走る飛ぶ・・・戦う?
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「しまった! ミリーの予測が当たっちまったか? 」
殿下と将軍が身を翻して、悲鳴の聞こえた方角に駆け出した。
続けてミリアも駆け出した。
リーチの違いだろうか? 殿下はっや! あ、ひょっとして身体強化? ズルい!
はた、と気が付き急ブレーキをかけるように止まると唐突にロッドに跨がるアークライド侯爵令嬢。
「うりゃあー! 」
おじいちゃん仕込の風魔法と身体軽量化を使い
「魔女の宅●便じゃあ~! 」
空中に浮いて爆走した。
後ろで将軍が何かを叫んでいるが気にしない。
「お、殿下みっけ! 」
急降下でミゲルに近づき
「ヘイ! 乗ってかない? 」
「お、それいいな」
走りながらヒョイっと飛び乗る王弟殿下。
ナンパ? した殿下を後ろに乗せて急上昇し、現場に向けて猛スピードで空を飛ぶ。
「ミリー! もうちょい右だ」
「ラジャー! 」
指示通り右に舵を切ると叫び声や興奮した馬の嘶きいななきが大きくなり、剣撃の音と混じって換気扇が回っているような変な音がする。
「絶対に雄ですよ。カマキリの羽音! 」
「お前・・・まあいい、急げ」
「ラジャー! 」
森を過ぎ野原の真上に出ると負傷したらしい騎士達が目に入り、巨大なカマキリが軍馬を追いかけているのが見えた。
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全長は5メートル位だろう。横っ腹に黒くタールを塗り付けたような傷痕がある個体だ。今にも軍馬を鎌で捕まえようとしている。
馬は怯えて暴れるが、鐙にカマキリの後ろ足が引っかかっている。
騎士達がロープや網で魔獣を捕まえようとしたのだろう、ボロボロになった残骸が身体のアチコチに巻き付いている。
「あれ、あの黒いのはきっと雌にヤられた傷ですね。馬が! ヤバイ」
「お前詳しいなあ」
「殿下行きますよ! 」
「え? コラおい! よせ!」
ロッドに乗ったまま魔獣の頭上に突っ込んだ。
「うらぁ~! 虫っ! 何やっとんじゃあー! 」
ミスタリーレ製のロッドの先のチャクラムがカマキリの頭頂部、丁度、目の間あたりにぶっ刺さる。
「殿下! 馬っ! 」
「何でだっ! 」
殿下がヒラリと宙返りをして着地と同時に腰のサーベルを引き抜き、馬の鐙の吊り革を断ち切る。
綱引き状態になっていた馬とカマキリがバランスを崩し、馬は『ドゥッ』と音を立てて倒れたがカマキリは尻尾を真上に上げて踏ん張った。
カマキリの頭の上でロッドを引き抜くと青黒い体液が三角形の頭の脇にある眼に飛び散り、恐らく視界が急に悪くなっせいだろう、ゆっくりと三角頭を傾げると鎌を目の辺りに振り上げて拭うような仕草をする魔物。
軍馬はその間に立ち上がり、慌てて走り去る。
ヒラリと地面に飛び降り、引き抜いたロッドを両手に持ち真っ正面に構えて仁王立ちになる侯爵令嬢ミリアンヌ。
「キサマ、馬を食べるな! 許さーん! 」
「ミリー落ち着け! お前が喰われるっ! 」
カマキリの魔獣を追いかけて来たのだろう、騎士団員が後方から集団で走って来ているのが見える。
「魔物は、聖属性魔法に弱いんじゃああああぁ~! 」
ミリアがそう叫びながらロッドを両手で天に向かい持ち上げると上空に金色の巨大魔法陣が展開した。
「喰らえぇ~! ビクシオマァ!」
魔法陣から光の矢がまるで花火の様に広がり一度止まったかと思うと、まるで追尾レーザーの様にうごめく魔獣目がけて次々と襲いかかる。
光の矢は魔獣の胴体に次々と穴を開け頭を吹き飛ばし、脚は次々と折れて羽がもげて砕け散っていく。
「うわあ・・・俺、お前を絶対に敵に回したく無いわ~・・・ 」
ミゲルは誰に聞かせるでもなく光り輝く聖魔法が暴発するのを見ながら呆然としていた・・・
勿論魔獣の後方からこちらに向かっていた騎士達も、大口を開けて空に広がる光の饗宴と追尾レーザーを声も出さずに見つめていたのであった・・・・
だってお馬さんカワイイもんね~