聖女刮目する
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「王・家・の・茶・会・だ・と? 」
「お茶会の招待状だわ」
「お茶会の招待状ですねえ」
「何故ですか? 」
アークライド侯爵家のパーラーで会話する家族四人と壁に擬態化する執事とメイド達。
因みに出来る侍女頭マーサは奥様の後ろに立って目だけは大きくなっているが、口は出さない。
夕食後の憩いの一時を家族水入らずで過ごすのがアークライド侯爵家の日常的な習慣なのだが、今日に限っては昼過ぎに届いた王家からの婚約者選定の為の招待状がテーブルのど真ん中に置かれていて、ウィリアムの顔には例の陛下がブルっちゃう笑顔が貼り付いており、不穏な空気がパーラーに満ちている・・・
「王宮の春の庭園だわ」
年中無休で春の女神の様な美貌の母が頬に手を添えて眉を寄せながら、招待状に目を通している。
「婚約者選定の為のお茶会って書いてますよ姉上」
母の横から招待状を覗いていた金髪巻毛の天使が目を見開いて姉の方を向く。
今まさに、イチゴのプチフールを口にしようとしていた侯爵令嬢ミリアンヌ。
驚いて、目を倍のサイズにまでおっ広げて思わずポロッと小さな四角いケーキを取り落とし、あわや床にタッチダウン寸前! の所ですかさずキャッチした。
「あっぶな! 」
「お嬢様・・・」
思わず額に手を当て小声で呻くマーサ。
「どうしてですか? 確か婚約者候補の選定は終わっている筈ですよね」
小首を傾げ困惑顔のミリアンヌママ。
「確かに。だが・・・」
珍しく難しい顔をするパパ。
「何かしら不都合があったのでしょうか? 」
次期侯爵の顔をする弟を見ながらカスタードクリームで汚れた指をナフキンで拭うミリア。
「父様。私の記憶に間違いが無ければ婚約者選定のお茶会は、もう既に決まった候補者の方々が参加するものではなかったでしょうか? 」
「まあ、そうだね」
「僕は婚約者候補という制度が法律書には載っていなかったと記憶しています」
「そうだね。婚約者候補という制度はない。アレは貴族院と王家の話し合いで決められる慣習だからね」
「そういえばそんな風にお爺ちゃんが言ってた気がする・・・制度じゃないって。でもずーっと続いてるから、そのままだって言ってたような・・・」
そう、ゲームでも婚約者候補筆頭から婚約者になった途端、ティリア嬢が派閥の子飼い令嬢達を使ってミリアンヌを学園から排除しようと動き王子に婚約破棄をされてしまうというテンプレ的な流れだったのだ。
しかし、今の脳筋ミリアは学園には通わずに大神殿に通っているため全く関係のないお話である。
「どちらにせよ、王家からの招待を断るという事はできないね。貴族である以上参加必須だ」
ニッコリと笑うウィリアムであった←
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「両陛下、申し訳ありません。私の落ち度です」
謁見室で膝を折り頭を下げるクロードと、その横で雨に打たれた子犬の様にションボリしているアレク王子。
「まあ、送っちまったもんは仕方ないだろ。元々婚約者候補ってのは、タダの慣習であって制度じゃないんだから」
国王陛下の横に立っていたミゲルがこの場の全員に声をかける。
「そうだな。ミゲルの言う通り、法律では制定されていない貴族院と王家の暗黙の了解の慣習だからな・・・しかし全員とは・・・困ったなあ」
国王陛下も頭を抱える。
「婚約者が出来ちまってる令嬢達も居るんじゃ無いのか? 」
お口の素敵な王弟殿下がクロードに問いかける。
「分かりません。取り急ぎ調べてはいますが、恐らくは何人かは・・・」
下手すれば王家が婚約成立している令嬢に横恋慕して待ったをかけているようにも取られかねない・・・
「ううむ。そもそも春の庭園だけでは全員が入りきれぬのでは無いか? 」
額を抑えながら考える国王陛下。
「下手すればデビュタント並の人数ですよ。お茶会の対象は同い年ばかりでは無いですから・・・」
王妃が扇の向こうで青い顔をしながら続ける。
「婚約者を絞るというのは、双方の経済負担を軽くする為の苦肉の策でもあるのですよ。アレクが法律を正しく覚えていた事は確認出来て良かったのかもしれませんが・・・」
母である王妃の言葉に益々ションボリのアレク王子。
「申し訳ありません・・・ 」
「王家が一回出しちまった招待状をナシには出来ん。又婚約者が既に内定していた令嬢達にも申し訳が立たん。分かるなアレクシス? 」
「はい、叔父上」
恋敵?でもある叔父に言い聞かされ益々ションボリのアレク王子であった。
王家の面子もあるしー。
貴族としての矜持もあるしー。
デスワヨ~




