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銀河帝国皇帝アスカ様、悪虐帝と呼ばれ潔く死を遂げるも、森の精霊に転生したので、ちょっとはのんびりスローに生きてみたい  作者: MITT
第二章「アスカ様の覇権国家建国道」

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第四十四話「はるか遠い世界の星空に」⑥

「……なるほどな。状況は理解したぞ。だが、お母様は正面からなら、奴らに十分対抗出来ていると思うのだが、どうだ? 事実、衛星軌道上どころか、惑星近辺に奴らの姿は一切ない。ユリコ殿なら、これが意味する所が解るであろう?」


「……もしかして、神樹ちゃんの視界に入ったら、問答無用で撃ち落とされるとか……そう言う事だったりする?」


 と言うか、話が繋がったと言うべきだな。

 以前、街のものから聞いていた話と、今の状況がようやっと合致したと言ってよかった。


「ああ、神樹教会の者達の話だと、お母様は度々宇宙へ向けて、γ線レーザーを乱射する事があったようなのだ……。そう言う日は神樹の怒りの日と呼んで、皆は家に閉じこもり、神官たちは怒りを鎮める祈りをささげていたと言う話だ。そして、神樹教会の天体観測を趣味とする者の話だと、そんな翌日の夜は瞬かない星があからさまに減っていたそうでな……。要はお母様は炎神が感知圏内に入り次第、問答無用で駆除しているのだろうな……実際、お母様……その辺りは、どうなのだ?」


(……何の話なのだ? まぁ、我が自動防衛システムは基本的に敵意に反応するようになっているのだ。確かに、言われてみればたまに宇宙へ向けて、γ線レーザーをばら撒く事もあったな。まぁ、別に宇宙へ向けて放つ分には、フルパワーで撃っても問題はないであろう?)


(まぁ、そりゃ確かに問題はないだろうが……。そんな自動防衛システムなんぞがあったのか。と言うか、よくそんな言葉を知っていたな)


(ああ、私もむすめの知識共有で日々学んでいるのだ。我が自動防衛システムは、基本的に一度でもやられたら、絶対やり返す仕様なのだ。もちろん、地上への攻撃はロックしているのだが。空や宇宙への攻撃は禁じておらんのでな。そもそも、一度でも攻撃してきた相手を問答無用で敵とみなして、撃ち落としても問題ないと思うのだ……)


 ……なんと言うべきか。

 恐らく学習型の自動迎撃サブシステムのようなものが組み込まれているのだろうな。


 そして、サブシステム側では、宇宙の炎神は敵対者登録されていて、観測し有効射程距離に入ってきたら、迎撃する……乱射しているようなケースでは、恐らく炎神側が徒党を組んで、強行大気圏突入を試みようしたのだろうな。


 そして、幾度となく返り討ち……と言うことか。


(事情は解った。それにしても、お母様もやるではないか。少なくとも宇宙にいる炎神の眷属共は、恐れをなして近づこうともせん。これぞ、抑止力と言うものよな)


(まさか、あれらも炎の精霊だったのか? ははは、我がγ線レーザーで薙ぎ払っただけでまとめて消し飛んでしまう……そんな脆弱な存在が精霊のはずがなかろう。アレは単なるデブリみたいな天体現象なのだ)


 ……なるほどな。

 この様子では、まるで相手になっていなかったのだろうな。


 と言うか、お母様は宇宙空間における極大出力レーザーの恐ろしさを解っていない。

 レーザーと言う物は、光と同速なので基本的には回避は出来ない。


 撃たれたのが見えた時点で、当たっているのだからむしろ、それが当然なのだ。


 まぁ、ユリコ殿は生身でレーザー狙撃の直撃を受けて、AL皮膜が絶えている間に回避するとか、人外レベルの真似をやってのけたり、どう考えても見えるより早く回避行動に移ることで、レーザー攻撃をも軽く無効化したらしいのだがな。


 ……そう言う人外は滅多に居ない。

 と言うか、居てたまるか。

 

 レーザーは基本的に装甲で耐え凌ぐ以外に対処方法がないのだ。


 まぁ、今でこそ対レーザー防御手段として、ALスモークや、ミラー装甲だの色々と対抗手段が生まれた事で、小中口径レーザーはほとんど役に立たなくなったのだが。

 その辺りは単純に、核融合ジェネレーターでは、パワー不足になってきただけの話ではあるのだ。

 

