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閑話休題1「ユリコとアスカ様の異世界海浜リゾートなう」⑦

 飲み物もアスカのリクエストでよく冷えたタンネンラルカや、スイカっぽい果物の生搾りドリンクやらが用意され、バンゲリグですっかり味を占めた漁民達が次から次へと未利用海棲生物を持ち寄って、アスカもユリコも利用方法を知っているものについては、惜しみなく知識を提供した。


 と言っても、二人共そんな地球の海棲生物について、そこまで詳しい訳ではなかったのだが。

 

 神樹様に聞けば、有毒種かどうかは解るので、それらは除外して、後は試しに食べてみることで、美味い不味いをジャッジする……。

 ある意味わかりやすい方法で、識別する事になった。


 当然のように二人も試食にも付き合わされたのだが。

 いちいち、レベルが高くて「美味いぞー!」やら「ブイッ!」が炸裂して、二人共すっかり、お腹いっぱいになっていた。


「ふぅ……まさか、お刺し身に焼き魚料理……魚介フルコースって感じだったね。いやぁ、アスカちゃん良くあんな細かい料理方法とか知ってたねぇ」


「まぁ、私は帝国でも食糧問題担当でもあったからな。天然魚介類の生産プラントにも何度か足を運んでいて、そこでは様々な新開発料理や古代料理の再現なども行っていて、調理方法をレクチャーしてもらったりしていたのだ。もっとも、自分で作った事はなかったのだがな」


 なお、その手の古代料理については、古代地球データベースから発掘されたクッキングレシピやら、グルメTV番組のアーカイブなどで、再現されたものもあったのだが。


 きっちり、系統化した上で再現までしていたのは、永友提督の指導によるものがかなりの数に及んでいたのだが……そこまではアスカも知るよしもなかった。


「なるほど、なるほど。では、本日のトップはどれでしたでしょう? わたしは……やっぱり、ウミウニを一押しとするよ。今までゴミ扱いだったなんて、信じられないけど、お味は最強っ! あれ……地球の海にならまだいると思うんだよね。アースガードと交渉して、サンプルでも採って来てもらおうかなぁ。一応貸しがあるから、それくらい聞いてくれると思うんだよね」


 軽く言っているが。

 アースガードと言えば、様々な団体や国家レベルで再三、強行突破を試みた者達を、尽くを返り討ちにしてきて「人類と話すことは何もない!」と公式に宣言しているような難物なのだ。


 もっとも、アースガードと帝国の関係は、帝国はそもそも地球に何一つ興味を持っていない事を向こうも解っているので、そう悪いものではなく、ユリコの言う貸しについても、アスカも思い当たるフシはあった。


 地球解放軍……まぁ、単なる自称であり、国際的にはタダのテロリスト集団だったのだが。

 

 彼らの実施した後先構わぬ、自爆特攻攻撃で太陽系防衛艦隊も押され、危うく突破を許しそうになった……そんな出来事があったのだ。


 もっとも、たまたま太陽系ゲートの近くを通りがかったユリコ率いる帝国艦隊がその戦いに乱入し、強行突破仕掛けていたテロリストの艦隊を軽く蹴散らしてしまったのだ。


 この地球解放軍の襲撃は、入念に計画されたもので、本来太陽系ゲートを擁する銀河連合は、上層部が買収されていた事で全て黙認する構えだったのだが。


 帝国軍がちょっかい出してくるなど、誰も思っておらず、地球解放軍は帝国軍の参戦で、あっさり殲滅されてしまったのだ。


 もちろん、地球解放軍については、裏では銀河連合諸国が糸を引いており、あわよくば太陽系の奪還を目論んでいたのだが。


 動かないと踏んでいた帝国の参戦で、その目論見は潰える事となったのだった。


 ちなみに、なぜ銀河連合の領域まで帝国艦隊が出張っていたのかについては、同時期に銀河連合艦隊の永友提督から、合同演習の参加要請が来て、演習流域へのルートも指定されており、そのルート上にたまたま太陽系ゲートが含まれていただけの話だった。


 なお、地球解放軍の襲撃については、永友提督は一言も触れず、直接その話を振られたゼロ皇帝も、演習艦隊にユリコを同行させるようにとの要請に、意味深な笑いを浮かべながら、快諾したとされている。


 まぁ……ひどい「偶然」もあったものである。


「ふむ、地球についてはそろそろ、観光や調査くらいゆるしてくれても良いのではないかと私も思っていたからな。案外、マナストーンのひとつやふたつ見つかるかもしれんし、提案して見る価値はあると思うぞ」


