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第五十九話「海戦勃発!」④

「やったのだーっ! 止まってたから当たったのだ! ナスティちゃんの必殺技……サードアイズビームが直撃した以上……相手は死ぬっ!」


 振り返ると波間から頭を出したナスティちゃんの眉間……人間で言うところの額の位置に小さな赤い宝石のようなものが出てきていた。


 ……なんとまぁ。

 そんな武器を隠し持っていたのか。


 多分、今のは兵器級出力の赤外線レーザー。

 ガンマ線レーザー辺りと比べると、収束率の問題で格段に威力が落ちるのだが。

 目に見えるほどの秒単位のバースト射撃ともなると、ALコートでも防ぐのは簡単ではない。


 ただの巨大イカかと思っていたら、とんでもない牙を隠し持っていたようだった。


 おまけに、完全に不意打ち。

 誰もナスティちゃんに注目してなくて、誰もやれとは言ってない。


 今のトロージャン氏もナスティちゃんは、無害と勝手に判断していたようだったが。

 コヤツに手出し無用空気を読めとか、そんな芸当出来るわけがなかった。


「ふむ、イカ様だけに、イカサマは得意っ! わっはっは! 油断大敵だったな……トロージャンとやら!」


 私、上手いこと言ったぞ。

 

 だが……あの見た目。

 おそらく、光学兵器は微妙だと思うのだが……どうなのだ?


「フハハハハッ! まさかの伏兵! やってくれたな! ……だが、文句は言うまい……。戦とは常々、そう言うもの……。あらゆる策、あらゆる兵器……持てる全てを使い敵を討つ! そこの高貴にして、卑怯なるお方よ。こちらも名乗ったのだから、そちらも名乗り返すのが礼儀であろう? 名を聞かせてもらおう」


 案の定、元気そうな様子でトロージャン氏が波間から顔を出す。

 水蒸気爆発を起こすほどの加熱だったにも関わらず、さしたるダメージを受けた様子もない。


 どうやら、光学兵器に対しては、そのクリスタル製の身体自体がレーザーを屈折、拡散化することで、最低限のダメージしか受けないようになっているようだった。

 

 しかし、名乗りを上げて、不意打ちを食らいながらも、こちらの名を問うて来る。

 何と言うか、紳士的かつ理知的なヤツなのだな。


 だが、待て……卑怯とか言うな。


 今のは私のせいじゃないぞ。


「では名乗ろう……我が名はアスカ! 銀河帝国第三帝国が皇帝である! 良いか……貴様らに告げることがあるとすれば、この星は我らが銀河帝国が接収する! この一言だけだ。よいか? 貴様ら、この惑星の地上世界の者達には二つの道がある……服従か、或いは死……好きな方を選ぶが良いぞ!」


 どこぞのSFドラマの悪役宇宙人のようなセリフだが。

 この際だから、立場と言うものをはっきりさせておく必要があった。


「大樹の文明……その眷属……。そうか、貴様らが……混沌の使徒か。せんだって、我らが同胞たる火の神々の使徒共がいい所まで追い込みながら、手酷くやられ、星の眷属まで派手に潰されたと聞いたが……。あれは、貴様らという助勢が加わったからか。まぁ、いい……吾輩の役目はただひとつ……この惑星を破壊者、侵略者の手から守る……敵と戦う事のみ! 吾輩は我がクルタニド文明の剣にして守護者なのだ……。故にどちらもお断りである!」


「まぁ、そうであろうな……。で? まだ続けるか? 貴様の仲間は……すでに大和殿たちが全滅させたようだぞ。あとは貴様だけ……ということだな」


 周囲を睥睨する……あれだけいたザリガニ人間共も、もはや一匹も動いては居なかった。


 大和殿達の姿もなかったが、恐らく状況を察して、海中に潜伏中。

 

