魔獣の卵
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あたり一面に血の匂いと、やたら焦げ臭い匂いが立ち込める中、大きめのタープが張られている。
そこで水魔法の使える救急班が怪我をした騎士達の治療しているのを横目に見ながら、地図を広げるストレリチア将軍。
幸い、重傷者も死人も出ず、怪我と言っても、捻挫や軽い打ち身、かすり傷程度で済んだらしいので騎士団の調査は続行らしい。
「ダンジョンは恐らく森の中心付近ですな。現在駐屯地はココになります」
簡易の組立椅子に座るミリアンヌとミゲルそして騎士団長と将軍。
テーブルの真ん中に置かれた地図を指差すと、
「報告では森のこの辺りから先程の魔獣が現れたとの事です」
「森の端か」
「ええ。瘴気が無くなり、雌の脅威が薄れたのに気が付いて餌を探しに出てきたのでしょうな」
「他に雄の個体はいないのでしょうか? 」
ミリアの質問に団長が答える。
「現在、探査魔法を使える団員達が調査中ですのですぐわかると思います」
騎乗した騎士達があちこちから帰ってきて副団長に報告しているのが見える。
「いやあ、流石は大神殿の秘蔵っ子とでも言えばいいのでしょうか。それともアークライド侯爵家とでもいいましょうか、素晴らしい魔法でしたな。浄化も攻撃も・・・」
思い出してぶるっとなっちゃうストレリチア将軍と団長殿。
「あ、攻撃魔法は魔獣だったので強打になったのでしょうね。通常ならあれ程は効かないと思いますわ」
可愛く小首を傾げオホホと笑うミリアンヌ。
オジサンホイホイが発動して、思わず鼻を押さえる将軍と騎士団長であった。
××××××××××
隅っこに椅子を移動させてちょこんと座り、次の行動待ちのミリアンヌ。
しかし、何だか心がソワソワしてしまい落ち着かない。
『ウ~ン、何でしょう魔力の使いすぎでしょうか? 』
道中でもずっと感じていた違和感が段々半端なく強くなっていく気がするミリア。
首を捻ってうーん?と考えていると、タープの外から副団長が報告にやって来た。どうやら大型の魔物の反応は無いらしいので、結界石の取替を優先するらしい。
「いつ孵化するのかが分からんからなあ。森に入るのは危険なんだが・・・」
「ねえ、ミゲル様」
「ん? 」
「メルちゃんの卵の時も魔力を込めた拳が全く効かなかったでしょう? 」
「うん? ああ、そう言えばそうだな」
「あの時の方法じゃ駄目ですかね」
「・・・成程。しかし、あの時は三人がかりだったろ? 卵は一個だったし」
「けど、魔王と魔獣では全く魔力の強さがケタ違いのはずですよ」
「・・・フム。確かに。やってみるのはありかもしれんな。このまま孵化したらスタンピードを起こしかねんしなあ」
「魔獣の暴走は困りますよねえ」
頬に手を当てるミリアをじーっと見るミゲル。
「どうかしましたか? 」
「お前、体調悪くないか? 顔色が良くない気がするんだが」
「? 」
首を捻って考えるミリアンヌ。
「特には何も・・・そう言えば何かしら違和感があるような、ないような・・・」
「違和感? 」
「はい。でもよくわからないんですよねー 」
手をグーパーし、それを見る。
「動きも体調も万全だと思うんですよね。昨日の晩はグッスリ寝ましたしねえ・・・」
「ふーん。まあいい。何か気がついた事があったら言えよ」
何となくミリアの頭をナデナデする王弟殿下。
「はあい」
気持ちがいいのでつい目を細めてしまうミリアであった。
隅っこでイチャコラ・・・
無自覚って・・・




