送り主は誰?
ミスタリーレのバンツなら火傷も防げたかも(つ✧ω✧)つ
その日は朝からよく晴れていた。
誕生日パーティーは家族と侯爵家の使用人全員で祝ってもらい、くすぐったい一日を過ごすミリアンヌである。
「ロッドだ・・・」
そう、お誕生日プレゼントにミゲルから届いたのは杖本体に精密な彫刻を施し、頭頂部に一対の羽根とその間に薄い厚みの大きな輪がついた魔法の杖だった。
うっすらと虹色を帯びた銀色に輝く杖は希少鉱石のミスタリーレという金属で出来ているらしく、軽くて丈夫らしい。
ミリアが持つと頭一つ分位長く持ちにくいかと思ったが、羽のように軽い。
「凄いです! 姉さま! ミスタリーレの杖ですよ! いいなあ~ 僕なら剣がいいですけど。でも絶対世界中探してもコレ二度と手に入りませんよ! 」
剣ヲタクのダニーは大興奮である。
「武器・・・よね? 」
「でも、彫刻が蔓薔薇と小鳥ですごく綺麗ですよねえ~ 」
ミリアンヌママとマーサがうっとり見つめる。
「ミスタリーレは魔法の伝達が良い上に拡大もできると言われる幻の金属だよ。本当にミリアは王弟殿下に可愛がられているねえ」
流石のミリアンヌパパも、ううむ、と感心しているらしい。
「ミスタリーレは国宝級の値打ちがあるんですよ姉さま! 」
「そんな国宝級とか貰っちゃっていいんでしょうか・・・」
戸惑いを隠せないミリア。
「姉さま、こっちの箱は? 」
小さなミニバラのブーケが濃い青のリボンで結わえつけられている大きな箱を指差すダニエル。
「お爺ちゃんからのプレゼントだよね」
ガサゴソと包を開けると、白い虹色の光沢を宿した美しい布が出てきた。
「あれ、コレってお爺ちゃんが。よく着てる服と同じ生地だ? 」
「「「え?」」」
「すご~い。ブラウス? スカーフ? ん? 何かなコレ?」
ズルっと引張り出す。
めちゃくちゃデカい一枚布・・・
「あ、コレ手紙が入ってる! あれえ。何でマーサ宛なの? あ、ブローチとベルトもある」
「へ? 」
ミリアが引っ張り出した神殿のマークが入った封書の宛名が何故かマーサ宛。
銀色のブローチの中央には神殿の百合の花のマークが入っている。
「マーサ、ハイ」
「・・・はあ」
封書を開けて手紙を読みながら若干手が汗ばむマーサ。
「お嬢様コレ、この布。先程のミスタリーレを織り込んだ聖女の正式お衣装らしいです。着付け方法が私宛で入ってました・・・なんか、柳月のパーティーに着るようにって書いてますよ」
「「「「・・・」」」」
家族と一緒に目が点になるミリアンヌ。
「着付けの練習しとくようにだそうです」
なんだか聖女認定ぶっ飛ばして外堀だけが固まって行く気がして、青ざめるミリアであった・・・・
「国宝級のお衣装なのね・・・」
ミリアのママがぽつっと呟いた。
「成程、コレが花囲いか・・・」
ウィリアムがニヤっと笑ったのを誰も気が付かなかった。
××××××××××
「なあ、ジジイあの服の下って何着るんだ? アレだと横にスリットがくるだろう? 足が丸見えとかになりそうなんだが」
神殿のお爺ちゃんの私室でメルと一緒に紅茶を飲むミゲル。
「ああ、あれ? 昔はすっぽんぽんだったみたいよ~ 」
「ブホッ」
紅茶を思わず吹き出す王弟殿下。
「だからさあ、基本的に百年以上前のデザインだから。あってもフンドシじゃないかしらねー・・・ まあ侍女ちゃんに適当に下着は付けてねってお願いしてあるわよ」
「俺の名前で送るとヤバいっていうのはそういうことだったのか」
「そうそう、侯爵がお怒りモードになったら困るじゃん」
「そういや、陛下と宰相がアークライド侯爵を異様に怖がるのは何でか知ってるのか? 」
首を捻ってウ~ンと思いだす仕草をするお爺ちゃん。
「あー、多分だけどお。若い時にミリーのママに横恋慕してた貴族子息の股間に雷魔法を撃ち込んだあれじゃないかしら? あの時は王宮のパーティーだったからフィルも見てたはずだしねえ。子息のご子息が大火傷で不能になったんじゃなかったっけ? 」
「・・・それは怖いな」
「まあ、結構な無作法者で悪評高い奴だったから、アークライド侯爵はお咎めナシよね。犯人は分からずだったしねえ」
「どういう事だ?」
「彼、無詠唱で魔法が使える天才でねえ、並の王宮魔道士じゃ歯が立たないくらいなのよね。で、現場でも指一本動かして無いから周りは誰がやったか分かんないのよ。王宮魔道士が痕跡を調べたらしいけどねー。その伯爵子息は色んな爵位の貴族子女やアチコチの平民の婦女子に対する名誉毀損とわいせつ行為で訴えられて社会的にサヨウナラよ。種もサヨナラしたみたいだけど」
顔を青くして股間を押さえ、
「火傷・・・子種もサヨナラ・・・」
思わず呟いた王弟殿下であった。
ミスタリーレ所謂ミ●リル銀てモンですね。
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