十二歳で・・・成人だと?
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「魔力が姉さまと一緒という事と、馬車で殿下方が言った『大神官様と同じ立場』ということを鑑みるに、ミゲル殿下は『聖王』の条件を満たしているということではないでしょうか? 」
それまで話を聞いていたダニーが考えながら喋る。
「殿下御自身はその結果をご存じではなかったのですか? 」
「検査したのは昨日だぞ。結果が一体いつ来たんだろうな? 」
「「お知らせは来てないよ! 昨日お爺ちゃんと検査官て人が父様と宰相にそう言ってただけだよ」」
二個目のケーキをチョコレートに狙いを定めながら、フォーク片手に双子達が声を上げた。
「どこで言ってた? 」
「「父様の執務室~ 」」
チョコケーキを小皿にサッと取り分け、王子たちの目の前の置くとススッと引き上げるセバスチャン。
「「美味し~い」」
口を揃える双子達を見ながら額を押さえる王弟殿下。
「お前ら又、兄上の所へ忍び込んでたのか・・・」
「ううん、隠れんぼしてただけだよ」
「そうだよ。侍従が見つけに来ない所に隠れてただけだよ」
口をもぐもぐさせキョトンとしている彼らに悪気はきっと無い。と思いたい・・・
「殿下。王家は優秀な間者を育ててますねえ~ 」
「やめろ。ミリー。優秀とか言ったらダメだぞ。あとが怖い・・・」
聞こえないように小声になる殿下とミリアであった。
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ガゼボから少し離れた所でメルが双子をからかうように木に登っている。
その下から光る縄のような物を魔法で出しては、上に飛ばす双子達。メル、子守りが大変そうである。
とうとう枝の上で丸くなって目を閉じてしまった。
一応マーサとセバスチャンが近くで見張っているので大丈夫だろうが、何故猫はあそこまで子供が苦手なのだろう・・・
それを眺めながら、会話をするミリアとミゲル、そしてダニエル。
「殿下が『聖王』になると、何か王族としては都合が悪いことがありますか? 」
こういう話をする時のダニーは天使から次期侯爵の顔をしてるなーと感心して見入っている姉のミリア。
「成人男子の王族が減るってだけさ。あとは諸外国との結びつきの為の政略結婚の手駒が減るくらいかな? それ以外は無いだろうな。俺はアレクが立太子したら継承権は放棄する予定だったし。よくわからん」
「公務とかは無いんですか」
「俺は嫡男じゃ無いからな。子息の第ニ子以降は騎士団に所属するのは王族も例外じゃない。今は第一騎士団の剣術顧問以外の公務は無いな」
先刻の騎士団での剣術指南? を思い出したのか遠い目になる姉弟。
「王族は学園に入学すると同時に公務も始まるんだ。それまではアレクの代わりにやってたモノもあったがもう全て本人に引き継がせてる。直轄地の経営も練習がてら一部やらせてるはずだ」
「王族って厳しいんですね」
「王族は学園に入る十二歳迄に全て一通り出来る様に仕上げとくんだよ。一般貴族の男は十九歳で成人だがな」
肩を竦めるミゲル
「王族にとっての学園は、勉強というより予行演習なんだ。十九歳なんて悠長な事を言ってられねえからな。国の舵を取るんだ。責任が桁違いだからな仕方がないさ」
「本当は十二歳で成人て事ですか」
「それも個々の能力次第だがな。王太子ってのは失敗が許されない立場なんだよ。だから国を動かす為の練習を学園でやってるみたいなもんで、呑気に勉強と社交だけしてりゃいい訳じゃないんだ。アレクがそこら辺を分かってりゃいいけどな」
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「へ、クシュン! 」
生徒会役員の執務室でクシャミを盛大にする第一王子アレクシス。
「風邪かなあ」
「春とはいえ、まだまだ寒いですからね。ヘソ出して寝てないですよねアレク」
「そんなわけ無いだろう! 」
「・・・」
「ハリー、貴方も風邪ですか? 」
ぼ~っとしているハリーに声をかけるクロード
「城の朝稽古から帰ってきてから、ずっとアレだよ。悪いものでも喰ったのかな? 」
「尊い・・・」
「風邪ではなさそうですよね。どうせ王弟殿下絡みですよ。ほっときましょう」
「そうだなあ」
急に机にガンッと音をさせて額をぶつけるハリー。
「おいおい、どうしたんだよハリー? 」
「ハリー? 大丈夫ですか」
顔を上げると鼻から血がタラリと・・・
「うわああぁ~! 大丈夫か? 医務室行くか? 」
「鼻抑えて、下向くんですよ下っ! ハンカチ、ハンカチ! 」
耳まで真っ赤になったハリーはその後、医務室で知恵熱と診断されたらしい・・・
犠牲者ニ人目ダヨー
ハリー・ストレリチア伯爵子息也