修行だ修行
聖王様、アクティブ系ヲタク属性再確認!
侯爵令嬢ミリアンヌは、修行が大好きである。多分。
ずっとバリアを張り続けたりもお手のものだし、ランニングとか筋トレとか、長く続けるモノは得意である。多分。
ていうか、社畜根性が抜けないのかそれとも貧乏性だったせいなのか、常に何かをしていないと落ち着かないので修行も筋トレも苦にならないのである。多分・・・
全て多分なので定かではない←
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「要するに、走るのを止めると歯車が止まるからずっと走ってるハツカネズミみたいな感じなのかしらね? 」
お爺ちゃんが、煙管を両手に持って考えながら結構酷いコトを言う。
「お爺ちゃん、何だってこんな事するんですか? 」
「だって、修行だもん」
春でもまだまだ日中寒い事もあるのだが、何故か滝行をさせられるミリアンヌ。
いつの間にか中庭に小さな滝(!)が据えられており、チョロチョロ流れる水を頭の上に受けている。
もちろん白い着物を来ているのはテンプレである。
「心頭滅却すれば火もまた涼しだわよー」
「酷くね? 」
「気にするんじゃないわよう」
「寒いんですけど」
「大丈夫。冷え切ったら次に行くから」
鬼である・・・
地面に魔法陣が書いてあり、ソコに赤い火がチラチラと上がっているのが見える。
「うええ、コレを渡るんですか? 」
「そうよ~、向こう側に歩いて渡る様にね~。お手本見せるからね~ 」
大人が二十人位手を繋いだらできる位のサイズの魔法陣の真ん中を、白い神官服でスタスタ歩いて行くお爺ちゃん。因みに裸足である。
「えええぇ~ 無理! 無理! 」
「大丈夫よ~、着物濡れてるから熱くもないわよ~ 」
「・・・」
そ~っと足を魔法陣に入れるミリア。着物が濡れているせいか、結構暖かくて気持ちが良い・・・しかし足の裏は
「熱い~! 」
魔法陣から飛び出すミリア。
「あら、やっぱり裸足の方が良かったかしらね? 」
草鞋を履いているのだが、ソレがだんだん熱くなって来て熱湯に足を突っ込んでいる様に感じられて無理だった・・・
「ほんとに大丈夫? 」
「多分だけど大丈夫よ。若い頃アタシもやったもん」
「・・・」
まあ、信じる他は無いのだろうが・・・納得が妙に出来ないミリアである。
「ミリーは山登り出来ないからねぇ~ 残念だわあ」
「ねえ、コレ前世でテレビで見た事ある気がするんだけど、山伏とか修行僧とかがやるやつじゃないの!? 」
「あら、知ってたの? 」
「知ってますよ! 」
「滝行と火渡り行よ~ 」
「何で行者の真似しなきゃいけないんですかっ! 」
「面白いから。アタシはやったわよ~ 」
「・・・マジか」
お爺ちゃん、修行に妙な拘りがある事に今更ながら気がついた聖女候補ミリアンヌであった・・・
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一通り終えて、今、正にテーブルに突っ伏しているミリアンヌ。
「生きてる事が有り難い・・・」
「あら、仏の悟りの境地に達したのかしらね? 素晴しいわね」
何しろ失敗して火傷しても怪我をしても風邪をひきそうになっても、強引にお爺ちゃんお得意の聖属性ヒール(ヒールは基本水魔法)で回復されて続行しまうのである。
何度でもチャレンジできるのってツライんだな、と今日一日で実感した。
「明日はやり直ししなくても良いように頑張ります・・・」
「何回も出来るからとか失敗しそうとか思うから、ダメなのよ~。後はないからコレ一発で決める覚悟して挑まなきゃね~ 」
ジト目になる聖女候補ミリアンヌ。
「・・・お爺ちゃん? 」
「何かしらミリー 」
「面白がってませんか? 」
「当たり前だわよ。今更ナニ言ってんの」
「酷い・・・」
「アタシがいなくても世界を背負うオンナになるための修行なのよ。休憩終わったら侍女ちゃんとマッサージの実習。ミゲルが来たら座学よ~ 」
ホッホッホと高らかに笑うお爺ちゃん。
「はぁい・・・」
やっぱり鬼である・・・
「時間の魔法はこの世界では私しか教えられないのよね。スパルタで行くわよ~ 」
「げげっ」
隠蔽魔法の時のスパルタを思い出して遠い目になるミリアンヌだった・・・
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