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転生した元社畜男子は聖女になって人生逃げ切る事を諦めません!  作者: hazuki.mikado
ニ章.転生聖女と転生聖王
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こちらはこちらで・・・

乙女ゲーのスパイスって学園ダヨネ?



 王立学園は貴族子弟の通う場所。

 

 学園の中では身分差によるお咎めはない事に建前上なっているのは、乙女ゲームやウェブ小説で御馴染みの展開である。


 因みにハイドランジア王立貴族学園もほぼ同様ではあるが当然の事ながら身分差によるヒエラルキーは存在し、初年度から三年間はクラス分けも上位、中位、下位の貴族で分けられている。


 四学年になると、王宮のホールにそっくりに模した講堂で、色々な行事を各爵位ごとに想定できる限りの王宮行事の練習を行い徹底的なマナーを実戦さながらに叩き込む。


 その上で成績順のクラス編成をし直して、ニ年間何の問題もなく過ごせた者は卒業の資格を得るのである。


 王家のお膝元の教育機関としては最善を尽くすための苦肉の策のシステムなのだろう。『乙花』ではそこまで裏設定はなかったので、この世界がバーチャルゲームではない証とも言える。




 春のデビュタントに参加する貴族子女の学年は大抵が三年生。なのでほぼ同じ階級の者だけのクラスでその後一年間を過ごすのだが、春の長期休暇後の話題はデビュタント・バルでの出来事で持ち切りになるのが恒例で全クラス共通の話題となる。


 今年のデビュタント・バルの話題は当然この物語の主人公であるミリアンヌの事に絞られてくるのは必至なのだが、内容的には微妙に爵位毎で違う。


 例えば、下位の貴族子女たちにとっては単純に『初めて見た可愛い生き物』『素敵なダンス』である。中位では、『噂のご令嬢は、それに違わず』これが高位になってくると『珍獣』『生意気』となってくる。


 まあ、全員では無く過半数がということではあるのだが・・・


 社交界の貴公子と呼ばれる美しい父親と愉しげにダンスを披露するだけで、この賛否両論の嵐である・・・これが王族と踊ったりすればどうなるのか。


 それが王太子候補であるアレクシスだったりした日には目も当てられない。特に高位の爵位持ちの娘たちになればなるほど、口には出さずともその心中は穏やかとは言い難いだろう。


 ただ、このバルでの『共通の話題』が女性の中で持ち上がる事で、より今後の人生が有利になる者もいる。それは同じ場所で、彼女達の動向を見守っているであろう貴族子息達だ。


 女性にとってのデビュタント・バルは社交界デビューの為の晴れ舞台であるが、貴族子息達、特に出席を許される爵位を継ぐ予定の嫡男にとってはこれから娶る伴侶の選考会若しくは品評会である。


 その為、この春の長期休暇以降の子女達の動向には細心の注意を払いながら過ごす時期でもある。家格、要はその家にとっての重要度等々を有り体に言えば査定するのである。所作、社交性、品位、容姿、教養。そして魔力の強さ。ありとあらゆる採点をされ自分の立場に最も有利な伴侶を獲得する為に厳しく見定めるのだ。


 実際下位~中位の貴族子女は婚約の申込みがデビュタント以降に相次ぐし、カップリングも成立していくのである。



××××××××××



「お久しぶりですね。マーロウ・シンフォニア」



 美少女と間違えられがちな稀有な美貌を持つブルーグレイの瞳の少年が、ドサリと机に山のような本を置くと同時に後ろから声をかけられた。


 振り向くと深緑の髪の毛が目に入り、銀縁眼鏡の奥の榛色の瞳が自分を見ている事に気がつく。



「やあ、クロード久しぶりだね」


「ええ本当に。その後、体の方は順調ですか? 」


「ん~~、随分楽になったよ」



 ここは上位の貴族子弟のクラスである。但しマーロウに関しては伯爵の嫡男なので本来なら中位貴族の子息なのだが、彼が王宮魔道士に召し抱えられた時点で魔法伯爵という一代限りの爵位を授けられている為、高位貴族のクラスに所属している。


 貴族の子弟の立場より爵位持ちが大人の貴族として認められるため、王子を除きこの中では誰よりも爵位が高い事になる。


 最も本人はあまりそういう事には頓着しないのか静かに魔法の研究に没頭しているため、教室内にいるのかいないのか分からない存在でもある。


 ちゃっかり認識阻害の魔法でもかけているのかもしれない。


 

「どうしたの? クロードが僕に用事とか珍しいね」


「ああ、ちょっと確認したいことがありまして」


「なあに? 」



 首をコテンと傾げる美少女、じゃなくて美少年の仕草に周りの者は男女共に顔を赤くする。



「ここではちょっと・・・応接室に来ていただけますか? 」



 相変わらず顔面偏差値の高さがある意味凶器だなと思いながら、言葉を続けるクロード。



「うん。いいよ。片付けるからまってね」



 そう言うと机の上の大量の本を次々と何もない空間に放り込んでいく。亜空間収納の魔法である。



「流石ですね」



 半分は呆れているクロードの声に



「そう? 便利なだけだよ」



 ウフフフと笑うマーロウ。


 教室の端の方で女子達の黄色い声が上がった・・・







お読み頂きありがとうございます!(_ _)

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