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転生した元社畜男子は聖女になって人生逃げ切る事を諦めません!  作者: hazuki.mikado
ニ章.転生聖女と転生聖王
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出発の朝

お読み頂きありがとうございます!


 「本日の討伐隊前に! 」



 お仕着せを着た文官が騎乗した騎士達の間を走り回っている―名前と所属の最終確認である。



「今日は騎士団と一緒に行動だからイイ子で俺にくっついとけよ」



 艷やかな栗毛の馬に跨がるミゲルの前にストロベリーブロンドをポニーテールに括った天使がちょこんと座っている。



「馬に乗れない訳じゃないのに~ 」



 若干ぶーたれる侯爵令嬢ミリアンヌだ。


 今日は若草色のシャツに紫色の乗馬服である。上着と同色の乗馬用キュロットとショートブーツの上からチャップスを履き、馬にも歩きにも楽な装い・・・


 流石、侍女頭マーサのチョイスはグッジョブだ。


 首に巻いた白いレース付きのスカーフはお誕生日に貰ったブローチで留め付けてある。



「魔獣に慣れた馬の扱いが出来ねえんだから仕方ないだろ」



 クックックと頭上で笑われてしまう。


 因みに今日の殿下の出で立ちはいつものロイヤルブルーの騎士服とハーフ丈のマントである。



「まあ、将軍に同行のお許しを貰っただけでも良しとしようや。ミリーは初めてなんだからさ」


「まあ、そうなんですけどね」



 首元の鎖を人差し指で触りシャラシャラと音をさせる。



「こないだ送ったブローチは着けてるか? 」


「はい。スカーフを留めてます」


「ソレもミスタリーレだから無くさんようにな」


「えぇ~知ってたら置いてきました」


「お前の魔法の補助をして尚且敵からの防御もしてくれる優れものだぞ。着けて来なくてどーすんだよ」


「いえ、家宝に・・・」


「使え」


「ハイ・・・」



 いい物を貰ったら使わずにしまい込んで百均で安物買いをするタイプのミリアである。


 馬が呆れたように耳をこちらに倒して



「ブルルルル」



 と嘶いた。



××××××××××



 騎乗の魔物討伐隊は、猛スピードで王家の直轄地の端にある国境付近にまで駒を進める。


 ミリアが乗っているためミゲルの馬は最後尾を駆けているが、全く余裕の表情をしているようだ。


 但し、馬と馬主だけ。


 ミリアは目を回さないように必死である。



 自分の馬術なんか全く及ばないのを最初の五分で思い知らされた気がする・・・



 なんてったって舗装された王都の道なんか、あっという間に終わってしまい今や道なき道を土煙を上げながら猛スピードで爆走中だ。


 

 舌を噛まないように口を引き結ぶのに集中しないとやばすぎる。



 速攻で部隊のお荷物になりかねない。



 第二騎士団は貴族の子弟で構成されている為、魔法が使える騎士も多く魔獣討伐に駆り出される事が多い。ストレリチア将軍閣下は最前線に常にいたい人物で、第二騎士団の詰め所にほぼ居着いているらしく今日の討伐にも参加するらしい。


 ミゲル自身は騎士団と一緒に魔獣討伐に参加することはほぼ無く、通常は単騎で遠征すると言っていた。



「気を遣うのが面倒くさい」



 とため息をついていたが、魔獣を見たこともないミリアを最初から単騎討伐に連れて行くのもどうか、という事になり今回の討伐に参加させて貰うことに決まった。



「まずは魔獣を見てからだなあ」



 ニヤニヤ顔のミゲルにちょっとだけ反抗しそうになったが、所詮は初心者である。


 無駄に逆らった所で良いことなど無いだろうと大人しく従う事にしたミリアンヌだった。



××××××××××



 早朝に王城から出発したが、現在太陽が真上近くに来たので昼の小休憩となる。


 角笛の音がして、ほぼ走り詰めだった隊列はゆっくりと速度を落としながら綺麗な小川の側まで来ると歩みを止めた。


 彼方此方から馬の嘶きが聞こえ、隊列の点呼が聞こえる。


 まるで昔の戦争映画の中にいるようである。



「凄いですね。いてて。まるで中世の戦争映画みたいです」



 馬からぴょんと飛び降り気持ちよく伸びをした。若干お尻が痛いのは内緒である。



「まあ、そうだな。魔法がある以外は似たようなもんだろう」



 ミゲルが馬の手綱を引きながら小川に近寄ると、栗毛の馬は嬉しそうに水を飲み始た。



「それより、ミリーお前背が伸びたな」


「え?そう言えば」



 ブラウスの袖口のレースから覗く手首が以前より露出が多いような?



「ん~~ 」



 小川の岸から此方を向いて全身を見ながら、



「おお、足が長くなってる? 気がする」



とのたまうミゲル殿下。



「あとは胸が板から丘に成長したな」


「板って・・・失礼な」



 ブウっと膨れる侯爵令嬢。



「怒るな怒るな、成長しねえとヤバいだろうが」



 ゲラゲラ笑う王弟殿下と益々膨れるミリアである。



「バルの時は俺の胸下辺りしか頭が来なかったが、今は丁度胸の辺りだからな。随分伸びた気がするなあ」


「ウ~ンそうでしょうかね」



 自分では変化はさほどわからない。


 侯爵家の侍女達は優秀でお嬢様の成長に合わせて衣装をせっせと新調しているのだが、本人は全くもって気が付かないのは生来の大雑把な性格にきっと由来しているのだろう・・・・



「お前の侍女殿に俺は同情するよ」



 はあ~とため息をつくミゲル。



「?」



 小首を傾げるミリアンヌである。


魔獣遠いな・・・

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