 対消滅反応の副産物の極大出力γ線レーザーなんぞ撃たれたら、その時点で我が帝国軍の宇宙戦艦だって軽く沈む。


 そんな物を乱射されるとなると、炎神もいくら数で押してもどうしょうもなかったのだろうな。


 恐らく、地上に降りてきているのは、お母様との激戦を生き残って、鍛えられた選りすぐりの精鋭……或いは進化個体なのだろう。


 宇宙にいるのが、お母様にとってまるっきり雑魚扱いで、まともに敵として認識すらされていないのも、そう言う事なら理解できる。

 

 なるほど、この星系の勢力図が読めてきたな。


「ユリコ殿……ひとまず、この惑星の衛星軌道上の制宙権は、少なくともお母様の視界の範囲内……恐らく10光秒圏内あたりまでは気にしないで良さそうだ。つまり、この惑星の制宙権はお母様が支配権としている……そう考えていいだろう。ちなみに、これがお母様の放つγ線レーザー砲の最小限に見積もった威力だ」


「ナニコレ? 重装甲型宇宙戦艦を艦首から艦尾まで貫通する軌道要塞砲の一点集中射撃と同等以上……こ、こんなバカ威力なわけ?」


「まぁ、私がざっと計算した数値なのだがな。考えても見るが良い……対消滅反応の副産物のγ線レーザーなのだぞ? そんなもの……生半可な防御なんぞ、通じるはずもなかろう」


「……うーん、これって無造作に収束させてぶっ放したとか、そんな雑なやり方でこれなんだよね? 確かに、これを主砲にした宇宙戦艦とか作れたら、なんとでもなりそうだね」


「そう言うことだな。まずは、この惑星上の精霊共を根絶やしにした上で、いずれこちらも宇宙戦艦を建造した上で、この星系から奴らをまとめて駆逐する……その上で迎えを寄越してもらおう。これでどうだ?」


「……ええっ! そうなると、アスカちゃん達だけで、この星系の火の精霊をまとめて相手取るっていうの? さすがに、それは厳しくない?」


「元よりそのつもりだったのだから、そこは気にしなくても構わん。基本戦略はそれで行くとゼロ陛下にお伝え願うぞ。……むしろ、私としてはそちらの方が心配であるぞ……なにせ、割りと何もかも中途半端な状態で投げ出してしまったようなものだったのだからな。こちらと違って、今もラースシンドロームの対抗手段もない……状況としてはそちらの方がよほど厳しいだろう」


「さすが、判断に迷いってモノがないねぇ……了解したよ。確かに、ラースシンドローム対策も進んでないしねぇ……。では、仰せのままに! 情報提供感謝感激っ! と言うか、アスカちゃんの話だけで、ずいぶん対策が進むと思うよ」


「うむ! 確かに私の持つ情報を持ち帰ってもらえれば、帝国の技術者達もラースシンドロームへの対抗手段をいずれ編み出すであろうからな。我が配下はその程度には有能故にそこは心配しておらんぞ」


「うーん、確かに……ヴィルさんの話だと、とにかくマナストーンさえあれば、なんとでもなるみたいなんだけどね。逆を言えば、マナストーンが無いと、こっちじゃラースシンドロームの駆除もままならないのよ……。でも、ラースシンドロームの罹患者を助けられるって情報も凄いよ! 今のところ、一度罹患したら、隔離して死ぬのを待つしかないとかそんなんだからねぇ……」


「そうか……状況はあまり変わっていないようであるのだな。だが、マナストーンについては、色々と可能性はありそうだし、いずれ我が手にて送り届けさせてもらうとする。それよりも、もう一つの問題……銀河守護艦隊は……ハルカ・アマカゼはどうするのだ? あれは難敵であるぞ?」


「そこはそれ……戦ってケリを付ける! それだけだね……。幸い再現体にとっては、今のわたし同様に、死は絶対のものではないしね。ゼロ陛下達が順調に外堀埋めてってるから、わたしが仕上げに一戦交えて、速やかにもう一度あの世にご退場いただくまでの話だよ。実はもう、ハルカ提督の排除は確定路線なのよ」


「まさか、あの銀河守護艦隊をそこまで追い込んでいるというのか……。だが、ユリコ殿達ならやってのけるのであろうな……」


「まぁ、そう言う事だね! 一応言っとくけど、君らが向こうの根拠地を吹き飛ばしてくれたおかげで、銀河守護艦隊は兵站に致命的な問題が出てるみたいなんだよね。はっきり言って、もう以前ほどの戦力は残ってないんだよ。反面こっちは得意の長期消耗戦に持ち込めた上に、アスカちゃんが作ってくれた秘密工廠をフル活用することで、まさに生産チート爆発中! そんな感じなのだよ」