 私が腕を振り下ろすだけで、一斉に襲いかかってくるだろう。


 通信を使わないのは、恐らくこのトロージャン氏に筒抜けになる可能性があると理解しているからで、無音、無言での連携を仕掛けてくると予想された。


 さすが、チーム大和……実に手際が良いな。


「そのようだな……。まったく、こちらの最大戦力たる海竜も消し炭にされてしまったし、1000匹近く居たザガー共があっという間に皆殺しにされるとは……一体なにごとだ? ん、ああ……これは君の管轄なのか? よかろう、選手交代だ。……すまんな、アスカ殿。誠に勝手ながら、この場は吾輩よりもそっちに詳しい担当者へ交代させてもらうとしよう」


 トロージャン氏が訳のわからないことを呟くと、カックンカックンと前後に揺れると、マントの色が黒くなっていき、体内の循環液の色が黒に染まる。


「ああ、この俺……黒のアギト様の出番ってことだ。トロージャン……お前は紳士的なのはいいんだがお人好しが過ぎる……。まったく、スターシスターズ共がこっちの世界に来てるなんて、聞いてねぇぞ……。おまけにほとんど丸腰の状態から、あっと言う間に人間サイズの高速海上機動兵器みたいに進化するとか、さすがにチートが過ぎんだろ……」


 唐突に口調が変わり、気配も変わる。

 だが、コヤツ……何なのだ? スターシスターズを知っているのか?


「……貴様、何者だ? アギト……と言ったが、先のトロージャン氏とは別人のようであるな?」


「俺か? まぁ、アギトってのはネットネームみたいなもんで、その実、名もなき21世紀の日本からの転生者ってとこだな……再現体リビルデッドマンって呼び方をされていたって言や、ちょっとは解るか? 銀河帝国の皇帝サマよぉ!」


「再現体だと? 馬鹿な……それが何故こんなところにいるのだ! 貴様は、ここがどこだか解っているのか?」


「ここが何処かなんて、別に興味はないな。やれやれ、柄にもねぇ提督なんてやらされて、無茶な任務であっさりくたばって……いよいよ異世界チート本番始まったと思ってたら、あれよあれよと言う間に情勢悪化。まぁ、俺らはいわゆるケイ素系生物みてぇなんだが……こんな風に地球そのものみてぇな環境にされちまったら、生物構造自体がまるで違う俺らみてぇなのは生きていくのも難しくなる……。ヒッデぇ話だと思わねぇか?」


「……ふむ、解らんでもないが。それは、今に始まったことでもなかろう……お母様……神樹様は恐らく数千年、或いは数万年単位でこの惑星の最適化事業を続けていたはずだ。すでに、地球人類と大差ない新人類すらも誕生しているのだ。その流れにケチを付けても始まるまい」


「ははっ! 確かにな……そんなもんは、地球人類が銀河に進出してから、何度も繰り返してた事ではあるからな。銀河帝国の皇帝サマなら、そう思うのも当然だ。だが、こっちの視点だとお前らは惑星環境を破壊し、種族そのものを滅ぼす侵略者……害悪でしか無い。そこは御理解いただけると思うがどうだ?」


「……返す言葉もないな。だが、要するにそれは生存競争以外の何物でもない……こちらもだからと言って、惑星改造事業を止めるつもりもないし、そもそも、中途半端に止められるようなものではないからな。そもそも、環境の急変に適応出来ず滅びた種族など、それこそ星の数ほどいるではないか」


「ああ、いちいち御尤もだ……。しっかしまぁ……この惑星はてっきり異世界……。地球や銀河とは関係ない別の世界だと思ってたんだが。俺にとってはお馴染みなスターシスターズやら、悪名高い銀河帝国の皇帝サマまで出てきたとなると、ここは異世界なんかじゃなくて、銀河系のどこか遠い未発見の惑星だったって……そう言うことだろ? そして、アンタは銀河帝国の手先……いや、自分から皇帝を名乗ってるとなると、あの国の意志そのモノってとこなんだろ? なんせ、あの国で皇帝サマを名乗るなんて、半端な覚悟じゃ出来ねぇ事だろうからな」


