お誕生日のプレゼント
ミリアンヌ残念な子っ!
何だか気の乗らない王家主催のお茶会の予定が柳月に入ってしまいテンションはだだ下がりではあったが、流石にハンノキ月に入ると自分の誕生日が近づくにつれてウキウキしてきたミリアである。
この世界のお誕生日のお祝いは未成年者に限っては、ほぼほぼ家族と過ごすのが主である。
後はごく親しい友人や親戚らからプレゼントやカードが届く位の慎ましやかなもので、実に日本のPTA受けしそうな設定である()
その代わりと言ってはなんだが、成人後は貴族なら婚約者同士、平民なら恋人同士や友人同士で酒場やレストランでパーティー、自宅でのパーラー等で派手に過ごしたりするのが主流だったりする。
まあ、その辺りも現代日本事情を反映しているのかもしれない・・・
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ミリアンヌは今回の誕生日で十五歳。
社交界デビュタントは終えたが後二年は自宅で慎ましく誕生日を迎える予定だ。ていうか本人は一生このまま家族と過ごしたいと思っているフシがあるのだが、それはさて置き・・・
「お誕生日のプレゼント? 」
誕生日前日、父の執務室である。
「はい」
「どうしたの? いつもは何のおねだりもしないのに? 」
ちょっとビックリの表情のウィリアムである。
「どうしてもお願いを聞いてほしいのです。実は・・・
」
「うん」
「あのう、ミゲル様と・・・ 」
ちょっとだけ頬を染めてモジモジとする我が娘。
「・・・うん」
「え~と・・・ 」
「殿下とどうしたの? 」
ちょっと前のめり気味になるパパ。
「実は修行の一環で」
「? え? 修行って」
「魔物狩りに行きたいのです! 許可をして下さい! 」
「・・・はぁ」
武闘派一直線? の娘に若干複雑な顔のウィリアム・・・
「駄目ですか? 」
「うーん、殿下と一緒なら良いかな」
「ホントですか! 」
ぱあっと笑顔になるミリア。
「許可しよう。でもお誕生日のプレゼントなのにソレだけで良いの? 」
「はいっ! ありがとうございます、父様。行く日が決まったらちゃんとお知らせしますねっ」
クスクス笑いながら
「ホントにミリアは欲がないねえ~ 」
と、呟きながら元気よく執務室を出ていく娘を見送るアークライド侯爵であった。
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東の離宮にあるミゲルの執務室に薄緑色の封蝋が押された魔法便が閉じたままの窓をすり抜けて飛び込んできた。
「薄緑色はアークライド侯爵家の色だな」
ミゲルはキラキラと光りながら執務机の上にふんわり落ちてきた魔法便を広げる。
折り紙のように一枚の便箋に文字を書き封蝋で留めて封書のようにするのが魔法便の特徴である。
文字を書くインクも特別製で、読み手を認識して指定した相手がキチンと読み終わり、魔法を流すと五分後には文字が消えてしまうモノである。
因みに返事を送るときは送られてきた物を送り返すのが礼儀となる。
「ふーん、アイツ侯爵に許可を求めに行ったのか。やっぱり今生でも真面目な奴だな。て、誕生日プレゼントがそれかよ」
フフッと笑い薄緑色の封蝋を剥がし、文字の消えた罫線の上に羽ペンにインクを浸して文字を書き込み、届いた時と同じ折り方で畳み直すとロイヤルブルーの蜜蝋を垂らして左手の指輪を押し付け、封蝋を施す。
「宛先はウィリアム・アークライド侯爵」
と一言唱えると、王族の封蝋を施した魔法便はキラキラと残像を残して消えてしまった。
侯爵当主の執務机に現れた魔法便を読んだウィリアムは
「ほう。流石は殿下だ」
そこに書いてある文字を読んで、微笑む。
『侯爵家の大切な花は森から持ち帰る時に花びら一つとて傷付けずにお返ししましょう。
柳月の王宮の花園では風に当たり折れぬよう、薔薇の棘に当たらぬよう花囲いを施すとお約束しましょう』
周りの気遣いに全く気が付きそうに無いのは前世も今生も一緒のミリアンヌである。
多分・・・
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