「アスカちゃんもそう思う? ヴィルさんも結構興味持ってたみたいだし、ダメ元でおねがいしてみようかなぁ……」


「まぁ、そこら辺はユリコ殿達に任せよう。確かに、我々銀河人類の海産物への理解のなさは、問題であると思っていたからな。もう少しバリエーションが欲しいとも思っていたのだ」


「そだね……。そいや、アスカちゃんもあの馬面の変な魚ずいぶん気に入ってたみたいだしね」


「うむ! オチョボツノマダラだったかな? あのケバケバしい魚……実に気に入ったぞ! ……なんだ、アレの肝和えは! 美味すぎるだろう! ここらでもイチオシという話だったが納得の味だった。なんでも、あれは地球原産のカワハギと言う魚に似ているそうだが、宇宙には持ち込まれなかったそうだからな……。是非、我が帝国の民にも口にして欲しいと思ったのだ」


 オチョボツノマダラ……まぁ、これは現地語では「おちょぼ口で角の生えた斑の魚」と言う説明文チックな名前だったのだが。


 アスカがそれっぽい名前に変換した結果、エルレインがそれ正式名称にしましょうと勝手に決めてしまったのだ。


 なお地球産の魚類だと、アスカの言うように、モンガラカワハギ科と呼ばれる派手なカラーリングの南方系のカワハギの亜種系統に酷似しており、実際間延びした馬面と体の大きさの割に小さな口、そして、黄色と赤のまだら模様と言うドハデなカラーリング……。


 この惑星の海は比較的、水温が高いため、魚類も派手になる傾向があるようで、アスカ達もレモンイエローや青い魚と言うドハデな魚の刺し身が出てきて、最初は驚いていたのだが。


 どれこもこれも、二人の知る養殖魚や合成食材とはまるで比較にならず、まさにびっくりの美味しさ……と言う事で、至って満足していた。


「あー、あの赤と黄色のものすごいカラーリングの魚かぁ……。驚きの配色だったけど、確かに美味しかったね。と言うか、なんであんなすごい色なんだろ? この惑星独自なのかなぁ」


 ちなみに、当然ながら人類が宇宙へ持ち出した海産物は、物凄く偏っていて、養殖技術が確立していたサーモンの類や、イカやタコ、マグロのようなメジャーどころばかりで、南方のケバケバしい魚については、一切持ち出されておらず、それらは図鑑の中にしか存在しない生物だった。


「いや、地球でも赤道に近づき、温暖になるほどに魚も派手になる傾向があったそうでな。逆に寒い地域では魚も地味になる……そんなものだったようなのだ。確かにここの水温は高めであったし、案外、地球の南方の海に近い環境なのかもしれんな。そして、似たような環境では例え物理的に隔たれていても似たような生物が発生する。この海を帝国の生物学者達が見たら、驚愕するであろうな」


 なんだかんだで、動植物や食べ物に関しては、アスカはなかなかの博識なのだった。


 食料用の魚介類のみならず、もはや地球にしか生き残っていないであろう、様々な海棲生物についても詳しかったし、料理方法なども詳しかったのだ。

 

 もっとも、その原因は、身近な側近にヴィルゼットと言う宇宙生物学の権威がいたからで、解説好きな彼女に事あるごとに、様々な分野についてのレクチャー三昧を食らっていて、自然に覚えたというのが実情だった。


「なるほどねぇ……。わたしは生物学とか学ぶ機会は全然なくてさ。でも、自然環境の素晴らしさってのは、よく解るよ。でもさ、こんな風にくつろぎまくってて、回り中で酒盛りやってて……。この世界の人達って、結構呑気なんだね……。今も宇宙には炎神の残党がいっぱいいるのに……。完全に制宙権取られてて、平然としてるってのは図太いとしか言いようがないよ」


 実際、浜辺はまさにお祭り会場と言った調子で、アスカ様歓迎ととかそんな立て札があちこちに掲げられていて、街の人々も続々と集まってきていて、便乗した屋台やら、漁民達のワイルド料理が振る舞われたりで、あちこちで宴会が始まっていた。


 まぁ、誰もが疎ましく思っていた炎神教団の神官たちや、バーソロミューの手先と言った目障りな連中が軒並みエルレインの配下の隠密達によって、アスカ来訪前に大掃除と称して、まとめて始末されており、その上バーソロミューを討ったアスカ本人の来訪。