 ……言ってることは概ね、合っているし、我が銀河帝国についてもよく解っているようだった。 


 だが、コヤツがなぜここにいるのかと言う説明になっていないし、このクリスタル製ドクロマンが何なのかの答えにもなっていない。


 一応、ケイ素系生物と言うことは、断言していたが。

 選手交代と称して、中身がさっくり入れ替わっている事や、外観が若干変わった事から、中身……精神の入れ替えが可能。

 或いは、遠隔操縦タイプの人型機動兵器のようなものなのかもしれん。


「……そうだな。具体的に、この惑星の所在が何処だかは、貴様に教えてやる義理もない……。もっとも、直ちに降伏するなら、考えんでもないがな。貴様、要するに銀河系からの転生者のようなものであろう? ならば、同郷者たるこの私と貴様で、話し合うと言う道もあるであろう?」


「あ? 何もせずに降伏とか、お話し合いとか、おめーそりゃねぇだろって思わね? しっかし、よりによって、こんなヤベェ奴らを敵に回すなんてな……。ああ、本当に俺はツイてねぇなぁ……」


「クドいようだが、今の貴様に勝ち目などないぞ……。大和殿達は今も海中から、貴様をいつでも仕留められるように、息を殺して私の合図を待っているであろうし、貴様の戦いぶりも存分に観測していただろうからな。あの者達ならば、間違いなく必殺の一手を用意しているだろう。もう一度、問う……戦って死ぬか、降って生きるか……好きな方を選べ!」


 実際、大和殿もすでに白兵戦で未来視持ちと互角以上に渡り合い、光学兵器も効果が薄い……そこまで解っているはずだった。

 

 まぁ、こうなってくると、物理衝力兵器による飽和連続攻撃辺りが定石であろうな。


「……わりぃが、どっちも趣味じゃねぇな。トロージャンの旦那……さすがに、これは分がワリィ! 悪いが、この場は緊急脱出と行くぜ!」


 それだけ言うと、黒っぽくなったドクロマンは、おもむろに自分の頭を引き抜くと反対方向へ向かって、豪快にシューット!


「な、なんだと?」


 こちらがあっけにとられている隙に、今度は残った胴体が海面に手を沈めると、同時に強烈な高周波を発する。


 これは……知っているぞ!


「皆のもの! 耳を……塞げっ! 来るぞっ!」


 とっさに伏せながら目を閉じ、耳を塞ぐ!


 次の瞬間、骸骨は凄まじい大音量のノイズのような音を発すると、たちまち砂のようになって崩れていく……。


 やられた……やはり、重音響衝撃波だったか……。


 ソニックバスターとも呼ぶ広域音響兵器で、破壊効果自体は皆無に等しい。

 対人用に使われた際もとっさに耳を抑える程度で、最小限のダメージに抑えることが出来る……。


 ドローンのような軽い飛翔体の無力化や、暴徒鎮圧用によく使われ、ラースシンドローム対策としても使われていたのだが……。


 水中は、音の伝達速度も早い上に、音の衝撃波というものは馬鹿にならない威力がある。


 なんとなく、嫌な予感がしたので、水に手を突っ込むのが見えた時点で、とっさに耳を塞いでいたのだが……。


 リンカは……とっさに私の指示を聞いてくれたようで、健在だったが。

 エルレイン殿は直撃を食らったようで、海に浮かんだ水死体みたいになっていた……。

 

 だが、この兵器……地上目標に対しては、一時的な無力化程度しか効果がないのだが……。

 水中兵器として使うとなると……装甲目標には効果が薄いのだが、生身を晒しているとなると話は別だった


 まさか……っ! 狙いは初めから、大和殿達だったのか!


 案の定、水中に潜んでいた大和殿達は至近距離で重音響衝撃波をモロに食らったらしく、やはり水死体のようにプカプカと浮かんできていた……多分、一瞬で気絶してしまったのだろう。


 相応の対策を取っていれば、さしたる威力もないのだが。

 無対策だと、割と必然的にこうなる……。

 

 大和殿たちも、いつでも飛び出して白兵戦を仕掛けられる距離まで接近していたことが完全に仇になったようだった。


 ナスティちゃんもしっかり巻き込まれたようで、グロッキーになって涙目状態で波間に浮いていたが、頭を水面から出していたおかげで、意識はあるようでプルプルと触手を震わせながらも、エルレインを支え、頑張って顔を水の上に上げさせていた……。


