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第六十二話「銀河帝国への帰還」①

 ゼロ陛下からの緊急のアストラルネットへの接続要請。


 その時、私はトロージャン達の戦いから、3日ほどを経て、恐らく今後続くであろう、敵対海上勢力の襲撃に備えて、ルペハマの要塞港化と、陸戦隊の編成……そして海上戦闘艦隊の建造を最優先で進めつつあった。


 まぁ、ひとまずは計画立案の上でロードマップを示した程度で、実のところ何一つ取り掛かっていないのだが。


 急いては事を仕損じるとも言うのでな……まずは、計画と段取り。

 そこを疎かにして、行き当たりばったりなど論外と言える。


 連日の現地の者達との意見交換や、ルペハマへの兵力集中や南方貴族との防衛ライン構築と言った取り急ぎ、行うべきと判断した項目についても一段落つき、今日はもう遅いので、また明日と言うことで、私も水浴びを済ませさっぱりして、眠りにつこうとしていたところだった。


「……ゼロ陛下からのアストラルネットへの招待だと? 一体何事だ……お母様の話は例によってフワッとし過ぎていてさっぱりだったのだが。この忙しいのに……私も大和殿もそんな暇人ではないのだがな」


 報告自体は大和殿経由。

 大和殿は定期的にアストラルネット経由で本体側と同期を取っており、その際に要請されたようだった。


「同感であるなぁ……。ああ、我が本体が伝達してきた内容を要約すると、第三航路のエネルギー生命体共と一戦やらかして……ゲートキーパーの使者との対話が実現した……そんな事を言っていたぞ」


「なんだそれは? ゲートキーパーは解るが、対抗手段も無かったのではないか? そもそも、対話とな? エネルギー生命体とのコミュニケーションなど、どうやって……」


 実際の所、アレらが口を聞いているのは今まで見たこと無い。

 まぁ、ラースシンドロームに精神汚染された人間とは何度か話し合おうともしたが、会話にならないのが常であり、文字通り話にならなかった。


 何より、向こうの目的が人類種を精神汚染した上で、変質させ、繁殖用の苗床にしようとしていたことは解っていたのだが。

 こちらとしては、そんなもの許容できるわけがない。


 故に、話し合いも何もと言う状況となっており、始めからコミュニケーションも何もあったものではなかったのだ。

 

 ……エネルギー生命体と人類とでは、生命としての有り様が違いすぎる……それ故にコミュニケーションも取りようがない……あれはそう言うものだと認識していたのだが……。


「ふふん、我の力……波動粒子エネルギーは、要するにエネルギーを食らうエネルギーなのだ。実際、ゲートキーパーには実によく効いたようでな。どうやら、奴らは我が力を相当な脅威と認識したようでな……。故に使者を送り込んだ上で対話を試みるという迂遠な対応を仕掛けてきたようなのだ」


 なるほど。

 要するに、向こうも大和殿の力を脅威として思い知り、滅ぼされてはかなわないと、こちらに合わせる事で、コミュニケーションの試みを始めた……そう言うことか。


 となると、これは実にいい傾向と言えた。

 なにせ、異文明との交渉においては、まず意思の疎通が取れるかどうかがもっとも重要なのだ……。

 

 例え、言葉が通じなくとも、我が配下にはその手の異文明交渉のスペシャリトも揃っているのだからな。

 未知の文明の使者との対話が可能か、不可能かと言われれば、不可能ではないと断言できる。


「なるほど、それは悪くない話だな。となると、第三航路の開通……すなわちマゼラン、銀河間の航路の開通が実現性を帯びてきたということか。それは実にいい話だな」


「ああ、そう言うことだ。これは、我々にとっても希望とも言える。だからこそ、その対話への立会を求めたいということだろうな」


「ふむ……立会か。ソレはいいが、具体的には何をすればいいのだ?」


「まぁ、我々はのんびりVR空間でお茶でも飲みながら、その様子を見守ると言ったところだ。なにせ、人類史的にも歴史的な対話でもあるのだからな……。銀河帝国の皇帝たるアスカ陛下抜きで話を進めるほど、ゼロ陛下も無粋ではないと言うことだな」


 なお、私も寝る気満々で、思い切りパジャマ姿だった。

 天然シルク……のような素材のなかなか涼しげで軽く、フリフリいっぱいな少女趣味の代物だったが……私は、こう言うのも結構好きなのだ。


 売り込みに来た服飾商人の話だと、本来私に売りつけるつもりはなく、別の用途だったそうなのだが。

 私が気に入ったと言うと、なんとも複雑な顔をしながらもその大人の女性用の服を私のために、わざわざサイズ調整までしてくれた。


 ちなみに、本来誰に売るつもりだったのかについては、微妙に言葉を濁されてしまって、解らずじまいだ。

  

 まぁ、色が淡いパステルカラーのピンク色で布地もペラペラな一枚地で、明るい所で見ると割と色々スッケスケなのだが……寝間着とはそんなものであり、少しくらい透けているからと言ってそれがなんだと言うのだか。


 女性用の夜着なのは確かなことであり、何故使用目的を隠すのかはよく判らんが……。

 まぁ、それはどうでもいいだろう。


 この夜着……まるで何も着ていないかのように風通しもよく、重さというものも殆ど感じない。

 まさに裸同然……寝間着としては、実に素晴らしい逸品だった。


 イース殿は、それ着て外歩かないでくださいねとか言ってたが、どうせ、こっちの夜は暗いのだし、これで外に出歩くつもりはさすがにない。


 もっとも、こちとら、本来は全裸で外を闊歩しても全く気にならないのだから、そこは一向に気にしていない。

 寝るときだって、本来は裸で寝たって一向にかまわないのだ……だが、眠る時もオシャレには気を使う……それでこそ、女子というもの!