 更に、ルペハマが正式にその庇護下に下ったと言う知らせは、住民たちを狂喜させるには十分すぎる知らせではあったのだ。


「まぁ、そういうでない。惑星文明にとっては、宇宙の脅威の事なぞ、考えるだけ無駄と言えるからな。過去の地球人も宇宙には自分達以外の文明は存在しないと思いこむことで、その脅威について、見て見ぬふりをしていたようだったからな。惑星上に住む限り宇宙の事なぞ、遠い異世界のようなものに思えてくる……そんなものなのだ」


「……確かに、私も昔、エスクロンに引き籠もってたんだけど、ある日、いきなり目の前にドラゴンが飛んできて大暴れし始めてね。なんかもう怪獣映画みたいな騒ぎになって、ようやっとエスクロンヤバいって気付いたからね……。惑星の上にいると宇宙のことなんて、遠い世界のことに思えてくる……それは実感付きで解るって言えるね」


 ……実のところ、帰還者来襲の際、惑星エスクロンで引き籠もっていたユリコが復活したのは、その居住地域に、偶然軌道防衛艦隊が撃ち漏らした帰還者のドラゴン型降下戦闘体が落着してきたと言う事件がきっかけだったのだ。


 その降下戦闘体……大気圏内戦闘用ドラゴンは、100mもあるような大型種で、急遽迎撃に駆けつけたエスクロン海上艦隊やナイトボーダー隊を軽く蹴散らし、市街地にも甚大な被害を与えたのだが……。


 ……目の前に撃墜されたナイトボーダーが落ちてきて、重傷を負ったパイロットの代わりに乗り込んだユリコの駆るナイトボーダー一機に手もなく粉砕され、事なきを得たのだが……。

 

 ユリコ本人は、怠惰な安息の日々を脅かされた事への怒り、そして何よりも軌道防衛艦隊が突破される程にまで、制宙権が怪しくなっていて、惑星エスクロンが危機的状況にある事を初めて実感したのだ。


 もちろん、ユリコも帰還者と帝国の戦いについては、TVニュースなどで知ってはいたのだが、帝国軍の実力を誰よりも知っている事で、どうせ皆がなんとかすると軽く考えていたのだったのだが……。


 当時100億人近い大人口を抱えて、数万隻にも及ぶ大艦隊に守られていた惑星エスクロンが、外敵の襲来を防ぎきれない所にまで追い込まれていると実感した事で、ユリコは引きこもりの日々に別れを告げ、現役復帰を果たし、帰還者を粉砕する原動力になったのだ。


 ……帰還者の最大の失敗は、まったくの偶然で、眠れる獅子たるユリコを叩き起こしてしまった事だと言われているのだが……。

 

 ユリコの復帰を狙ったゼロ皇帝が危機的状況を彼女自身に知らしめるために意図的に、そんな状況を作り出した……そんな風に邪推する者もいたのだ。


 実際の状況は、新型のステルスタイプのドラゴンが、あっという間に防衛線をすり抜けて、エスクロン地上まで侵入されてしまっただけの話で、ユリコ自身は完全に巻き込まれただけだったのだ。

 

 もっとも、ユリコの参戦は、まさにターニングポイントとなり、それまで帝国軍は連戦連敗くらいの勢いだったのに、ユリコ復帰後は、まるで逆……連戦連勝の破竹の進撃で、エスクロン星系から帰還者を完全に駆逐して、その後の戦いもユリコの出撃した戦闘は尽く大勝利となり、まさに帝国の守護者の名をほしいままにしたのだ。


 ちなみに、ユリコも当初は義勇兵として、こそーと人知れず参戦するつもりだったのだが……。

 

 クスノキ・ユリコを名乗るどう見ても本人が、志願書持ってやって来たと言う徴兵事務局からの報告を受けたゼロ皇帝は、取るものもとりあえずと言った調子で、ユリコの元に自ら駆けつけて「君の帰りを待っていたよー!」等と言いながら、抱き締める……なんてことをやらかし、思いっきりビンタを食らって、錐揉み車田落ちをキメるという前代未聞の騒ぎを引き起こして居たりもしたのだが……まぁ、これは別の話だ。

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新連載始めました!! アスカ様の前日譚! 「銀河帝国皇帝アスカ様 零 -ZERO- 〜たまたま拾った名無しの地味子を皇帝に推したら、大化けした件について〜」 https://ncode.syosetu.com/n1802iq/
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