目標はカレの誕生日
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「イタタ痛いいいぃ~! ギブ!ギブ!」
「そうそう、侍女殿。そんな感じでゴリゴリした筋肉をマッサージして下さい」
「ハイ、聖王様」
神殿の湯殿である。
リラックス効果と循環を良くするハーブやスパイスの入った薬湯に浸かり茹であげられた後に、身体中をマッサージされている侯爵令嬢ミリアンヌ。
マーサにレクチャーしているのはもちろんお爺ちゃんである。
「擦り上げてパッと離す感じで」
「はい」
「いででで!イタッ! 」
「コレを四日に一度の頻度で施してください。」
お爺ちゃんの指導で全身を隈無くマッサージする方法を学ぶマーサ。
顔がめちゃくちゃ真剣である。
「巡りを良くしてホルモンバランスを整えるのが目的ですから」
シレッというお爺ちゃん。
一体この人、前世で何を生業にしてたんだろう・・・
寝台に寝そべり、ジト目で見ていると
「筋肉をつけ過ぎです」
真面目な顔でお爺ちゃんに返されてしまった。
はい。すいません・・・
×××××××××××
散々身体を捏ねくり回され、又もや机に突っ伏すミリア。
「ニワトコ月迄に仕上げるんだからね。ミリー」
ココはお爺ちゃんの私室。つまりいつもの真っ白いお部屋である。
「半年以上あるから充分時間はある筈だからね! 」
「ふあ~い・・・」
「しっかりしなさい。それまでにあんたの誕生日だってあるんだからね」
「あ、そう言えばそうだった・・・もう直ぐ十五歳か~・・・ 」
「本来なら、十三歳の秋には認定式がある筈だったんだけどねえ~。十五歳の秋を目指して頑張るわよ~ 」
「は~い・・・ 」
正直お爺ちゃん、ミリア本人よりノリノリである。有り難いと云っていいのかどうなのか・・・
冬前迄もつのだろうか・・・主に気力が・・・体力は充分ある筈。多分。
「ジジイ、来たぞ」
「ジジイ言うな! 若造! 」
金色の魔法陣の点滅と共にミゲルが部屋に現れた。足元にメルを従えている。
「ああ~ メルちゃん・・・私の癒やしが・・・ 」
「こら、ミリー。お触り禁止よ」
「えええぇ~、そんな殺生な・・・ 」
怪しい動きでワキワキとするミリアの手をペシッと叩く大神官様。
「おいおい、どうしたミリー? えらくヘバッてるじゃん」
ソファーで伸びているミリアの隣に座るイケメン王弟殿下。
「朝練が結構厳しいのよね」
おほほと笑う、お爺ちゃん。
「筋トレとかランニングなら平気なんですけど、この寒いのに滝行とか火渡り業とか・・・」
「へー。面白そうだなあ。俺はやらなくていいのか? 」
「面白くないです~ 」
「アンタは代わりに居合やってるからイイのよ。魔獣狩りも騎士団でやってるでしょ」
「まあな。それって代わりになるんだ」
「まあ命懸けの集中力は、実戦を経験してる分ミリーよりはあるから免除よ免除」
「あ~、成程。ミリーは雑念多そうだからなあ」
「・・・はあ」
「魔獣の前で気を散らしたりしてたら負けるからな実際。毎回命懸けだから集中力は確かにある」
「アンタは、転生する前は師範代の免状持ちだったんでしょ? 」
「まあな。道場で門下生に稽古をつけるのもやってたしな」
腕組みをして、にやっと笑うミゲル。
「ミリーは柔道とか剣道とか合気道とか何かやってた? 」
「いえ、全然記憶に無いです。まあ、最近はうろ覚えって感じなんですけどね」
お爺ちゃんがにっこり笑って
「じゃあ、朝練は続行だわよー 」
鬼である・・・・
「ジジイ、あのさ。魔獣狩りでいいんなら連れてくぞ」
頬杖をつきながらミゲルが事も無げにのたまう・・・
「あら、毎日滝行と火渡り業ばっかりじゃあ飽きちゃうから、ソレもカリキュラムに入れてもいいかも~ 」
トンデモナイ爺である。
いや、ミゲルもドッコイか・・・
「魔獣? へ? 」
目が点になるミリアンヌであった。
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