 ……ここは素直に感謝する。

 異形の怪物ながら、目の前の人を救うために必死になれる……普通にいいヤツではないか。


 それに何と言うか……敵ながらあっぱれ。

 

 鮮やかな引き際としか言いようがなかった。


 恐らく、その本体である頭を遠ざけながら、自壊することで水中へ重音響衝撃波を放ち、こちらの最強戦力を一瞬で無力化……。


 こちらの追撃を封じた上で、絶体絶命の窮地を軽くひっくり返していった。


 最初のトロージャン氏も相当の実力者であったようだが、アギトとやらにスイッチ……というべきなのだろうな。


 奴に至っては、その実力を見せることなく、まんまと逃げおおせてしまった。

 

 あの様子からすると、あのガラス骸骨はリモートコントロール式の遠隔操作ロボットのようなものか……或いは、意識転写型の戦闘用インターフェイスユニット。


 まぁ、そんな所だと思うが。

 ……この時点で、相当高い技術をもつ脅威と言えた。


 何よりも、結局敵の正体は未だに不明……。

 

 解ったことは、お母様の敵対者……まぁ、お母様の惑星改造により、押しのけられることとなった現地在来勢力の一つといったところで、本人たちの弁を借りるならケイ素系生命体。


 参ったな……人間の国相手なら、なんとでもなると思っていたのだが。

 生存環境が相容れない知的生命体が相手ともなると、さすがに滅ぼし合うしか道はない。


 なにせ、落とし所というものがない。

 奴らの理想環境は、岩と砂しかない火山だらけの惑星で、太陽系ならば金星のような惑星なのだろう……。


 そんな環境では、地球タイプの植物や動物、人間だってとても生存できない。


 相容れないのは、むしろ当然の話だった。


 意思の疎通は可能なようだが、惑星改造というのは半端に済ませることが出来ない事業の代表格と言ってもいい。

 

 徹底的に隅々まで最適化するか、いっそ何もしないか……オール・オア・ナッシング。


 こちらが惑星環境の最適化を進めれば進めるほど、向こうは生存の危機へと陥っていく。

 だからと言って、半端なところで環境最適化を止めると……まぁ、碌な事にならない。


 この惑星の価値は、限りなく地球に近い環境を実現出来る可能性が高いということなのだ。

 こんな惑星は、銀河中を探しても見つかる可能性は限りなく低い……それ故に絶対に失敗は出来ない。


 断言してもいいが、この惑星の開発が軌道に乗り、銀河系との連絡路が確立された暁には、この惑星は新たな銀河人類の中心拠点となりえる惑星となるだろう。


 その程度には、この惑星の環境は人類種の生存に適しており、私が知る限り、ここまでの惑星は存在すらしない……強いて言えば、かつての人類の母星地球……それも、かつてのと過去形で語るべき惑星くらいだった。


 もちろん、海があり、植物が覆い茂った惑星もあるいにはあるのだが。


 有人惑星と言うところは、何処も基本的に水が足りてない……特に人口が集中すればするほど、その問題が顕著に現れてくるのだ。


 実際の所、海洋面積が惑星の2割3割程度とか、それくらいがいわゆる地球型惑星の平均で、海があるだけマシな方と言われているのだ。


 この惑星は、見た所……7割か8割が海。

 かつての地球はその7割が海だったと伝えられるが、それに匹敵する……水の惑星なのだ。


 もちろん、水の塊である海洋惑星はあちこちにあるのだが。

 当然のように居住には適しておらず、普通にハズレ惑星扱いされており、住むにしてもスペースコロニーよりはマシ程度と言う扱いだった。


 今の人類は……誰もがかつての故郷……水の惑星……地球を恋しがっているのだ。


 だからこそ、地球教団のような地球崇拝主義者達はいつの時代にも何処からともなく湧いてくるし、資源枯渇し、荒れ果てた不毛のジャングル惑星しかないと解っていても、アースガードに挑む命知らずも後を絶たないのだ。


 そして、我々、帝国の民とて、それは似たようなものだ。

 すでに惑星エスクロンは、恒星活動の活発化で、平均気温が50度にも達しており、とてもまともな人間が住めるような環境ではなくなっており、その広大な海も年々蒸発し水蒸気化しており、やがて分厚い雲に閉ざされた灼熱の惑星となるだろうと、予測されていた。


