな。なんかツッコまれたら、事後調査でもなんでも好きにしろって言っとけ」


「わっかりやした! つか、そうなると俺ら益々名声ってもんが上がりそうっすな! なんせ、盗賊団が25人も居たのに巧みな計略使って皆殺しにして、見事に人質も救出! 100点満点どころか120点って感じっしょ! こりゃ、A級パーティに認定される日も近いかもしんねぇですな!」


「そうだな……。まぁ、仮にも俺らはシュバリエ市冒険者ギルドトップクラスのB級冒険者パーティなんだからな。それくらい軽くやってのけたって話になったほうが、かえって箔が付くってもんだ! なんにせよ、とにかく任せた。それではまた後ほどな……」


「了解、了解。んじゃ、アスカ嬢ちゃんもまたな! あんま、変なワガママとかいうんじゃねーぞ?」


「ああ、委細問題ない。モヒート殿もまたのちほど……な!」


 かくして、「暁のブラン」のメンバーがそれぞれの要件で散っていくと、私とソルヴァさんの二人きりになった。


 どうやら、ソルヴァさんは私の保護者役と言うことで、最後まで残ってくれたようだった。

 確かに、こんな見知らぬ異世界の街で、一人でとなると心細いなんてものじゃなかっただけに、ありがたかった。

 

 当たり前のように、そうする辺り、なんとも面倒見の良い御仁であった。

 

 街は結構な人が行き交っていて、なかなかの賑わいだった。

 北門をくぐってまっすぐ南へ向かって石畳の大通りが続いている様子から、ここはいわゆる中央通りなのだろう。


 中央通りの真ん中あたりで少し道幅が広くなっていて、噴水のようなものが見える様子から、どうやらそこが中央広場になっているようだった。

 

 なるほど、広場を中心に十字に大通り。

 大通りを挟んで都市を四つのブロックに分けているような都市構造になっているようだった。


 城壁も湾曲していた様子から、このシュバリエ市は円形状の計画都市のようだった。

 

 ふむ、都市の建築技術などはなかなか悪くないようだ。

 

 都市計画というものは、その後百年単位で住民の利便性を左右する重要なものなのだが。

 無計画に建物を次々と建てて、無秩序に都市を広げるのではなく、当初の計画に基づいて都市機能を拡張していっていると言う事だな。


 なるほど、この都市は、統治者はともかく、始めにこの地に都市を作ろうとした建設者はなかなかに分かっていたようだ。

 

 大通りには1m程度の幅の石積みの水路が道の左右端っこに設けられていて、家々にも水路が接続されている様子からどうも、下水などもそこに流しているようだった。

 

 水深は50cm程度だが、水も綺麗でなんとも涼し気な様子だった。


 雨も多いようで、水はけなども道の中央をやや高くして、微妙に傾斜させる事で、降った雨が水路へ流れるようになっているようだった。

 

 このあたりもなかなかちゃんと計算されている。


 石畳もところどころ、わざと荒い石を敷き詰めることで、水はけを良くしているようで、実によく考えて作られている。

 

 割と気温も高いはずなのに、地面の近くがひんやりとしている様子から、案外石畳の下にも伏流水が流れるような構造になっていて、大通り自体が巨大な水路になっているのかもしれなかった。

 

 どうやら建築技術については、かなり高度な技術蓄積があるようだ。

 実際、街全体も清潔さが保たれているようだし、思った以上に近代的だった。


 もっとも、水路には柵やシールドもないようで、道端がいきなり水面みたいになっていて、ここはちょっといただけない。

 雨が降った時に、なにかの拍子に水路の下流が詰まると、雨水が溢れて通りが水浸しになってしまうだろうし、夜など、うっかり水路に落ちたりする者がいそうだ。


 通り沿いの家は、基本的に家の前に橋を渡して水路を横断しているようだが、薄っぺら木の板だったり、なんともお粗末。

 この辺は、どうもそれぞれ個人が勝手に作って管理しているっぽい。


 うーむ……地球型海洋惑星の特徴の一つに、やたらと雨が多かったり、時には台風のような暴風雨が荒れ狂う場合などもあるのだが……。


 まぁ、惑星エスクロン名物、メガストームのような破滅的な自然災害は、あの惑星特有のもので、他の地球型海洋惑星の台風は都市がひとつ更地になるとかそんなレベルじゃないと聞いているから、この程度でもあまり問題にならないのかもしれない。


 なお、家々の窓には窓ガラスなどは入っておらず、木の板を明け閉めすることで換気や採光をしているようだった。


 鉄を扱えるような精錬技術があるなら、ケイ素を原材料とするガラスも製造できるはずなのだが……。

 まだ庶民には行き渡っていないとかそう言うことなのだろうか?

 

 ここに来るまでに、水浴びついでに、川べりの地面の砂をつまんで、簡単に組成を分析したりもしたのだが。

 

 透明なガラス状の粒……石英も多く含まれていて、ガラスくらいはあると見ていたのだが、そこは予想外だった。

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新連載始めました!! アスカ様の前日譚! 「銀河帝国皇帝アスカ様 零 -ZERO- 〜たまたま拾った名無しの地味子を皇帝に推したら、大化けした件について〜」 https://ncode.syosetu.com/n1802iq/
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