 それに、このいっぱい付いたリボンも実に良い……。

 実を言うと、私はこう言う可愛らしい少女趣味の物がとても好きなのだ。


 銀河帝国皇帝時代も、威厳を保つ必要がなければ、どピンクのゴスロリファッションだって着てみたかったのだ……。


 実際、こっそりと発注して、自分で着てみてそのあまりの可愛らしさに嬉しくなって、お忍びで出かけようとしたのだが……。


 側近も侍従達はもちろん、従属AI達も誰もが、頼むからそれで国民の前に出るのは止めてくれと言うので渋々、国民の前に出る時は威厳たっぷりで可愛らしさの欠片もない皇帝衣装を着ていたものだった。


 なお、同室にはリンカやイースも居て、二人は床で雑魚寝常態。

 寝所と言っても、要はただの掘っ建て小屋。


 一応男子禁制とさせてもらったので、部屋には女子しかいない。

 大和殿やリンカ達も同じようなフリフリスケスケのパジャマで、お揃いのボンボン付きナイトキャップを被っていて、なんとも可愛らしい。


 ああ、このナイトキャップも昔からの私の愛用品で、何と言うか……頭がスースーしてると寝付きが悪いのだよ。


 だからこそのナイトキャップ!

 

 さすがに、皇帝の寝処での服装などは規定もなく、人に見られることもなかったので、寝巻や寝具は結構好き勝手やっていたのだ。


 ナイトキャップも猫耳やうさ耳、ボンボン付きと例によって少女趣味全開で、どデカいうさぎやくまのぬいぐるみと一緒に寝る事もよくあった。

 

 私は、そう言うのも結構好きなのだ……なんでか知らんが、その事実は第三帝国の最高機密扱いされていたようだったが。

 可愛いは正義という言葉もあるであろう? 何と言うか、ああ言うのは心が癒やされるのだよ……。


 皇帝にだって、癒やしは必要……これは、他の七皇帝達も力いっぱい同意してくれたので、そう言うものらしいぞ。


 もっともこちらの世界では、寝るときに帽子を被るような習慣も無かったようなのだが、エルレイン殿に相談したところ、ルペハマの服飾職人にオーダーメイドしてもらう事が出来て、念願のナイトキャップを手に入れたのだ。


 まぁ、この寝間着で外を歩いたり、ゼロ陛下との謁見ともなれば、大いに問題ありなのだが……。

 VRならば衣装など気にしなくてもいいから、いそいそと着替える必要もない。


 私と大和殿が起きているのに気付いたのか、リンカとイース殿も眠たそうに起きてくる。


「アスカ様、お休みだったのでは? 何かありましたぁ……?」


 枕を抱えて、寝ぼけ眼のイース。

 猫耳ナイトキャップが実に似合っていて、可愛い。


「うーん、神樹様から接続要請がどうのと言ってましたが。アストラルネットの……ゼロ陛下からの招聘って言ってましたよね? そう言う事なら、私もお供いたしますよ」


 むしろ、いそいそと服を着始めているリンカ。

 この娘は相変わらず、寝る時は全裸……人がいようとお構いなしなのだが、そこは私も同類であるし、いい加減慣れた。


 もっとも、ナイトキャップについては気に入ったようで、今のところ、寝る時は全裸にナイトキャップだけと言うスタイルに落ち着いたようだった。


 まぁ、いいんでないかな?

 ……だが、リンカやイースにも聞こえたとなると、お母様、もしかして接続可能な連中全員に声を送ったのか?

 

「なんか言ってるーとか思ってましたが、あれってそう言うことだったんですか! はぅわっ! ゼ、ゼロ陛下ってアレですよね? アスカ様のいた星の世界の大帝国の大皇帝様の事ですよね? と言うかアストラルネットも、アスカ様とリンカちゃんだけが接続できるって言うあの……」


「まぁ、そうだな。我ももちろん、アストラルネットに接続は可能なのでな。そうなるとイース殿はこのままお留守番……であるかな?」


「えーっ! あ、あの……そのアストラルネットとか言うのに、私も接続出来ないんですかね? なんか、一人だけ置いてけぼりで蚊帳の外って感じで寂しいんですけど……」


 イース殿達がアストラルネットへ接続できるかどうかについては、結論から言うと可能ではあるのだ。


 リンカも、元々純粋なこちらの世界の住人ではあるのだが。

 すでに、最初の接続の際に、私の持つアストラルネットの代理認証で、向こう側から正規の接続アカウントを発行されていたようで、その気になればいつでも接続は可能になっているようだった。


 思いっきり、偽装接続のような気もするのだが、そこは別に問題はない。

 なにせ、私の持つ皇帝アカウントは、私が許可を出せば、誰だろうが問答無用で接続が許可される……そう言う物なのだからな。


 銀河宇宙に居た頃は一度も使わずじまいだったのだが。

 ユリコ殿からはそう言うものだと聞いているし、前回の招聘のときにゼロ陛下から、こちら側の側近などがいれば、後学のために連れてきても構わないと言質はもらっているのだ。


 やがて、エイル殿やアリエス殿、エルレイン殿……更にオズワルド子爵やカザリエ男爵、アークにソルヴァ殿やファリナ殿と言った、今は遠方にいる顔なじみの幹部達まで何事かと、お母様経由で問い合わせを行ってきていた。

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新連載始めました!! アスカ様の前日譚! 「銀河帝国皇帝アスカ様 零 -ZERO- 〜たまたま拾った名無しの地味子を皇帝に推したら、大化けした件について〜」 https://ncode.syosetu.com/n1802iq/
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