 もちろん、七帝国のそれぞれの首都星は、比較的良好な環境の地球型惑星が選ばれているのだが。

 どこも、人口集中による環境負荷と、慢性的な水資源の不足に喘いでおり、我が首都星アールヴェルとて例外ではなかった……。

 

 そして、すでにエーテル空間接続ゲートは開放し尽くされており、未来の可能性……希望すら失われつつあったのだ。


 それが……今の時代の銀河をゆっくりと蝕んでいた閉塞感の正体であり、誰もが漠然と持っていた未来への不安そのものだったのだ。


 だからこそ、この惑星は、銀河人類の新たな希望の地となりうる惑星なのだ。


 如何なる犠牲を払おうとも、いかなる困難が待ち構えていようとも……この惑星は、銀河人類にとっての希望の灯火であり、未来へと繋がる大いなる可能性なのだ。


 ……であるからして、私もここは一歩たりとも譲らない。

 今後も、お母様による環境改造は徹底して貰う必要があるのだ。


 だが、その結果押しのけられ、滅びに瀕している知的生命体がいたとしたら……。

 まぁ、同情には値するが、こちらが譲る道理もない。


 すでに、地球人類と酷似した恐らく同系統人類種がこの大陸を占めているのは、事実であるし、相容れないのであれば、戦う以外の選択肢はない。

 

 だが、銀河系の銀河守護艦隊の指揮官……再現体の一人を戦力として取り込んでいる……ともなると。

 

 先程の飛び道具主体での包囲戦術と言い、明らかに今までの敵とは格が違う。

 大和殿達と戦い敗退したことで、敵も進化適応してくるであろうし、今後は、心して挑まねばなるまいな。


 まったく……こうなると、銀河方面からの支援が欲しくなるな……。

 せめて、クラフターの一台……それだけでも、この惑星にまで送ってもらえれば、全然話は違ってくるのだがなぁ……。


「……ナスティちゃん、そっちは大丈夫か? エルレインを助けてくれたようで、礼を言わせてもらうぞ」


「耳がキーンとして、足がビリビリしてるのだ。でも、ナスティちゃんは強い子だから、こんなんじゃ泣かないしっ! あ、エルレインのおねーさんもちゃんと息してるから、もう大丈夫なのだ! あ、そこらで浮かんでるヘンテコお耳の子達も拾ってくるね!」


「元気そうで何よりだな。すまんが、頼んでいいかな? 私が泳いで回収するよりも楽ができそうだ。恐らく、敵はもう居ないと思うが、こちらの被害も甚大だな……さっさと陸へ引き上るとしよう……。しかしまぁ……なんとも面倒なことになりよったな」


 いずれにせよ、危機は去ったのだ。

 味方もボロボロではあるのだが、敗走と言うほど惨めなものではない。


 対する敵は全滅し、総大将も逃げ帰った……。


 こちらは全員生き残り、何よりも、この私は最後まで立っていた。


 故にこの海戦……我らの勝利に他ならん。


「ナスティちゃん、色々とすまんが……陸まで引っ張って行ってくれると、助かる」


「解ったのだー! お安い御用なのだ……助けてもらったんだから、それくらいはやって当然なのだー!」


「お主、こうしてみると割りと可愛げもあるのだな。化け物呼ばわりしてすまんかった……。では、帰ろうか……我が家に」


 号令一下、ゆるゆると小舟が動き出す。

 

 やがて、取って返してきたらしい、漁船団が見えてきたので、大きく手をふると向こうでは喝采があがっているようだった。


 ……勝利の凱旋。

 と言うには、あまりいい気分ではなかったが、せめて堂々と胸を張ろう。


 銀河帝国皇帝とは……いついかなる時もそうでなくてはならぬのだから……。

 

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新連載始めました!! アスカ様の前日譚! 「銀河帝国皇帝アスカ様 零 -ZERO- 〜たまたま拾った名無しの地味子を皇帝に推したら、大化けした件について〜」 https://ncode.syosetu.com/n1802iq/
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