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ハリー・ストレリチア伯爵令息。
現騎士団の総団長であり、ハイドランジア王国軍の将軍の五男。『乙花』の正規ルート攻略対象第三位の爽やか兄貴系キャラであり、王太子殿下の側近である。
しかしそれはゲームの中の彼であって、今現在のハリーは側近候補でしかなく爽やか兄貴というよりは王弟ミゲル殿下のストーカー予備軍・・・な気がするミリアである。
しかし、半月ほど前に彼が率先して行方不明になる寸前の自分を捜索してくれていたことは、自分自身が一番知っている。
デビュタントの時は、お礼は出来なかったがこの機会に一言お礼を、と考えるのは誰しも有り得る訳で・・・
「ストレリチア伯爵令息様、あの節はありがとうございました」
と、スススっと寄っていった壁越しに声をそっと掛けるミリア。
一瞬、赤髪がピクッと揺れ間を置いてから
「いえ、ご令嬢にお怪我がなくて幸いでした」
と、よく通る声が返ってきた。
「ハリー様が単身で必死で探してくれていた事を私、存じております。勇気ある行動に感服致しましたわ。これ以上は申せませんが、本当に感謝しております」
モゾモゾ音がした後、壁の上に手が現れたかと思うと
「ミリア嬢も大変だったでしょうが、お互い無かったということで」
と、その上にニカッと笑ったワイルド系イケメンの顔が現れた。
逆光になっていてはっきりとは見えないのだが、高い鼻筋にしっかりした造りの鼻梁と鳶色の瞳の日焼けした健康そうな少年で少しソバカスが散っている。
何だか親しみが湧く笑顔である・・・この顔何処かで・・・
「あら、近くでよく見るとストレリチア将軍閣下とよく似ておられますね」
下からハリーを見上げながらニコリと笑うと、彼は目を見開き急に動きが止まって無言になった。
「あの? ハリー様? 」
一瞬でボンッと効果音がするくらいの勢いで、髪の毛と顔が同じ色になり、次の瞬間、塀の上からスススっと頭が引っ込んで行った。
もっとも、ミリアの今いる位置では逆光になっているため彼女には、よく見えてはいなかったのだが・・・
「あら? どうしたのかしら降りて行っちゃったわ。時間が無かったのかしらね。まあ、お礼が言えて良かったわ」
日傘をミリアに差し掛ける為に、少しだけ後ろに控えていたマーサが一部始終を見て、
『どうもこうも無いですよ、爆弾投下したのお嬢様ですよねっ? 』
と言いたいのをグッと堪え、
「そろそろベンチに戻りましょうお嬢様」
と、冷静に言った自分を凄いぞ~ と思うのであった。
××××××××××
「何だあれ、ビックリした」
塀の向こうで、鼻血をハンカチで押さえ反対の手で胸を押えて座り込むハリー騎士見習い。
「あれじゃあ、アレクがポーッとなって訳わからんダダを捏ねる筈だよな~ 」
廊下で見かけたときは王弟殿下の腕の中に囲われていて彼女の笑顔がはっきりとは見えなかったし、謁見室でのやり取りの時の立ち位置はアレク王子の真後ろで、どちらかというと壁際に控えていたので彼女の笑顔を間近では見てはいなかったハリーである。確かに可愛かったし、小動物の様な動きはとても愛らしかった。女性にあまり馴染みのないハリーでも、驚くくらい華のある令嬢だとは感じていた。
しかし、今日初めて至近距離でその顔面偏差値の高さと笑顔の破壊力をもろに体感し思わず鼻粘膜の血管が切れるというのを生まれて初めて味わった。
「うわー、顔面兵器だよ。あの笑顔・・・」
間近であの笑顔で見上げられて、正気でいられるミゲルを益々崇拝するハリーなのである。
「はあー尊い・・・」
何かが間違っている気がするが・・・各々が幸せならそれで良いのである。
ハリーwおまw