 なるほどな。

 そうなると、私が建造を命じていた対アマカゼ・ハルカ用の決戦兵器も、あちこちの資源星系に建設するように仕組んでおいた秘匿工廠群もちゃんと見つけ出してくれたのだな。


 確かに、国家レベルの戦力の激突で、長期消耗戦ともなれば純粋に国力の勝負となる。

 国力勝負で銀河帝国に敵う勢力なぞ、今の銀河宇宙の何処にも存在しない。


 だからこそ、銀河守護艦隊も短期決戦に拘っていたのだが……結局、それに失敗したと言うことなのだろう。

 

 ならば、勝負はもう見えていると言ってよかった。


「……そうか。我々の戦いは……無駄ではなかったのだな。だが、そこまで兵站に問題が起きていたなど、にわかには信じがたいのだが……。確かに私の配下が重力爆弾で銀河守護艦隊の根拠地を吹き飛ばしたのは事実だが、兵站と言えば軍の生命線であろう。バックアップの一つや二つくらい普通、用意するものだろう?」


 たった一箇所の補給拠点が潰されただけで、全軍の兵站に致命的な問題が起きる……。

 そんな冗長性に欠ける軍勢など普通にありえん。


 ゲリラ組織だって、拠点や補給ルートは複数用意するし、星間輸送業者や犯罪組織でもそれくらいのことは普通にやっている。


 だからこそ、あれは戦略的には、せいぜい時間稼ぎ程度の効果しか無く、そんな事の為に、優秀な特務部隊の兵達を徒に失った事を私は心から悔やんでいたのだ……。


「それがねぇ……銀河守護艦隊って各艦のカスタマイズが進みすぎてて、統一規格ってもんがないから、元々兵站に問題を抱えてたんだってさ……。その上で予想以上の長期戦になった事と、唯一の拠点の完全破壊で、物資欠乏に陥って稼働隻数も激減……実際、銀河守護艦隊も100隻単位で動かせるはずだったのに、アスカちゃんが戦った時点で、実働部隊は50隻程度と中途半端な数になってたでしょ?」


「確かに……。こちらはほとんど損害を与えていないのに、一戦交えるたびに向こうの艦艇数が減っていって、完全に舐められている……そう思っていたのだが。そうではなく、向こうとしては、実働戦力を削らざるを得ないほどに、兵站に問題が起きていた……そう言うことだったのか?」


「まぁ、そう言うことだね。要するに、アスカちゃん達は戦場では負け続けてたけど、戦略的には勝ってたんだよ。だからこそ、ハルカ提督も首刈り戦術……皇帝を倒す事を最優先目標にしてたって訳」


 要するに、時間稼ぎと言う方針は間違いではなかったのだ。


 もっとも……恐らく私は、判断を間違えた。

 あの場面で、私一人でも何が何でも逃げのびる……それが正解だったのだ。

 

 事実、あの決戦の前に、我が艦隊の若手将兵の大半を強制的に潜航艦で脱出させていたのだが、そのほとんどすべてが戦場からの離脱に成功しており、その中に私自身も紛れていれば、脱出に成功した可能性が高かったのだ。


 事実、配下からもそのように進言を受けており、脱出を命じた将兵たちも、それまで渋っていたのだが……。

 そう言う事なら自分達が護衛兼囮となると言う事で、むしろ、その役を喜んで引き受けると言い出し、場の空気としては、そうするのが当然と言った話になりかけていたのだ。


 だが、ハルカ・アマカゼは我が盟友にして、家族同然だった皇帝達の仇であり、その目前から逃げの一手など、私のプライドと矜持が許さなかった。

 

 せめて、一矢報いなければ、ならない……そう思っていたのだが。

 それは……間違っていたのだ。

 

 帝国軍は元々逃げることも、退くことも恥とは思わないのだ。


 あの場は、後背を脅かした艦隊に全兵力を叩き込み、アルヴェールへの強行突破を狙う。 

 或いは、配下の者達やAI達の進言通り、脱出する将兵達に紛れ込んで恥も外聞もなく逃げ延びる……。


 わざわざ、ハルカ・アマカゼに乗せられて、正面から決戦を挑んだと言う時点で、向こうにとっては、しめたもので……事実、我々は完封負けを喫してしまった。

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新連載始めました!! アスカ様の前日譚! 「銀河帝国皇帝アスカ様 零 -ZERO- 〜たまたま拾った名無しの地味子を皇帝に推したら、大化けした件について〜」 https://ncode.syosetu.com/n1802iq/
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